トカゲ5
翌朝、カラスの式神がホテルから出てくるマリア一行を見つけて、つける。リムジンは郊外まで走る。住宅地の人気のない公園で止まった。近くに狙撃可能なビルは無い。背の高い痩せた黒人と、筋肉質のがっちりした軍人風の黒人の二人は、シャーマンと携帯電話で連絡とりながら狙撃可能なポイントを探す。1km離れたマンションを発見した。
「マリア王女は何をしてる?」
痩せた男が訊く。シャーマンは苛ついた声で答える。
「三輪車ではしゃいでるよ。いい気なもんね。あの頭ザクロみたいに弾けさせたい」
「もうすぐそうなる」
そう述べると、軍人風とマンションに不法侵入する。古いビルだったので屋上迄、苦労する事もなく上がった。軍人風はライフルを組み立てるとスコープを覗く。倍率を低くして公園を探す。見えた。マリアが小さく見える。倍率を上げていく。マリアの顔が序じょに大きくなる。眉間に狙いを定めた。
「良い子だから動くなよ」
筋肉質はそう言うと、引き金を絞る。頭が弾けた。と思ったが、何も変わらない。
「 そこまでだ」
トカゲが疾風を連れて立っていた。遼に向けて発砲する。遼は慌てて伏せる。その隙に二人組は逃げ出す。敢えて急いで追わない。疾風は二人の臭いをしっかり覚えている。トカゲは蓮にスマホで連絡した。
「計画通りにいった。しかし、警護対象者を囮とはね。万が一の事態考えなかったんですか?」
「雷帝の探知に反応あったし、僕が熱で蜃気楼作って狙撃対策は万全でした。追跡お願いします」
三人組の内1人が、スナイパーだと判明したので、考えついた作戦だ。後は本拠地を突き止めて急襲するだけである。念のためマリアの警護は平馬が引き継ぐぐ。蓮と千堂はマリアに向かって告げる。
「マリア。悪い奴倒してきます。すぐ戻ってきますからね」
「そういうこっちゃ。ええ子にしといてや」
マリアは心配そうに言う。
「二人とも気をつけてね。やっつけたら、パパ、ママに会える?」
「お父上達はナイツの精鋭が守ってます。片がついたら会えますよ。」
蓮が安心させる様に言い聞かせる。
遼はマンションを降りると、疾風のリードを外した。そして命じる。
「追え」
疾風は一目散に走り始めた。遼は蓮と千堂の二人を拾ってから、疾風の後を追う。疾風の首輪には GPSが埋め込まれている。パンダのカーナビに疾風の位置が表示された。疾風は名前の通り一陣の黒い風となって、都内を駆け抜ける。黒人二人組は車で飛ばした様で疾風が45km/h位で後をつける。狼犬はこの速度で 100キロ移動可能だ。しかし、交差点は大丈夫だろうか?と蓮が心配していると。遼は、
「疾風は交差点も車の流れでいけない、いける判断できます」
そう言う。千堂は遼から借りたタブレットで進路の予想円のなかに何があるか見ている。不意に千堂が声を上げた。
「マリアの国の大使館あるで」




