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夕闇の 世紀  作者: 愛媛のふーさん
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親子5

 基地の貴賓室でマリアは、ケーキを食べながら待っていた。蓮と千堂は側に控えている。

「マリアパパの戴冠式に出よな」

「うん。パパは王様になったら、忙しくなって遊んでくれないの。でも、皆の為だからママは我慢しなさいって」

「 そうですね マリア。貴女も皇太子になるのだから、国民の事を考えないといけませんね」

そんな会話をしていると、部屋の外が騒がしくなった。長身で均整のとれた30歳ぐらいの黒人男性と、少しふくよかな27か8歳くらいの日本人女性が、ドアを開けて入ってくる。マリアを見て涙ぐんでいた。マリアは蓮のズボンを掴み固まっている。蓮はそっと囁く。

「 もういいんですよマリア」

マリアに向かって頷くと、マリアは駆け出す。

「ママ。パパ。ママ」

マリアはママを繰り返し言いながら泣きじゃくる。有紗皇太子妃はマリアを抱きしめ、ジョン皇太子は頭を撫でていた。二人は思い出した様に蓮と千堂に頭を下げる。

「ありがとうございます」

涙声で感謝を述べる。

「 いえ。任務ですので」

「 そや」

短く答えた時、皇太子ファミリーの背後に控える 6人の男女に気づいた。千堂が声を掛ける。

「 ご苦労様です。蓮、先輩方や」

「 はじめまして。炎聖こと緋村蓮です」

蓮が挨拶すると、30歳ぐらいの如何にもインテリといった感じの日本人男性が返す。

「よくやった。私は〈棋士〉名前はまた今度。残りのメンバーは追々って感じで、まだ任務中なんでな」

残りも頷く。彼らが皇太子夫婦の護衛のナイツの精鋭なのだろう。

 蓮と千堂コンビも彼らに合流して、マリアの護衛を続ける。迎えの車列は王宮に向かい走り出す。30分ほどで王宮に着く。白亜の巨大で立派な建物だ。マリアは着替えの為に自室に入った。部屋の前で蓮と千堂は待機する。マリアが正装して出て来た。褐色の肌が真珠色のドレスに映えて美しい。可愛いらしいティアラを頭にのせて、ドレスの裾を摘まんで挨拶する。蓮と千堂も借り物のタキシードだ。

「 お供します姫さま」

「 このしもべ二人に何なりと、や」

二人はおどけて見せる。マリアは今までとは違い心から笑う様に微笑む。蓮と千堂はマリアを大聖堂に連れていく。

 儀式が始まる。大主教が新国王の両手と頭に聖油をかける。正装のジョン国王の頭に王冠が載せられた。正式に王位にマリアの父親がつく。ポール王子は諦めた様にうなだれている。大勢の来賓が拍手で祝福する。マリアが新国王にキスをした。拍手が一層大きくなる。

 式は晩餐会に移っていた。勿論、国賓の為の会だから蓮達の席はない。会場の外で警備がてら、侍女が新国王からの差し入れとして持ってきたピンクのドンペリで、二人は乾杯だ。

「初仕事と新国王と我らがリトルプリンセスに」

「乾杯」

合わせたグラスの先には、アフリカの乾いた美しい夕闇が広がっていた。

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