13章73話 複合型モンスターを倒せ
トラクさんの重い攻撃が着実にダメージを蓄積させ、ログマは夥しい量の触手と風術弾を消し去る。俺はぐにゃぐにゃ蠢く複合型の身体中を駆け回って、片っ端から剣を突き立てた。ケインの妨害とサポートのお陰で、皆のダメージも少ない。
複合型は予想より遥かに脆かった。合体前のモンスター達は防御面が脆かった。その特性をそのまま受け継いでいるようだ。合体して強化されるという想定で警戒していたが、下回ってくれた。こちらの火力は四人で充分だ。
だが同時に、非常に高い攻撃力を誇った。
束ねた重い棍棒をそこらじゅうの地面に打ち付けまくりトラクさんを吹き飛ばす。大量の小さなつむじ風で後衛のログマとケインを切り裂く。たまに発する毒霧と酸にも、手を焼いた。
棍棒はオーク、毒霧と酸はバロウワイト、つむじ風はブリーズボイド。今まで遺跡で倒した中小モンスターを思い出させる攻撃だが、威力と対応難易度は段違いだった。
「きゃあぁっ――!」
「ケイン……!」
「つっ、大丈夫! ルーク、集中だよ!」
皆の大きな悲鳴が聞こえる度に振り返ってしまうのは俺の弱み。だが、俺自身は大きな怪我をせずに済んでいる。おそらく、奴の身体に密着するような距離で攻撃しているから手が出しにくいのだろう。
「はっ、はあっ、はあ」
「ふっ……ふう……」
俺とトラクさんが肩で息をし始めた頃には、内容液を噴き出し触手を切断されまくった複合型の体は縮み、最初の半分くらいになっていた。
自らを鼓舞する言葉を口にして、再度距離を詰める。
「はぁっ――もう少しだ。勝ちは見えてる!」
「行けルーク! 加速してやる!」
「本当? 助かる! 最初からやれよ!」
「負担がデカいんだよ馬鹿!」
ログマの風属性の支援を脚に受けて、かなり走りやすくなった。攻撃時の反応を見るに、最後の核が恐らく頭頂部にある!
ヤツに刺さったままの矢や、肉塊の中の謎の骨、棍棒などを手で探り、掴んだり駆けたりして登った。俺に向かってくる攻撃はログマが殆ど防いでくれたし、滑って落ちかけると、ケインの風が助けてくれた。
身体の上部へと登る途中で、見落とした噴気孔のようなものから酸が噴射された。
「あぶねっ――」
咄嗟に防具のない頭部を庇った代わりに、胸部と腹部の防具には大きく穴が空いた。防具があったおかげで無傷で済んだのだ。次は無い。肝が冷えることだ。
頭頂部に辿り着き、剣先を下へ向けたが、体を大きく振られた。狙いが定まらず、肉の上で転ぶ。
「わっ、とと……!」
その隙に、何本かの蛇みたいな触手に囲まれた。気持ち悪さに鳥肌が立ち悲鳴を上げる。
「うひええぇ!」
矢が風を切る音が聞こえた後、突然触手と肉の床の動きが緩くなって、今はふるふると震えるのみになった。傷の増えてきたケインがこちらへ呼びかけてくれている。
「麻痺毒が効いたみたい、やって!」
「凄い! ありがとう!」
立ち上がり剣先を向ける先は、すぐ足元の肉の中に透けて見える、緑の光を発する黒い球。全体重をかけて、剣を下へと突き刺した。剣は難なく鍔まで飲み込まれ、複合型の動きが静止する。
ぎゃらららら――!
断末魔が上がり、奴の身体は端の方から風に流れていく。色々なモンスターから得られる戦利品が、ボロボロとそこら中に飛び散った。
剣を引き抜き、トラクさんの隣へと飛び降りる。背を優しく叩かれた。
「ルークさんお疲れぃ!」
「ありがとうございます! でもこっから本番ですよ!」
「そうだね、頑張ろっかー!」
風竜の方へ四人で走りながら、体力回復薬を飲んだ。打撲以外は大した負傷は無いが、体力には余裕が無い。特に、登り続けた脚。力を入れると少しカタカタと震える。
薬を飲む様子を見たケインが、不安そうに声を掛けてくる。
「ルーク、大丈夫? ずっと走ってたね……」
「……はは、正直ちょっとキツい。足場悪いとこ走るの、体力使うよね」
優しい彼女はやはり目を伏せた。
「――負担、かけてごめん」
「あははっ、謝らないの! お互い様だよ、後衛なのにそんなに傷だらけにしてごめんね」
「ふふっ、そうだね、お互い様だね。頑張ろ」
「おう!」
先を走るログマがスピードを落として声をかけてきた。
「お前、防具……」
「あー、これね。酸を食らった」
「間抜けが。風竜にその油断が通じると思うなよ」
「ハハ、耳が痛いな。了解だよ」
そう、これは前哨戦。戦いはまだ始まったばかりだ。俺達は、竜へ向かって駆けた。




