魔王と勇者の出会い
ここが謁見の間だろうか。
細部まで装飾を施された巨大な扉を開けると足元には毛足の長い赤い絨毯、まっすぐ伸びるその絨毯の先に見えるのは数段ほど上がった台座、その上に据えられた玉座は巨人が座れるほど大きく、背もたれや脚には木や花だろうか豪華な装飾が施されていた。まさに魔王が座るにふさわしいと思われる。
そしてそこには不気味なオーラを漂わせ、幾重にも重ねたような白いドレスを身につける一人の女性。しかし一見で人間と見間違うことがないのはその頭部に映える巻きツノの存在のせいだ。
「おまえが魔王か?」
「いかにも我が当代の魔王だ」
「俺が何者かわかるか?」
「まぁ、おそらくは勇者と呼ばれる存在なのだろうな。もしかしたらただの押し売りか強盗かもしれんがな」
自らを魔王と認める女性は凛々しくも落ち着きのある、それでいてこちらを責めるような口調で俺の投げかけに答えた。
そして俺はもう一度質問を重ねた。
「お前、本当に魔王なのか?」
「しつこい!我が魔王と答えたであろうが!この玉座にてお前を待ち受けたことで察せよ。」
同じ答えが返ってきた。でもどうしても受け入れがたく、別の言い方で質問してみた。
「でも・・・、君まだお子様でしょ?パパかママはどこかな?」
その謁見の間には、玉座に座り不機嫌そうに足をプラプラさせた幼女が一人座っていただけだったからだ・・・。