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ただただ言い訳がしたかったので、その言い訳を物語にしてみた。

作者: 志桜浬

初めて読む人にも読めるものを書いたつもり。作者の感情の走った結果ですごめんなさい。久しぶりに書いてて楽しかったし、恋愛ものよりなによりコメディの方が気楽でいい。


※ただの自己満足小説です。それでもいいよという心の広い方はどうぞ。

 ああ、その件については謝るから。とにかく俺は無実なんだ。

 俺はなんだ、森の中の洞窟に訳あって住んでいる。まあ、冒険ものにはよくある話で。ああ、そうさどうせ勇者一行に倒されるか、国からたくさんの兵士が送られてきて討伐される身の上さ。

 その横に横たわる銀髪の青年。まあ、彼こそが騒ぎの元凶なんだが、彼が悪いと言っている訳ではない。全て、俺が悪い。いいにくいんだが……そのぉ……。


「「わたしが誘拐してきました」」


 それで、無実ですというのは無理がある。なにより、お前やらかしてんじゃねぇか!というツッコミを受けることになる。今まで世話になった人間さんたちに顔向けできない。

 いいじゃないか、可愛かったんだから……。好みだったんだよ!俺のっ!悪いか!まあ、悪くはないとは思うが、よくもないのは確かである。

 ここで、疑問に思う。お前ホモケモか!と。ちげぇわ!一人称こそ〝俺〟だが、一応雌ケモだ。

 彼はな、この森近くの村から俺の足で少しばかし走ったところの村に住む青年である。俺は一応クラスがまあそこそこ上のモンスターらしくてだな、ある程度までなら遠くの見たいもの、聞きたいものが聞き取れる。というわけで、暇つぶしに見ておったわけよ。で、惚れて人に見つからんように夜、闇夜に紛れて誘拐してきた。そしたら、ああ人間の気づくのが早い事、たちまち大騒ぎになってしまった。獣耳を立てて聞いてみると、「モンスターにさらわれた」と騒いでいる。うん。あってる。でもその次だ

「夜にさらわれたんだぞ、きっともう…」「やめなさいよ!」「でもなぁ、もう食われちまってても…」


 ねえ、待って…。俺そんな強暴そう?まあ、そうだあなぁ、爪も牙もあるからなぁ…。でも、誤解しないでください。俺はやらかしてないです。ぶっちゃけですよ、食べちゃいたいなぁって思ったことは一度二度三度………結構ありますけど、そこまで落ちぶれてないですよ。まっとうなケモノなんで。ケモノでまっとうは変だな……。

 夜という時間を選んだのは失敗だった。夜はモンスターが強くなるというのは人も知ってるし、実際、人を襲う輩は夜やるだろう?俺はその輩と一緒にされたわけだ。誤解させるのは簡単だが、解くのは容易ではない。

 どうしたものかと考えていると、銀髪の君が目をうっすらと開けたのだった。

 俺は、ドキリとした。

「ここは……?確か、俺、さらわれて…」

『すみません、すみません、すみませんっ!!!!!』

 でかい図体をなんとか土下座の形に持っていき、とりあえず無礼を働いたことへの謝罪に移した。

「女の人?の声?」

『そのさらった張本人がわたしでございます』

「うわぁあああっ、美味しくないから食べないでくださいっ」

 いや、たぶん、おいシ…。ではなく、食べない食べないから。かわいい人間の青年をいたぶるような趣味はないから。意外と俺、もふもふなんだよ?毛皮にされそうになったこともあるぞ。

『食べない食べないから……一つだけおねだり叶えさせてください』

「おねだり?」

 意外と月の光と妖精さんたちの放つ光で以外にも明るく、夜目の利く俺の目には十分すぎる明るさだ。人間の町の店に並ぶ人形のような顔立ちで、ちょうど今のような夜空をはめたような目の美青年であることがよくわかる。首をかしげる様子がとてもとても可愛らしい。愛されいじられキャラというところだろうか。もうツボすぎ。などとずっと言っていたのでは、反省の意味がない。自重しろ、俺。

『撫でさせてくれるだけでいい。それ以外望まない』

「えっ…?そんなのでいいの?」

 そんなのって、もっと何か期待していらしたのでしょうか?え?(悪)とまあ、悪い事も考えたが、それ以外は望まないという宣言をしてしまったので女に二言はないということで、しゃあないか。

