君に恋をした。
今年も夏がやってきた。俺は夏が好きではない。
夏といっても、まだ7月の初め頃だ。今からが灼熱地獄だ。
今日もクーラーの効いた自分の部屋を思うと、この授業から抜け出したくなる。
俺は港川高2年の北島将平。今日も何気ない日々をすごしている。
俺の席は窓側だから外の景色が良く見える。ふつう、学校の窓から見える景色はグラウンドなのだが、
俺の教室は運よく校門が見えるグラウンドとは反対側の教室だった。
だからといって、外ばかり見ているのではない。最近はずっと前を見ている。
俺には好きな人がいる。
ずっと前から好きだった・・・なんてモンじゃない。
最近転向してきた女の子、向野奈美さんに心を奪われているのだ。
話したことがないし、それどころか向野さんの目も見れないのだ。いったいどうしたんだ俺!!
これが恋と気づいたのはつい最近の事である。
そうとなったら告白だ!・・・馬鹿なことを考えるな!俺!俺がそんな事できるかよッ!!
そうこうしている内に授業は終わる。
「おい、将平?しょーへー?」
前の席の川原准が顔を覗いてきた。コイツは中学からの友達だ。
「お、おう。何だ?」
「今日の練習なんだが・・・」
ずらずらと、部活の話をし始めた。何でコイツが俺に相談しているかというと、俺は主将、ボクシング部
主将の北島将平だ!
こんなにボ~っとしているのに、夏が嫌いなのに、ちょっとイマイチな主将しかも、ボクシング?
だなんて言われても答えようがないので聞かないで欲しい。
「あぁ、今日はトレーニングだ。トレーニングルームに集合しろと伝えとけ」
トレーニングは嫌いではない。鍛え抜かれた自分の身体に自信があった。
そんなボクシング馬鹿が始めて恋をしたのだ。