『ギルド登録と、始まりの街の“濃すぎる”住人たち』
修行を終え、俺たちは街へ向かって歩いていた。
リュミナス曰く、この世界の冒険者はまず ギルド登録 をするらしい。
「ギルド……ってことは、あれか? 魔物を倒して報酬を得る、みたいな」
「うむ。だが汝の場合は、まず“生活の基盤”を整えねばなるまい。ギルドはその第一歩である」
(ギルドって聞くだけでラノベ臭がすごいんだけど……)
そんな俺の苦悩をよそに、街の全貌が見えてきた。
石造りの城壁、尖った屋根の建物、行き交う人々。
一見すると普通のファンタジー世界だ。
(よかった……まともそうな街もあるんだな)
そう思った矢先。
「「「異世界の新参者だぁぁぁ!!」」」
何故か街の門前にいた人々が、俺を見て歓声を上げた。
「……え?」
「おおっ、歓迎セレモニーが始まってしまったか。運が良いのやら悪いのやら」
「セレモニー!?」
門の前では、なぜか町人たちが旗を振り、笛を吹き、紙吹雪をまいている。
「な、なんで……?」
「転生者はこの世界では珍しくないが、やはり希少ゆえ歓迎せねば失礼であろう?」
(いや、普通はしないだろ……!?)
紙吹雪をかぶりながら街に入ると、
さらに**“濃すぎる”住人たち**が次々現れた。
◆
「君が転生者かねッ!? 我が鍛冶屋、武具のことなら任せておくれッ!」
ムキムキのドワーフが、ずっとウインクしながら名乗ってくる。
いちいち語尾に“ッ!”をつけるのはやめてほしい。
「お、おう……」
「遠慮するなッ! 初回は半額でッ!」
(テンションがしんどい……!)
◆
「お疲れさまです〜。もしお部屋をお探しでしたら、当宿屋“星屑亭”をご利用くださいませ〜♪」
今度は色っぽい女性が、わざとらしいウィンクをしながら近づいてくる。
語尾にハートが見えるような声だ。
「え、えぇっと……」
「初心者さんには“添寝つきプラン”が〜♥」
「いや、いらねぇよ!!」
(どんな文化なんだこの街……!?)
◆
そして、リュミナスが小さく咳払いをした。
「ふむ……では、ギルドへ行こうか。ここからは少々、真面目な場であるからな」
(やっと普通の場所が来るのか……)
期待しながら歩いて行き、ギルドの扉を開けると――
「「「ようこそ新たなる冒険者よ!!」」」
ギルド受付の女性とスタッフ全員が、両手を広げて俺を迎えてきた。
(普通じゃなかった……!!)
俺の絶望をよそに、受付の女性が爽やかに笑った。
「こちら、冒険者ギルド“セレスティア支部”です! 転生者さま、大歓迎でございます!」
「お、おぉ……」
「まずは登録を行いますねっ! カードを作成しますので、こちらの魔法陣に手を置いてくださ〜い!」
やたらテンションが高い。
しかも語尾が毎回跳ねる。
手を置くと、魔法陣から淡い光が広がり、カードが浮かび上がる。
◆ 冒険者カード ◆
名前:段野 真
ランク:F
スキル:耐オタク精神、ラノベ世界適応
コメント:期待の新人です♡
「……コメントの♡マークは必要か?」
「はぁ〜い、登録者全員に入れてますっ♪」
「いらねぇだろ……」
リュミナスが後ろで微笑む。
「ふふ、案ずるな。すぐ慣れる」
「慣れたくねぇんだよ!!」
叫んだ俺の声が、ギルド中に響き渡った。
◆
「さて、次は街の案内である!」
リュミナスが胸を張る。
「ここ“セレスティア”は、魔力量の高い住人ほどテンションも高くなる傾向があるのだ」
「何その仕組み!?」
「ゆえに、落ち着いた者は少ない。“普通”を求めるなら……」
「なら?」
「酒場に行くがよい」
「酒場!?」
「うむ。酔ってテンションを落とした者が集まるゆえ、口調が“まとも”に近づく」
「精神的に落ち着いた状態じゃなくて、酔ってるだけじゃねぇか!」
だが、選択肢は少ない。
この世界の文化に摩耗しながら、俺は静かに息を吐いた。
「はぁ……じゃあ、その酒場に行こう」
「よし! では案内しよう。いざ、酒場“ノクターン亭”へ!」
(……名前からして嫌な予感しかしないんだけどな)
こうして俺の異世界生活は、
ラノベ文化が“デフォルト”の街で本格的に始まった。