 どうやって撫でるのさ。どうせ、そのカッサカサな肉球の楽しみでもあるフニフニのかけらもないその前足でどうすんだよと思われたかもしれないので、一応言うと俺は普段は人の姿をしていることが多い。つまり、変化へんげ?変身?できる。もう、どっちが俺だよっていうね。

 たてがみから髪の毛へ、幹のような太い前足は細い腕に変わっていく。


 それから、もう撫でまくりましたよ。嬉しすぎて、雄叫んじゃって、きっと聞こえてたでしょうね。そして、「ああ、間違いない。食べられたな。あのケモノめ」って思われたでしょうねぇ。俺の咆哮は結構響くんだぜ?よく俺の世話を焼いてくれる奴らからは「うるさいから静かにしろ」と言われたし。


 そう、色々やらかしたなぁと気づいたのは、結構後になってからだった。


『君はあんがい肝が据わっているみたいだ』

「だって、俺が騒いだりここから飛び出したりしても、ここがどこかもわからないのにどうにもしようがないじゃない」

『ぐぬ…』

 彼の冷静さに、感情的になった自分がすごく恥ずかしい。しかも、彼は怒らない。誘拐されたのに。今頃わたしは取調室にいてもおかしくないんですよ?というより、殺されて角が売られちゃったり毛皮になっちゃったりしてもおかしくないんですよ。俺は!

「言葉が話せる獣なんて初めて見た」

『まあ、怒ってもいないのに吠えてると怒っているって勘違いされるし、そういうの理不尽で嫌だ』

「それに、人間好きなのも」

『それはな、見ていて飽きないからかもな。実際明日、人里に降りるぞ?しばらく人として暮らすよ』

 人ってさ苦しいじゃん。一列に前ならへして生きてるっいうかさ。自由奔放ケモノ気質としてはこうして、のんびり感情の赴くままの方が気が抜けていいわけよ。

「えっ?一体君は人なの獣なの?」

『どっちだろうねぇ』

「前は人だったとか?」

『忘れてしまったな…』

「寂しかったんでしょ?俺をさらったのも、きっとそうだと思った」

 いや、そんなキレイなものじゃないんだけどっ!含みはないです、と言っておきながら脳みその後ろの見えない方にあるのは事実だったりしてぇ。うん、これは全て罪を話した方がよさそうな気がしてきたので、思い当たる節があればその都度告白していくよ。

『うっ……。さあ、どうでしょ……。まあ、夜が明けてから君を送り届けようか。すまない事をしました。深く反省しております。だから、今日はおやすみなさい』

「うん、おやすみ」


 それはそれは過ごしやすいい夜だった。土の匂い、風の匂い、遠くで雨の降る匂い、銀髪の君がいる安心感とで久しぶりによく眠れたような気がする。


 朝だ


 朝だ


 朝が来る


 祝福の朝よ


 祝福の風が今日を祝福してくれる


 朝だ


 朝だ


 朝が来る


 と、お隣さんはラ○オ体操かのごとく、くるくるとお手々つないで回ってる。ああ、耳もとで歌わないでくれ。オイラはもぅちょっと寝ていたい。ん?銀髪の君がいない?どこだろ?

「えいっ、やあっ!!」

 ああ、朝稽古か。ストイックなことで。人だねぇ……と関心する。

『朝稽古ねぇ……』

「あっ、起こしてしまいましたか?」

 村だから兵隊さんがいないので、こうやって稽古して有事に備える。まあ、この近辺、ケモノの輩が来ようとも、追い払ってやるけどな。どうだ?使えるだろう俺も。毛皮以外の価値でだぞ。

「俺の父さん、元兵隊で先生なんです。だから、俺がみんなの手本にならないと」

 なんで、君の隣に俺がいるんだろうって悲しくなるよ。生きるって辛いね。生きてるだけですばらしいって君の事なんだね、うん。すごく輝いて見えるよ。

 真面目に生きるよ、今まで通りさ。そんな一日が始まるんだもんな。

『送る。結構早いからしっかり捕まっててよ』



「レン~っ!」

「ホント、よかったぁ無事で」

 友達らしい人たちに迎えられて嬉しそうだった。ほんとならスライディング土下座で謝りたいんだが、俺はこっそり見守っとるよ。今度会う時ははちゃんとアポとろうね、常識よ俺。


 さてと、一件落着したことだし戻るか。赤髪ちゃんになんて話そうかとか、罪悪感を引きずって今日も俺はケモノライフを送る。


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