↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/5

第5話 ジムで出会った女は、とにかくよく喋る



 有給初日。


 俺は近所のスポーツジムに来ていた。


 受付を済ませ、着替える。


「……何をすればいいんだ?」


 普段から体は動かしている。


 だが、仕事としての訓練と、趣味としてのトレーニングでは勝手が違う。


 俺は適当に器具を眺めながら、空いている場所を探した。


 すると。


「……よし」


 少し離れた場所で、一人の女性がトレーニングをしていた。


彼女は真剣な表情で器具を使っている。


 ……かなり慣れているようだ。


 俺も自分のトレーニングを始めようとした。


 そのときだった。


「……あっ」


 女性の手元が滑った。


「危ない!」


 俺は反射的に駆け寄った。


 器具が大きく動く。


 俺はそれを支え、彼女が怪我をしないように止めた。


「大丈夫ですか?」


「は、はい……!」


 女性は驚いた顔で俺を見る。


 そして。


「ありがとうございます!」


 ほっとしたように笑った。


「いえ。怪我がなくてよかったです」


「本当に助かりました……!」


 彼女は何度も頭を下げる。


「すみません。ちょっと力が入りすぎちゃって」


「無理はしないほうがいいですよ」


「ですよね……。でも、最近ちょっと頑張ってて」


「そうなんですか?」


「はい!」


 そこからだった。


「実はですね、最近仕事が忙しくて運動不足だったんですよ。それで体力落ちたなって思って、ジムに通い始めたんです」


「なるほど」


「でも最初って何やっていいか分からないじゃないですか。だからトレーナーさんに聞いたり、ネットで調べたりして。それで昨日もやりすぎちゃって……」


「……そうなんですね」


「そうなんですよ。それで今日こそは無理しないって決めてたんですけど、なんか調子がよくて、もうちょっといけるかなって思ったら、今みたいになっちゃって」


「…………」


「本当にすみません。助けてもらって」


「いや、大丈夫ですよ」


「ありがとうございます」


 彼女は笑った。


 そして。


「そういえば、あなたもジムに通ってるんですか?」


「今日が初めてです」


「えっ、初めて?」


「はい」


「じゃあ、もしかして運動苦手ですか?」


「いえ」


「じゃあ何で?」


「有給を取ったので」


「有給?」


「はい」


「いいなぁ……」


 なぜか羨ましそうな顔をされた。


「でも、消防士なので、普段から体は動かしてます」


「消防士なんですか!?」


 急に声が大きくなった。


「はい」


「えっ、すごい!」


「そうですか?」


「すごいですよ! 人助ける仕事ですよね?」


「まあ……そうですね」


「火事とか行くんですよね?」


「はい」


「怖くないんですか?」


「怖いですよ」


「えっ、怖いんだ」


「怖いからこそ、訓練します」


「なるほど……」


 彼女は感心したように頷いた。


「格好いいですね」


「……ありがとうございます」


 久しぶりに言われた気がする。


 いや。


 消防士として褒められることなら、仕事中にもある。


 でも。


 なぜか、この人に言われると少し照れた。


「そういえば、お名前聞いてもいいですか?」


「ああ、すみません。俺は剛力清十郎です」


「剛力さん、珍しい名前ですね」


「はい、よく言われます」


「私は中田杏奈です」


「中田さんですね」


「杏奈でいいですよ」


「……え?」


「だって、同じジム仲間になるかもしれないじゃないですか」


「そういうものですか?」


「そういうものです!」


 杏奈さんは、楽しそうに笑った。


「じゃあ、私も剛力さんじゃなくて清十郎さんって呼びますね」


「……分かりました」


「よろしくお願いします、清十郎さん」


「こちらこそ」


 俺は軽く頭を下げた。


 それから俺もトレーニングを始めた。


 ……のだが。


「清十郎さん、それ使うんですか?」


「はい」


「じゃあ、終わったら教えてください」


「分かりました」


「そういえば消防士って休みの日何してるんですか?」


「……」


 トレーニングを始めたばかりなのに、また話しかけられた。


「俺は……特に」


「じゃあ、趣味とかないんですか?」


「……あまり」


「えー、もったいないですよ」


「そうですか?」


「そうですよ。人生、楽しまないと」


「…………」


 よく喋る人だ。


 本当によく喋る。


 でも。


 不思議と嫌ではなかった。


 俺は黙って彼女の話を聞いていた。


 杏奈さんは、仕事の話をして。


 ジムの話をして。


 最近見た映画の話まで始めた。


「それでですね――」


「はい」


「――ってことがあって」


「なるほど」


 俺は相槌を打つ。


 杏奈さんは嬉しそうに笑う。


 そんな時間が、妙に心地よかった。


 これまで付き合った女性たちとは、少し違う気がする。


 俺が消防士だからでもない。


 過去の恋愛を知らないからでもない。


 ただ普通に。


 俺という人間を見て、話しかけてくれている。


「……じゃあ、また」


 帰る時間になった。


「はい。また明日も来ます!」


「明日も?」


「有給なんですよね?」


「はい」


「じゃあ、明日も会えますね」


「……そうですね」


 杏奈さんは笑った。


「じゃあ、また明日!」


「はい」


 俺も笑って答えた。


 ジムを出てから、ふと思う。


「……よく喋る人だったな」


 それだけだった。


 まだ、この時点では。


 恋愛なんて考えていなかった。


 ただ。


 久しぶりに、誰かと話すことが楽しいと思えた。


 そして翌日。


 俺はまた、ジムへ向かった。

ご拝読ありがとうございました!

金曜の夜、完全匿名・のび犬の新作ラブコメを見つけてページをめくってくださり本当にありがとうございます✨


女に裏切られ、それでも人命救助に命をかける熱い彼のこれからの物語、じれったくも甘々に描いていきますので応援していただけると嬉しいです!


---

  のび犬から、深夜の切実なお願い


なろうの海は本当に広大で、ぶっちゃけページ(PV)がどれだけたくさんめくられても、皆様からの【★評価】が無いと、この物語は明日にも検索の彼方へ沈んでいってしまいます……。


主人公の消防士が「次の被災者」を救助できるのが先か、それとも本書がポイント不足で「なろうの奈落」に落ちるのが先か、まさに今、命懸けのデッドヒートが始まっています……!(泣)


もし少しでも「続きが気になる!」「消防士カッコいい!」と思ってくださったら、画面を一番下までスクロールして、


【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に染めて、この作品を奈落から救助してください!


なろうにログインしているWEBやPCの読者様なら、ポチポチッとクリックするだけで、1秒で完了します。あなたのその1秒のポチが、のび犬の命の灯火(執筆エネルギー)になります。


ブックマークや感想も全力でお待ちしております!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。