2 運命的な出会い!
「迷った・・・」
早めに家を出て余裕の表情で登校しようとした矢先に見事に道に迷った。いや、これでも土地勘はある方だと思っていたんだけど・・・このヒロインさんの方向音痴特性を忘れていたよ。
「まさかスペックまでヒロイン様に依存するなんて・・・」
予想外もいいところだが・・・なんとか高校にたどり着かないとね。
とはいえ・・・
「どっちだろう・・・」
この付近は住宅街でどっちに行っても同じような道に出るのでますます迷ってしまう。
いやー・・・高校生活初日から遅刻は洒落にならないよ。なるべく楽しい高校生活を送りたいなら悪目立ちするような行動は避けたいところだけど・・・ただでさえ目立つ容姿の美少女になってしまったのだから、なんとか遅刻だけは避けないと・・・
「困った・・・」
「あの・・・」
そんなことを呟くと何やら後ろから声が聞こえてきて振り返ってから私は思わず唖然としてしまった。
そこには私と同じ高校の制服を着た優しそうな表情な男子生徒が一人いたのだ。それだけならいいのだが・・・私はその顔に見覚えがあったのだ。
「もしかして道に迷ってますか?」
その男子生徒は控えにそう聞いてきた。絶賛迷子な私はそれに静かに頷くと、男子生徒は「でしたら・・・」と控えめに言ってきた。
「もしよければ途中までご一緒しましょうか?同じ高校のようですし、迷惑でなければ」
「あ、えっと・・・お願いします」
下心がまるでない善意100%の表情でそう言われたので頷いてしまったが・・・しかし、私はなんとかそのあとにその男子生徒に聞いてみた。
「あの・・・でも、大丈夫?初日から女の子と一緒にいたら変な噂とかされてあなたに迷惑をかけるかもしれないのに・・・」
「えっと・・・僕は大丈夫ですよ。幸いというか、その手の相手はいないので。ただ、君に変な噂が立つのは困るだろうから、道がわかるところまで案内して、そこから別々に行くのはどうでしょう?」
落としどころとしては妥当なところか・・・それにしても、本当に私が美少女なのを差し引いてもここまで善意で行動しているのがわかる人間というのはなかなかいないだろう。
・・・なんか、自分のことを美少女と言うのはナルシストみたいで嫌だけど、客観的に見てそうなのだから仕方ない。
「えっと・・・じゃあ、迷惑じゃなければお願いします」
「はい。もちろんです」
ニコッと紳士的な笑顔を浮かべる男子生徒。私は歩きながら確認を込めて自己紹介をしてみた。
「えっと・・・私は、金剛紗由理って言います。あなたの名前は・・・」
「僕ですか?僕は、木村翔と言います」
やっぱりそうか・・・。木村翔、ギャルゲーである、『初恋ハイスクール』の主人公のほとんど唯一の親友で、いつも主人公のフォローにまわる親友キャラクターの鏡のような存在。
親友キャラなら、本来はもっと、遊んでそうなイケメンを想像するだろうが・・・このゲームの親友キャラである彼は穏やかな笑顔で人当たりがいいのが特徴的なキャラクターだ。
まあ、所謂友達ならいいけど、恋人にはしないようないい人キャラなのだが・・・私はこういう素朴な優しさを持つ純情そうなキャラクターが大好きなのだ。誠実というか、紳士というか他にも言い方はありそうだけど・・・飛び抜けた容姿のイケメンもいいけど、絶対浮気しなくて、いつも側で笑ってくれているような爽やか系というか、癒し系のキャラが私にはドストライクなのだ。
「えっと・・・木村くんは家近いの?」
「僕はほどほどの距離ですよ。金剛さんは?」
「私も近いと思うんだけど・・・実は方向音痴で、帰りもどうしようか迷ってて・・・」
そう言うと彼はしばらく考えてからスマホを出して言った。
「家の場所、もしよければこれで検索して調べてくれてもいいですよ」
「えっと・・・でも、そんなに簡単にスマホを見てもいいの?」
男子なら何か女子には見せずらいような画像とか入ってそうというか・・・そもそも他人にスマホを簡単に渡すとか、私には考えられないのでそう聞くと彼は笑顔で言った。
「構わないですよ。面白いものは入ってませんので。金剛さんが帰り道不安そうだったので渡したのですが・・・迷惑でしたか?」
「ありがたく使わせてもらいます」
うん。ここまで善人な人に私は何をアホなことを質問したんだろうと少しだけ反省をしてしまったよ。そんな私に彼は笑顔で頷いて言った。
「この辺は住宅街で、同じような道が多いから迷いますよね」
・・・フォローしてくれているのだろう。予想したよりも更にいい人度が高くて私の好感度は上がりましたよ。ええ。