初仕事2
昼食が運ばれてくる。千堂が長い針を数本取り出して、料理を極少量すくいタバコの箱程の機械に入れた。ナイツの薬物検出キットである。安全な様だ。
「食べてもええで」
千堂が告げると、マリアは歓声を上げた。メニューはオムライスにコーンポタージュ、シーザーサラダ。シンプルだが素材は吟味され料理人は一流で、味は格別だ。
「美味しいね。蓮、円。」
マリアはうれしそうに笑っている。
「 はい」
「 そやな」
千堂は、円と呼ばれる事を諦めて受け入れた様で、何も言わない。面倒だという理由で全員同じメニューだが、全て千堂がチェックを済ませた。食事は何事もなく終える。食器をワゴンに乗せて片付けた侍女が。
「須川御夫妻がお越しです」
報告すると品の良い婦人が入って来た。
「マリアおばあちゃんですよ」
「グランマ!グランパ!」
マリアが駆け寄る。抱きつこうとした刹那ビクッとすくみ叫ぶ。
「違う!!グランパ、グランマじゃあない!」
弾かれた様に蓮がマリアを引き寄せた。千堂はダッシュで二人の前に立ち塞がる。
「シュルル」
口が裂けていき鋭い乱杭歯が覗く。服が破れ、剛毛に覆われた腕が延び、いびつな爪が襲う。千堂は爪をスエーバックでかわして、ジャブを打つ。雷気がこもった拳が顎先に当たる。怪物は弾かれた。その隙にマリアと侍女を隣室に逃がし蓮は、千堂と並んだ。
蓮は愛刀〈十六夜〉を抜くや否や切りかかる。刀には炎をまとわさせていた。正眼から真っ直ぐ振り落とした刀は、怪物の肩に命中する。もう一体が牙で喰いちぎろうと蓮目掛けてくるところを、千堂が雷撃とメリケンサックで固めた拳の 1 2のコンビネーションで、迎え撃つ。 2の左ストレートが顔面にめり込んだ。二人の攻撃に怪物は怯む。傷口が治癒しようとしてしきらない。炎と雷で傷口が侵食した為の様だ。
「蓮。こいつら生きてるもんやない。式神の一種やないか」
「式神?呪い師や陰陽師が使うあれか!」
蓮は漫画や映画の知識しかないが、術者が依り代を使って呼び出すもののはず。遠慮はいらなかった。蓮は化け物の腹に刀を思い切り刺し通すと、一気に燃やす。千堂は千堂でボディブローをリバー、肝臓にぶちかまして雷撃を放つ。
「グワァァ」
そう叫ぶと、式神は消えた。後に黒焦げになった木彫りの人形が残っている。それを見て千堂は。
「日本の物じゃあないな。アフリカかいな?」
「 心当たりはないかな?」
そう聞いた侍女は、恐れおののいて、
「ジュジュ!!」
悲鳴に近い叫びを上げた。
スマホで検索した結果、アフリカの呪術師や呪物の事の様だ。
「呪術師が相手か」
蓮は少し考え込む。対称的に千堂は不敵に笑い。
「何が相手でも、やる事変わらへん。来るなら来いや」
その時、備え付けの電話が鳴った。蓮がでる。
「須川御夫妻がお越しです」
まるでデジャブだ。蓮はしかし、部屋まで上がってもらった。千堂がドアを開け電磁波でスキャンする。今回は本物の様だった。




