ゴブバチョフの感謝
前回のあらすじ あふれるほどのボリュームでした(乳的な意味で)
・・・おーい、起きろ・・・
「むむ?」
ずいぶんぐっすりと寝ていたようだ。重いまぶたを力づくで開け、目の前のゴブリンに焦点を合わせる。
「やっと起きたな。お前丸二日も寝てたぞ?心配するじゃねぇか」
周囲を確認してみる。ここは洞窟か?岩で囲まれた部屋でベッドに寝かされていた。
こんな時はあのセリフか。ちょっと照れるな。でもお約束だもんな。言ってみるか。
「・・・知らない天丼だ」
「何を真っ赤になりながら言ってるの?「テンドン」って何?」
「まぁ気にするな。男には周りに理解されなくてもなさねばならないことがあるんだ」
この世界のものにこのボケを理解できるとは思っていなかった。でも『そこはてんじょうだろ!』のツッコミを期待する自分もいる。人間とはままならぬものだ。
「ところでここはだれ?君はどこ?」
「ここはおれの家だ。俺はゴブバチョフ。まだ寝ぼけているようだな」
今のはお約束に従ったわけでなく、本当にボケてしまっていた。普通に恥ずかしい!「ちっ違うんだからね!俺の実力をこの程度だと思われては困るの。本来の自分はもっとスペシャルハイグレードなボケをかませられるんだからね!」心の内で叫びながら、唇を噛みしめ恥辱に身を震わせ、挽回の機会をうかがった。
「なぁ、まずお礼を言わせてくれ。お前のおかげで俺たちうまくいったよ!
・・・結婚を前提としたお付き合いを始めたんだ、夢のようだよ」
ゴブバチョフは噛みしめるように言葉をつないだ。どうせ噛みしめるならこういうふうにありたいものだ。・・・自分でも何を言っているのか分からなくなってきた。たぶん寝起きで頭が働いていないせいだろう。海を求めて歩き続けた3日間で言語を失ってしまったわけではない、と自己弁護してみた。
「それはおめでとう。でもそれはあくまで君と彼女の相性のおかげだ。俺は何もしていないよ」
「いや、お前は俺にきっかけを与えてくれた。二人ともお互いを意識しながらも臆病になっていたんだ。きっかけは大事だったんだ」
「まぁいいさ。で話は変わるが俺は何でここにいるんだ?」
「あれからしばらくして浜辺に戻ったら、寝てるお前にカニが群がっててさ、少しづつ海へ引きづられていたから俺が保護したんだよ。お前ってカニに挟まれまくってても起きないんだな。死んでるかと思ったよ」
「そのカニはどうした?」
「追い払ったが?」
「このバカチンが!せっかくの食べ物を逃がすとは何事だ!カニ鍋の機会をみすみす逃すとは・・・。」
前世でもそんな贅沢品ほとんど食べたことがなかったのに・・・。
「お前のほうが捕食される立場だったのに図太いやつだな・・・。ところでカニってうまいの?俺、生まれてから一度も食べたことない」
「そうなの?せっかく浜辺に近いのにもったいない。じゃあ普段は何を食べてるの?」
「貝と果物。両方とも豊富にあるから我が村は食に困らないんだ」
「ほぅ、食べ物に困らないとは。それはいいことだ。衣食足りて礼節を知るともいうし、この村には秩序がありそうだ。でもあの見えそうで見えないビキニを見る限り衣料は足りてないのか?いやある意味満ち足りているとも言えなくもないか・・・。エロの道は深いな」
「何を独り言を言ってるんだ?起きたならお前を長老に紹介したいんだが。大丈夫か?」
「そうだな。うん。決めた。そうしよう。長老に会わせてくれ。俺からもお願いがある」




