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『ギルド登録と、始まりの街の“濃すぎる”住人たち』

 修行を終え、俺たちは街へ向かって歩いていた。

 リュミナス曰く、この世界の冒険者はまず ギルド登録 をするらしい。


「ギルド……ってことは、あれか? 魔物を倒して報酬を得る、みたいな」


「うむ。だが汝の場合は、まず“生活の基盤”を整えねばなるまい。ギルドはその第一歩である」


(ギルドって聞くだけでラノベ臭がすごいんだけど……)


 そんな俺の苦悩をよそに、街の全貌が見えてきた。


 石造りの城壁、尖った屋根の建物、行き交う人々。

 一見すると普通のファンタジー世界だ。


(よかった……まともそうな街もあるんだな)


 そう思った矢先。


「「「異世界の新参者だぁぁぁ!!」」」


 何故か街の門前にいた人々が、俺を見て歓声を上げた。


「……え?」


「おおっ、歓迎セレモニーが始まってしまったか。運が良いのやら悪いのやら」


「セレモニー!?」


 門の前では、なぜか町人たちが旗を振り、笛を吹き、紙吹雪をまいている。


「な、なんで……?」


「転生者はこの世界では珍しくないが、やはり希少ゆえ歓迎せねば失礼であろう?」


(いや、普通はしないだろ……!?)


 紙吹雪をかぶりながら街に入ると、

 さらに**“濃すぎる”住人たち**が次々現れた。



「君が転生者かねッ!? 我が鍛冶屋、武具のことなら任せておくれッ!」


 ムキムキのドワーフが、ずっとウインクしながら名乗ってくる。

 いちいち語尾に“ッ!”をつけるのはやめてほしい。


「お、おう……」


「遠慮するなッ! 初回は半額でッ!」


(テンションがしんどい……!)



「お疲れさまです〜。もしお部屋をお探しでしたら、当宿屋“星屑亭”をご利用くださいませ〜♪」


 今度は色っぽい女性が、わざとらしいウィンクをしながら近づいてくる。

 語尾にハートが見えるような声だ。


「え、えぇっと……」


「初心者さんには“添寝つきプラン”が〜♥」


「いや、いらねぇよ!!」


(どんな文化なんだこの街……!?)



 そして、リュミナスが小さく咳払いをした。


「ふむ……では、ギルドへ行こうか。ここからは少々、真面目な場であるからな」


(やっと普通の場所が来るのか……)


 期待しながら歩いて行き、ギルドの扉を開けると――


「「「ようこそ新たなる冒険者よ!!」」」


 ギルド受付の女性とスタッフ全員が、両手を広げて俺を迎えてきた。


(普通じゃなかった……!!)


 俺の絶望をよそに、受付の女性が爽やかに笑った。


「こちら、冒険者ギルド“セレスティア支部”です! 転生者さま、大歓迎でございます!」


「お、おぉ……」


「まずは登録を行いますねっ! カードを作成しますので、こちらの魔法陣に手を置いてくださ〜い!」


 やたらテンションが高い。

 しかも語尾が毎回跳ねる。


 手を置くと、魔法陣から淡い光が広がり、カードが浮かび上がる。


◆ 冒険者カード ◆

名前:段野 真

ランク:F

スキル:耐オタク精神、ラノベ世界適応

コメント:期待の新人です♡


「……コメントの♡マークは必要か?」


「はぁ〜い、登録者全員に入れてますっ♪」


「いらねぇだろ……」


 リュミナスが後ろで微笑む。


「ふふ、案ずるな。すぐ慣れる」


「慣れたくねぇんだよ!!」


 叫んだ俺の声が、ギルド中に響き渡った。



「さて、次は街の案内である!」


 リュミナスが胸を張る。


「ここ“セレスティア”は、魔力量の高い住人ほどテンションも高くなる傾向があるのだ」


「何その仕組み!?」


「ゆえに、落ち着いた者は少ない。“普通”を求めるなら……」


「なら?」


「酒場に行くがよい」


「酒場!?」


「うむ。酔ってテンションを落とした者が集まるゆえ、口調が“まとも”に近づく」


「精神的に落ち着いた状態じゃなくて、酔ってるだけじゃねぇか!」


 だが、選択肢は少ない。

 この世界の文化に摩耗しながら、俺は静かに息を吐いた。



「はぁ……じゃあ、その酒場に行こう」


「よし! では案内しよう。いざ、酒場“ノクターン亭”へ!」


(……名前からして嫌な予感しかしないんだけどな)


 こうして俺の異世界生活は、

 ラノベ文化が“デフォルト”の街で本格的に始まった。

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