親子4
蓮と千堂は息せき切ってスイートルームに駆け込んだ。平馬への挨拶もそこそこにマリアに声を掛ける。
「マリア。パパとママのところに急いでかえるよ。おいで」
「須川さん。そういうこっちゃ。すんません」
侍女達に本国の指示に従うよう言い残して、マリアを抱っこしてホテルのロビーに向かう。正面玄関に迎えのリムジンが待っていた。行き先はナイツ本部、そこからヘリコプターで横須賀に行く。本部屋上でルシファーが待機している。
「手筈は全て整えておきました」
ルシファーの言葉に、蓮は感謝を示す。
「ありがとうございます。ご面倒掛けてすいません」
「いえいえ。これも仕事の内です。料金はしっかり日本政府に請求します」
ルシファーは楽しくて仕方ないという様に、微笑む。
「いくで、蓮!」
千堂はもう乗り込んでいる。マリアを抱いた蓮も続く。
日本からマリアの母国へは12000km。直行便で時差を考慮しても 18時間。プライベートジェットをチャターしても途中の給油に時間を取られる。そこで考えたのが横須賀の米軍空母のF 18-F スーパーホーネット。複座式の空中給油可能な超音速戦闘機である。最高速度 マッハ1.6。理論上は 8時間でいける計算だ。米軍と航路の各国への根回しはルシファーがおこなった。
空母に着く。広報のトム少尉が流暢な日本語で、
「お待ち申しておりました。準備は整っております」
出迎えてくれた。早速フライングスーツに着替える。何故有るのか不明の、子供用のスーツに女性士官に着替えさせてもらっているマリアに、千堂が言う。
「心配要らんからな。少しだけ辛抱してな」
「うん」
緊張してかマリアの口数は少ない。
3機の スーパーホーネットの後部座席に蓮達が乗り込むと、次々に発艦する。急激なGにシートに押さえつけられた。どんどん高度を上げ一目散に飛んでいく。途中、数回の空中給油を受ける。大型な給油機の後に伸びる漏斗状の給油口に機首のノズルを突っ込むのだ。
順調な空の旅を終えてアフリカのマリアの本国の、空軍基地に着陸した。コックピットに梯子が掛けられる。地上に足をつけ、伸びをした。空気が日本と違う。
「 トイレに行きたいわ」
「本当だね。マリア大丈夫?」
「マリア漏れる。早くしたい」
と、いう訳でトイレに直行してから、基地司令官に面会した。通訳の士官が伝えてくる。
「もうすぐ王宮から迎えが着きます」




