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夕闇の 世紀  作者: 愛媛のふーさん
6/25

相棒

 訓練は夏休みが終わっても続けられ、9月の中頃になろうとしていた。蓮の通う高校は届けを出せばうるさく言わないでバイトが認められ、夏休み中に申請が通りバイトを口実にナイツの本部に通いつめた。イジメの方はリーダーだった村山が居なくなって鳴りを潜め、失踪は家出で片が付き両親が捜索願いを出している。蓮を 怪しむ者はいない。

 ある日の放課後、三島あずみに声を掛けられた。

「緋村君、今日もバイト?土日も休み無しって働き過ぎじゃない」

「カネ貯めてやりたい事あるんだ。何かは内緒」

あずみは親しみ易い雰囲気で気楽に返事できる。クラス委員もしており責任感が強い。イジメられっ子の転校生に同情的なのもその為だろうと、蓮は思っている。

「身体壊したら 元も子もないよ」

あずみは心配そうに更に返す。

「土日以外は3時間だけの軽作業だから大して疲れないし大丈夫」

事実、学校が始まってから訓練は3時間で終わっている。疲労は軽作業の比ではない。しかし、おくびにも出さずそう答えた。

「 それならいいんだけど」

あずみは納得はしてない感じで言った。

「 ありがとう。もう行くから。 バイバイ」

蓮はあずみに挨拶してギターケースと鞄を持つと教室を後にした。ケースにはもちろん十六夜が入っている。ナイツは偽装を完璧にする為、刀が入るギターを特別に作った。安全装置は肌身離さず手元に置いておきたいだろうという判断で。蓮にとってはありがたい話だった。

 本部には電車と地下鉄を乗り継いで40分。受付で手続きして平馬を呼んでもらう。先にエレベーターで三階の更衣室に向かいトレーニングウェアに着替える。十六夜はケースに入れたままだ。ケースを持って地下四階はへ行くと平馬が待っている。着くなり平馬が宣告した。

「 今日はテストだ。集大成をみせろ」

慌てて十六夜を取り出し腰に差す。それを見て平馬が合図すると、地面に描かれた魔方陣から異形の怪物が現れる。ヒルジャイアントだ。 4メートルはあるかという体で太い棍棒を振り回すパワーファイターである。

「 ちょろいな」

唇を一舐めすると、意識集中させて。

「爆」

巨体が炎に包まれる。意に介さんと火ダルマのまま真上から棍棒が振り落とされた。後ろに跳んでかわすと、そのまま駆け上がり脳天を刀でかち割る。たたらを踏んでジャイアントがよろけた。空かさず。

爆龍波ばくりゅうは

文字どおり炎が龍の如く襲いかかり、巨体を炭化させてゆく。止めに腹に刀を突き立て、内側から燃やす。

ズドンと音をたてて消し炭と化したジャイアントが仰向けに倒れ崩れた。

「 次」

平馬が短く叫ぶ。

 サラマンダークラウド。炎の雲が次の相手だ。物理攻撃も炎も効かない。〈氷〉属性が有効だが、蓮は炎属性なので苦手なのだ。

「 どうすっかな」

少し考えて、刀を鞘に戻す。

風孔閃乱舞ふうこうせんらんぶ!爆龍波!」

抜刀術で高速の抜刀すると鞘も交差させて抜刀する。余りの高速に乱気流が起こった。爆龍波の高温が乱気流を煽りたてる。するとどうだろう凄まじい風が、雲を粉々に散らした。抜刀術と炎で倒して退けた。

「やるな。次で最後」

平馬が感心しながら言う。

 最後はスケルトン軍団だ。刀、剣、斧、弓、ボウガン、様々に武装して鎧で身を固めている。

蓮は時計周りに走りながら。

「レクイエム」

十六夜を横殴りに振ると 数十体が消える。それでも半数。矢が飛んで来るのを被わしたり叩き落として、周りこんで更に一閃。全てのアンデッドが消える。

「 おみごと。よくやった、合格だ」

平馬は満足気に呟いた。

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