相棒3
初顔合わせの翌日、蓮の方が先に本部に着いた。食堂の中のスターバックスコーヒーでアイスのキャラメルマキアートのベンティを注文する。なんとスタバの様な一般企業も入っているのだ。但しナイツのメンバーがスタッフだが。半分飲んだ時、千堂もやって来た。昨日、食事の際そう打ち合わせてあったのだ。
「 旨そうなの飲んでんやんか」
千堂はそう言ってソイラテのトールをたのんだ。
「 やっぱボクサーだったから摂制してるの?」
蓮がそう聞くと。
「 そや。体術はボクシングスタイルやからな」
初めの印象通り子供のころからアマチュアボクシングで鍛えた体だったのだ。二人は飲み終えると、平馬を呼んでもらい、地下に向かう。
少しして平馬がやって来た。
「 いいか始めるぞ」
平馬のその声に合わせ、またしても魔方陣からモンスターが現れる。ウォータードラゴンいきなり〈水〉属性の高位獣だ。
「水か!雷とは相反やからな。相性はええけどドラゴンはしぶといで」
千堂が叫ぶ。
「雷撃ありったけぶちこんで。考えがある」
蓮は確信を込めて言う。水は炎では燃えないが、どうする気なのか?千堂はいぶかしながらも言われた通りにする。カミナリが被弾するとドラゴンが泡だつ。やがて炎を上げて爆発した。辺りは水蒸気で真っ白で前が見えない。
「 どないしたんや」
千堂が驚く。蓮が解説する。
「電気分解だよ。高電圧で一気に水素と酸素を発生させたんだ。それを炎で着火して爆発させた訳だよ」
「ドラゴンを一撃か!蓮は頭脳的だな。感覚的な千堂とは合うな。ルシファーのマッチングはいつもながら的確だな」
平馬がそう評する。
次が現れた。雷獣ヌエである。蛇のしっぽをもつ四足獣だ。
「雷撃はきかんけどかまへん。雷がわいの身体を活性化させる。肉弾戦や」
千堂が両方の拳を固める。メリケンサックを拳に装着していた。これが千堂の安全装置なのだ。ヌエの鼻っ柱にジャブが当たると左ストレート、顎にアッパー。 1 2 3 の コンビネーション。どうやらサウスポーらしい。ヌエは後退り雷撃を繰りだす。しかし千堂は平気どころか、ドラゴン戦の雷撃の消耗が回復している。
「電気吸い採れるの?」
蓮が聞くと。
「 そやねん。電気で怪我も治るんや」
「 なら、吸い尽くそう」
蓮はそう言って刀を胴に突き立てた。同時に千堂はヌエの頭を抱えている。炎の熱で放電が激しくなった。電圧が下がるにしたがって炭化してく。異形の力がなく成ると通常の物理法則にしたがう様だ。やがて、跡形もなくなった。
「 アンデッドならどうだ」
平馬が面白がっているかの如く告げる。
今回はゾンビの大軍だ。腐った身体。剥き出しの歯。バラバラにしても動く厄介な相手。しかし、二人共に自信に満ちている。
「 チャージ、マン満タンや。幾らでも相手すんで」
千堂が吠える。
「一撃で消すよ」
蓮も呼応した。レクイエム、文字通り鎮魂歌の名をもつ特技はアンデッドを地に還す。〈聖〉属性のこの 特技を蓮は得意にしてるのだ。
「嵐撃舞」
千堂が広範囲に雷撃を飛ばすと、イオン臭と共にゾンビが炭化していく。
「レクイエム」
十六夜の一閃で 目の前の ゾンビが消える。二人は背中合わせで戦い、やがて敵は居なくなった。アンデッドはモンスターの中でも集団戦に成りがちでスタミナ消耗する。
「平さん腹減ったよ」
二人がシンクロさせて言う。
「 わかったわかった。飯にしよう。二人息が合うようになったな」
平馬は自分の訓練報告が、ルシファーに正しい判断をさせた事に満足しながら答えた。
「食事が済んだら連携訓練後半戦や。今のはわいの特性蓮に教えるもんやし。後半戦は手こずるやろう」
キャリアの差で千堂は訓練を良く見ている。




