親子3
ガラスが砕けた。遼は咄嗟に伏せて無事だ。ドアが立て続けに銃撃される。マシンガンを使用している様だ。蓮の手加減無しの爆龍波でドアを吹き飛ばす。壁を盾にして、千堂の雷撃と遼のショックガンが放たれる。
「突っ込みます」
蓮が意を決した。爆龍波をもう一度飛ばし、身体を低くして部屋に入る。二三発弾を喰らうが、防弾スーツが防ぐ。そのまま突っ込みマシンガンを叩き切る。暴発して軍人風は怪我を負う。千堂はマシンガンが沈黙すると部屋に入った。あたふたしている痩せぎすの、みぞおちにボディーブローを叩き込む。残ったのはシャーマンだけだ。
「大人しゅう降参するか?」
「生きてる依り代使うと、比べられない程強力ね。降参するのそっちね」
「降参する気ないな」
一見、会話が成立している様だが、勝手に母国語話しているだけである。お互いに相手の言葉は理解して無い。いいそうな事が予測の範囲なのでこうなる。
うずくまった黒人二人を取り込む形で、異形の怪物が出来上がった。
「人は傷つけずに倒したい」
蓮が述べると、千堂が諦めた様に返す。
「難儀やな。けど、しゃーないか」
二人を怪物が襲う。スピードが速い。シャツが裂けた。炎と雷撃を、人を取り込んだ胴以外に放つ。しかし、すぐ再生する。以前とは異なるけれども、千堂は電磁波でスキャンしていた。
「大体わかったで。人間の心臓の前に核がある」
「熱の高いとこかな?」
「そや」
「風吼閃!」
「嵐撃舞」
抜刀術で核を斬り、雷撃で人間以外の部分を炭化した。二人の黒人はぐったりしている。二人に構わずシャーマンに詰め寄った。シャーマンがナイフに手を掛ける直前、蓮の十六夜が喉元に突きつけられる。
「 Can you speak Japanese?」
「 No i can't」
「 Can you speak English?」
「 Yes」
蓮がシャーマンとの会話が、英語で可能と確認して遼に通訳を頼む。
「 ここに10万ドルの小切手がある。これで手を引くか?死ぬか?どっちにする」
長い沈黙が続く。やがて小さく掠れた声で、
「手を引くね」
そう英語で言う。なら念書にサインしろという要求も素直に従った。
「失せろや」
千堂が唾を吐く様に言う。痩せぎすと軍人風の二人組は、マリアの母国の警察に引き渡す事になっている。ロープで縛り1階に引きずっていった。大使館員は騒然となるが、
「ジョン王子様に命じられて反逆者を捕らえただけです。日本の警察呼んでください」
蓮がそう告げると、怯えた様に沈黙する。大使がでてきた。
「 この方の言う通りにしてください」
大使はそう言うと、さらに蓮達に向かい弁解した。
「ジョン様へのに反逆に加担していた訳では・・。脅されて仕方なく・・」
「弁解は本国にするんやな」
千堂は怒りを隠さないで答える。10分もするとサイレンが聴こえてきた。二人組が警察官に連行されると、蓮は遼に告げる。
「僕達はホテルに向かいます。トカゲさんは本部に帰ってください」
「 了解しました。疾風預けたら、妻に花とケーキ買って帰ります。報告書は明日だな」
遼の返事に気の抜けた様に千堂は、
「 お熱いこって」
茶化した。入る時とは売って替わり堂々と正門から出る。門を出たところで、蓮と千堂、遼と疾風は別れた。
「今からならチャターすりゃ、戴冠式間に合うんとちゃうか?」
「 ギリギリかな」
蓮と千堂は急ぐ。




