発現3
受付で新しいスマホを受け取ると、蓮は地下駐車場に降りていった。そこにはゴツい ランドクルザーが止まっている。運転席の窓から平馬は、
「 おい、乘れよ」
気さくに声を掛けた。礼を言って、助手席のシートベルトを締めるとゆっくり発車した。
「俺が人を殺したのも 17歳だった。親父だ。いきなり頭が弾けたんだよ。なにが何なんだか訳が わからなかった」
そう平馬が告白した。人を殺した。そう聞いて蓮の苦悩は深くなっていく。それを気遣うように。
「力のコントロールを覚えるんだな。そうすれば犠牲者は増えないさ。その手助けをさせてもらう」
「 ほんとですか?」
気弱に聞く蓮に。
「 ああ、保証する」
平馬が笑いかけてきた。魅力的な笑みだ。笑い返す気にはならないが、少しだけ楽になった。それからもなにげなく 話しかけられが、はい、としか 答えられない。首都高を30分ほど走って、下道におりた。
「 こちらから連絡する」
「 いつになりますか?」
「刀が 打ち終わってからになるな。前にも言ったが、それ迄 おとなしくしとけ」
会話が終わると家に着く。
「 それじゃあな」
「 送ってもらって ありがとございます」
車を降りると、ドアを締めたとたんにため息がでた。ばあちゃんには何も言えないな。意を決して玄関をくぐる。
蓮は祖母と二人暮らしだ。 両親は海外赴任中である。 赴任に伴って2年のはじめに祖母の所に、ひっこしてきた。イジメも転校が原因である。転校生として 注目をあびたのが、村山達には気に障ったのだ。 1学期は地獄だった。抵抗する気も徐々に失せていく、金銭の要求だけはかろうじて拒んだ。祖母に心配かけたくなかったから。村山らも目に着く所には、痣は作らなかった。それが、今日は独りでおかまいなし。あいつとは誰の事だったのだろう?蓮に 心当たりはない。
「 ただいま」
「お巡りさん何だったんだい?」
「 喧嘩を目撃したんだ。 傷害事件になったからその 事情聴取」
咄嗟に嘘をついた。祖母はそのまま信じた様で、
「 晩ご飯は カレーだよ」
日常会話になった。
「 ありがとう。すぐ食べるよ」
食欲は湧かず、口の中切って カレーはしみると思ったが、 食卓についた。平然と食べられる自分に、蓮は我ながら驚く。祖母との会話もスムーズだ。食事を終えると、自室に引っ込む。TV の ニュースをつける。焼死体の事件は 報道されてない。あの廃工場は不良達の溜まり場だ。もう発見されても おかしくない。ナイツが死体を 処理したのだろうか?きっとそうだろう。何故あんなり早く蓮の事が分かったのか。それを聞くのを忘れていたのに今更気付いた。




