12章70話 絶対勝とう
そこからの作戦会議は円滑に進捗した。戦闘イメージの解像度が上がり、それに伴い俺達の士気も上がっていく。
先陣を切って陽動するのは、トラクさんだ。
「複合型の方に仕掛ける予定だけど、アイツ、奥の方にいるんすよね。風竜の周囲を通過しなきゃいけない。やだなー」
レヴォリオが、彼の気持ちを引き上げる。
「確かに危険度は高い。ただ、トラクが竜の視線を引き寄せることで、俺達が背後を取りやすくなる。初手で大きく削れる可能性が高まるんだ。そして、それが上手く行けばお前は無事で済む。任せておけ」
「そうだなぁ。ま、やれる範囲でやってみますよ」
レヴォリオがふとログマを見る。
「ログマ。お前は遊撃担当だが、初手はトラクのサポートをするのはどうだ」
ログマは少し上を見て考えた。
「状況によるが、まあ、向かってくる攻撃を止めるくらいは出来ると思う」
「それで充分だ」
「ふーん。なら了解」
ログマはため息をつき、隣の俺へ愚痴った。
「……そもそも遊撃担当ってなんだよ。やることの幅が広すぎる」
微笑みかけた。
「ログマは、状況把握と行動が早いし、攻防回復を一人で完結できるからね。遊撃を任せられるのはお前しかいないよ。頼りにしてるぞ、うちのエース」
「チッ、その呼び方やめろ。カルミアが勝手に言っただけだっての。雑に持ち上げられて気持ち悪ぃんだよ」
「ははは、ごめんごめん」
そして、少し戯れてみた。
「――でもさ。ログマは、俺達の指示に従うより、一人で自由にやった方が楽だろ?」
ログマにしては珍しく、素直に笑った。
「ははっ、なるほど。俺の事、多少は分かってきたんだな。確かに、お前なんかの指示を待ってたらイライラで死にそうだ」
「そこまで言わなくてもよくない?」
ナウトさんがもじもじと手を挙げた。
「あのう。竜への初撃、僕に任せてくれませんか」
注目が集まって慌てる様子はウィルルに少し似ていた。
「あっ、僕、大きな隙が必要になる代わりに、高いダメージが期待できる技を持っています。戦況が動き出す前がチャンスかもって……」
カルミアさんが軽い拍手で応えた。
「それは良いね、是非やろうよ。――あ、そうだ。俺、竜側のタゲだし、フォローするね。引きつけて隙を作るから、その間に全力で叩き込んじゃってよ」
ナウトさんが、ぱっと笑顔になった。
「いいんですか? 助かります。すみません」
レヴォリオがからかうように笑った。
「良かったな、ナウト。甘えさせてもらえて」
カルミアさんはここでも調停役だ。
「あっはは。レヴォリオさん、新人は伸び伸び育てた方がいい。可愛がってやりましょうよ」
「伸び伸びね。はは、ルークからもその言葉を聞いたぞ。……仕方ないな。結果出せよ、ナウト。期待してるからな」
「あっはい! ありがとうございます。頑張ります!」
テレゼさんがウィルルへ声をかける。
「私、攻撃役だけど後衛だから、ウィルルさんが治癒に専念できるように頑張りますね」
「あっ、う。ありがとうございます」
ウィルルはおどおどした後、両手の拳をぴこぴこと振った。
「ヒーラーは私だけ、だもんね。皆で無事に帰るんだもん。――頑張る、頑張る!」
その会話に、ケインとヤーナさんも参加した。
「ルルちゃん、頼りにしてるよ! 私も今回は回復と防御に回りそうだから、サポートするね」
「あら。私も力を貸します。妨害系サポーターだけれど、防御回復も少しなら」
ウィルルは頬を赤らめて、目を輝かせた。
「わあ、すごいすごいー。皆さん優しいね。すごく嬉しい。ありがとうございます。安心します」
作戦が出来上がった時、俺達の目には希望と戦意が満ちていた。
レヴォリオと目を合わせて、力強く頷く。
「きっと勝てるよ」
「きっとってなんだ。絶対勝つんだよ」
「はは、そうだよね。――絶対に勝とう」
同時更新の次話が「出撃メンバー情報」となっております。ちょっとしたステータス画面のようなものです。
LvやHPなどの概念はありませんが、各々の戦士としての特徴と状態がイメージできるようにしたつもりです。
スパークルメンバーの名前とロールの把握と同時に、イルネスカドルメンバーのスペックの再確認にお役立て頂ければ幸いです。
この情報は読み飛ばしても影響はないようにしておりますので、お気軽にご覧下さいませ。




