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残りの猶予は

猶予は10分

ほうほう、そう来るのかい。そちらから誘っておいて、こちらがその気になったら用は済んだとばかりに私をかわして、すぐさま姿をくらますのだね。


そして残るのは傷心の私だけ、ということなのだね。そんなやり口は男の風上にも置けないよ。


けれど私が何度も君に騙されてしまうのも悔しいものだね。しかしついつい今度こそは…と思ってしまうのさ。今度こそは、君が私の素直な心を欺いたりしないだろう、本気になって全力で自分に向き合ってくれるだろう、と思ってしまうのだよ。

そして毎回痛い目に負うのさ。学習しないものだね私も。


しかし君も誠実そうな顔してなかなかやるね。その銀縁の眼鏡でついつい信用するのかもしれないね。

いったい今まで、私以外にもどれだけの相手をその毒牙にかけてきたのだい?

その中に君も本気になった人はいたのだろうか。

私には決して叶えられなかったことだけれど、他の誰かが成し得たりしたのだろうか。

その誰かが私だったらよいのにと思わずにはいられないのだよ。おや、もしやこれは嫉妬というものなのかね。初めてだよこんな気持ちは。

そうそう、最近君の眼鏡に似たものを見るたびに君の姿が思い浮かぶのさ。

私も似た眼鏡をあつらえようかな。


なぜかって?

だって鏡を見るたびに君を思い出せるかもしれないだろう?

そうしたらきっとこの想いも色あせないですむかと思ったのだよ。


さて今日はこれでお暇するよ。10分後には委員会に行かねばならないのさ。

もし君の時間が空いたらまた連絡をくれないだろうか?

今度こそ君に本気になってもらうために自分を磨いてくるよ。ふっふっふ、わたしはあきらめの悪い女だからね、君も覚悟しておくのだよ。



む?できればもう来ないでほしい?

それはとても承服しかねるね。君に会えないなんて耐えられないよ。


え?それなら誤解を招く発言をやめてほしい?最近自分に刺さる視線が痛い?

どうしたのかい、私が何かしてしまったのだろうか?君に何かあったのかい?君にはいろいろとお世話になってるからね、私にできることなら何だって力になるよ。


そういうことをあちこちで言うから誤解を招くって?

しかし本当のことなのだよ。君には図書室の整理を手伝ってもらったり、買い物に付き合ってもらったり、今日みたいに囲碁の対局をお願いしたりといつも迷惑をかけているからね。

すごく感謝をしているのだよ。


ふっ、けれど囲碁については別なのだよ、きっといつか君を超えてみせるよ。

たとえ毎回毎回君のやり方に翻弄されて大差で負けてしまってもさ。近いうちに君に全力で戦ってもらうからね、覚悟しておくのだよ。置き石だってなくしてみせるよ。


おっと話をずらしてしまったようだね申し訳ない。

でも本当にどうしたのだい?なにか困っていることでも…、む?誰か来たみたいだね。


おやおや君かい、わざわざ迎えに来てくれたのかい、ありがとう。

すまなかったね、ついつい夢中になってしまったみたいだよ。

いやあ、部長といるといつも時間を忘れてしまうのだよ。恥ずかしいね。

おや、彼がどうかしたかい?部長と君は知り合いだったのかい、そんなに見つめて……。


おお、部長に君を紹介しないとね、部長よ、この子は委員会の後輩なのだよ、かわいいだろう?

この子も辛いものが好きなのだよ、このまえ君と一緒に買いに行った菓子をこの子にもあげたら喜んでくれてね、今度三人で一緒に辛いもの巡りでもしようと思っていたのだよ。


ああ、そういえば話の途中だったね、最近見られている気がするということだね、どうしたのだろう、君は眼鏡の似合う男前だからな、もしやストーカーというものかもしれない。

危険だね、よし、ここは私が君を送り迎えしてガードでも……む?いらないのかい。


だが先ほどから顔色が悪いよ、やはりつらいのだろう?保健室に行くかい、それとも自宅に帰るかい?さあ私につかまりたまえ、遠慮はいらないよ、私は力持ちと評判なのさ。それに君の役に立てるなら何の苦労でもないのだよ。



ああ、せっかく迎えに来てくれたのに申し訳ないのだが、委員長に私が遅れると伝えてくれないか?彼を送り届けてから行くよ。

む?どうしてまた泣きそうな顔をしてるのだいこの子は。

さあ、このハンカチを使うのだよ。

君は泣き顔もことのほかかわいいからな、君にもストーカーができてしまうぞ。



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