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夕闇の 世紀  作者: 愛媛のふーさん
13/25

初仕事3

 夫妻はさも愛しげにマリアを眺めてから、蓮と千堂に向き直ってこう述べた。

「 お世話になります。マリアの事 よろしくお願いしましたね」

マリアは先程の件で怯えていたが、須川夫妻の笑顔を見て安心した様で、

「グランパ。グランマ。いらっしゃい」

須川婦人に駆け寄る。今度はやさしく抱き上げられた。

「前後を考え合わせると、須川御夫妻は見張られてたようやな」

「 そうなるね」

千堂の指摘に蓮が答える。見張られてたとすると敵は複数の可能性が高い。蓮はナイツに連絡してアフリカからの来日者の中で、マリアの国の者のリストアップを依頼した。そんな最中でも祖父母と孫は心暖まる会話を繰り広げている。

「グランマ、グランパはお元気だった?」

「元気ですよ。マリアは優しいのね」

須川婦人が言うと、須川氏が聞く。

「 お父さん お母さんは元気かね」

「元気よ。でも二人ともお仕事忙しくて、マリアに一人で日本行っておいでって言ったの」

マリアは拗ねた様に甘える様に告げる。

「マリアは何か欲しい物ある?」

「マリアぬいぐるみが欲しい」

それを聞いた須川氏は。

「マリアを連れて買い物は可能ですか?」

遠慮がちに聞いた。リストをチェックしていた蓮は、

「トイザらス、貸し切りにする手配します」

即座に述べた。

「ほんまは、大人しゅうしてもらいたいけど、閉じ込めとくのも可哀想やしな」

千堂も反対しない。ナイツの車両部に護衛用のリムジンを回してもらう。ホテルを全員で出ると手配した車に乗り込む。千堂は雷使いであるお陰で、電磁波を放ちレーダーの様にスキャンできる。車移動の最中千堂は、探知に集中して無口だったし、蓮も入国者リストのチェックに余念がなかった。したがってマリアの相手は須川夫妻がすることになる。かえってその方が良いと千堂も蓮も思っていた。

 到着迄、襲撃はなかった。おもちゃ屋の入り口で店長以下、店員がずらっと出迎える。万が一を考え十六夜を竹刀袋に入れた蓮が、店内をチェックした。外では千堂が油断なく気を配る。異常はない。

「 マリア いいですよ」

蓮の言葉にマリアは、歓声を上げ走って店内を見てまわる。

「マリアこれがいい」

体と変わらない程大きな犬のぬいぐるみを抱えた。須川夫妻はそれを買い求め、更に流行りのアニメのキャラクター付きの三輪車も買う。マリアはうれしそうだ。蓮は少し安堵した。

 マリアはお気に入りのぬいぐるみを抱えたままで、リムジンに乗り込む。蓮と千堂は周りを警戒している。一行が全員車に乗りドアが閉まり、それを一羽のカラスがじっと見ていた。その眼の色は血の様に朱かった。

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