発現4
一週間はなかなかたたなかった。もっぱらスマホで音楽を聞いてやり過ごしている。蓮が好きなゲームはRPGだが 属性と言う単語があの事件を思い出させるせいで やる気にならない。水曜日、蓮に同情的なクラスメイトの女子。三島あずみからメールが来た。
「村山が家出したらしい。探さないでってメール親に送ったきり、日曜日から携帯も繋がらず帰ってこないんだって。良かったんじゃない」
そう書いてある。怪しまれない様に少し考えて、
「 二度と帰ってこなければ良いのに。あー 清々した」
そのままの内容で打った。家出のメール?ナイツの偽装工作だろうか?村山の携帯は一緒に燃えてしまった筈だが、その程度はあの研究者達なら別けなくやってのけそうだ。
再び日曜日がやって来た。ジリジリしながら 待っていると、昼過ぎナイツから支給されたスマホが鳴る。慌てて指をスライドさせる。
「家の前だ。出てきな。おばあちゃんには遅くなるって言っとけ」
言われた通りにして表に出ると、平馬がランクルで待機している。助手席のシートに滑り込む。
「昼飯は喰ったか?胃が空だとつらいぞ」
「大丈夫です。 サンドイッチ食べましたから」
答えると、平馬はそうかと わらった。
「また、あのビルですか?」
「そうだ。あそこがナイツの本部だからな。ビル丸々全てが、そうさ」
平馬がギターケースを後部座席から取り出した。
「一刻も早い方が良いんでな。お前の刀だ。〈 十六夜〉が銘だよ。銃刀法で持ち歩けないからカモフラージュさ」
ケースを開けると、黒塗りの鞘の刀が一振り入っている。抜いてみると鈍い銀の光が、飛び込んで来た。
「今は仕舞っとけ」
「 はい」
車はいつの間にか、首都高に入っていた。やがてあのビルに到着した。エレベーターで 20階に上がる。研究室だ。主任研究員と言う人が、応対した。
「 君が新人か。この刀は隕鉄で出来ている。隕石に含まれる鉄だ。オーバーテクノロジーによる異能者の力を制御する回路が、組み込んである。柄の内部の部分の紋様が、そうだ」
「これが有れば、この前みたいな事起きないんですか?」
「そうじゃない。もっと酷い事態を防ぐ為だ。訓練次第だな」
平馬が会話を引き継いで、
「早速訓練だ。地下4階に、行くぞ。着いてきな」
後も見ずに研究室を出て行く。前もこうだったと思いながら、蓮も跡を追う。 地下4階まで行くと、其所は広い空間だった。刀を腰に落とし込んで、中央迄進む。そこには木材が組んである。
「まずこれに力で火をつけろ。特技の銘は〈蛍火乱舞〉意識を丹臀に集中させて炎をイメージするんだ」
はなるべく言われた通りにと意識する。ウンともすんとも云わない。イラついてくる。やってられるか!と、思った瞬間。激しく炎が、上がり一瞬で木は炭になった。やっぱり村山に火をつけたのは自分らしい。
「これでいいですか?」
「駄目だな。暴発に近い。徐々に絞って、タバコに火をつける所まで、持ってかないといけない。そこがこの特技のゴールだ。意識的に火をつけろ」
二回目はましだった。意識したところに火がつく。しかし、一気に炎が回り木材はまたしても炭になる。十数回目、炎は治まりちょうどキャンプファイアーの様になった。平馬が言う。
「焚き火になったな。休憩だ」
ポットを手のひらに乗せ平馬が、意識集中させると湯が沸く。ペーパードリップのコーヒーに注ぐ。香ばしい香りが漂う。
「ミルクと砂糖は?」
「両方ともお願いします」
蓮はカップを受け取り口をつける。甘い液体は疲れを癒やす。疲労は半端なかった。3時間はぶっ続けだったのだ。
「そんな芸当できるようになりますか?便利だ」
蓮が聞くと、
「すぐさ。俺の属性は〈重力〉だから苦労したが、お前は炎だから熱を扱うなんて次のステップだからな」
平馬はにやりと、笑って答える。
「休憩が終わったら、薪の一本だけに火をつけろ。手に持って頭端にだ」
平馬が表情を引き締めてそう宣告した。ハードルは上がってくるが、それだけコントロールできて来ている。無暗に人間を消し炭にしないですむ。蓮はそう思うと耐えられそうだった。
「はい」
別人の様に気の入っている返事を返す。




