我が輩はネコである
我が輩はネコである。
誰にも見つけられることなく、ただひっそりと身を潜めている。ここは暖かい。が、暗い。
我が輩の上を行き交うニンゲンという動物は、面白い。我が輩の住む場所で、球蹴りをしたり、走り回ったりしている。それのなにが面白いのか、我が輩にはさっぱりわからない。ある者は片手になにやら抱えて横断し、ある者は他者と密着して愛を語らっている。
しかしこのニンゲンという動物は、誰も我が輩に情けをかけない。我が輩のヒゲが、ぼろく薄汚いからだろうか。暑くなるとシューシュー火を放つ者が現れて、我が輩はそれが一番恐ろしい。赤や青に光る火が、我が輩目掛けて襲ってくるやもしれんのだ。これほど恐ろしいことがあるだろうか。それに、年に何度か、かられてしまう。そして我が輩を、鉄の板でぶちぶちと切っていくのだ。それでも我が輩はこうして生きているのだが、いやはやニンゲンというものは、面白くもあり恐ろしい。
我が輩はネコである。
雑草の、根古である。