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イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第3部 負った傷と負わせる傷

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10章52話 遺跡の探索と招かれざる客




 数十分歩き、眼前に迫った防壁の外、高台の下から、ニーモ遺跡を見上げる。


 荘重そうじゅうたる雰囲気だった。俺の十倍はあるであろう石柱が立ち並び、精巧な装飾が各所に見られる。柱の並ぶ範囲を見る限り、面積も相当なものだ。



 正面の広い階段を上がった先、観光用案内板のある門の前に立つ。柱の立ち並ぶ外枠は一階分くらい高くなっていたため、ある程度の範囲を視界に収めることができた。


 十字の太い通路の周りに広がる多くの部屋。天井が崩れ、ここからでも見通せる部分が多い。遺跡の中心に位置する大きなものと、その左にある一回り小さなもの、二つの構造物は比較的綺麗に残っているようだ。


 ……そして、この遺跡全体が、モンスターの巣特有の不浄な重苦しい雰囲気に包まれている。



 レイジさんから貰った遺跡の平面図を見る。


「今日はここから十字路までの道のりを片付けよう」


 ウィルルとケインを囲み、最後尾をログマに任せる形の陣形で進む。頭上や壁の穴など気を払う場所は多く、集中力を消耗した。


 背後から風の唸りが聞こえて目をやると、ブリーズボイドが三体。空中に不自然に揺らめく、頭蓋ずがいほどの大きさの黒い玉。その周りを薄い緑の光が回っている。風属性を持ち、物理攻撃が効かない奴だ。


「ログマ、頼む!」


「もうやってる」


 ログマの持った手斧ちょうなが黄金に輝いていた。ヒュンヒュンと軽く振ると足元から黄金の光球が六つ持ち上がり、敵を矢のごとく貫いた。


 ボイド達は何も出来ないまま黒い塵となり霧散する。飛び出て転がった核を袋に回収する彼を見て、思わず呟いた。


「瞬殺だな。やっぱり凄いよお前」


「今更か?」


「いや、改めて」


 カルミアさんが最前列で笑った。


「一緒に仕事して分かってきたと思うけど、ログマは霊力の量も強さも半端じゃないよ。攻撃霊術検定は一級、防御と回復は二級。剣技もシルバー級だし、うちのエースはログマだろうね」


「……言わなくていいんだよ、おっさん」


「ログマの代わりに教えてあげたのー。共有してあげてよ」


 驚いて、不服そうなログマを見た。


「なんだよ、隠すなよ。お前、前衛もできるじゃないか。俺の事を守ってくれてもいいぞ」


 俺の冗談をログマは舌打ちで片付けた。


「調子に乗るな。泥臭い前衛は御免だ。お前は黙ってボロボロになってりゃいいんだよ」


「あーはいはい……」


 苦笑いして前へ向き直った。彼との距離感は、まだイマイチ掴めない。半年弱経つのにな。



 通路の左右に位置する小部屋を含め、討伐しながら進む。数は多かったが、強さは大したことがない。どのモンスターも防御面が弱く、攻撃面の強い俺達は、怪我をする前に勝負を決めることができた。



 やがて十字路へ辿り着いた。通路の交差するここは、丸い形に開けている。


 正面は大きな構造物へと続く太い道。左手の通路は途中で折れ曲がり、奥の小さな構造物へ繋がっている。そして右手の道はカーブして奥へ向かっていた。


 見える範囲のモンスターを討伐した後、大きな瓦礫の陰に姿を隠す。


 腕輪に手を添えて集中したケインが、しばらくして目を開けて額の汗を拭った。


「――二つの建物は中小モンスターの巣窟。右手の奥の広場に竜がいると思う。あとの反応はバラバラだけど、多いね」


「そうか……竜だけじゃなく、周りを片付けるにも時間がかかりそうだな。探知ありがとう」


 言いながら、懐中時計を見る。


「遺跡内で日が暮れるのは避けたい。帰還しよう。明日からの動きはレヴォリオと相談しておくよ」


 俺達は細々とした傷と疲労感をウィルルに癒して貰いながら、遺跡を出た。



 大きな階段を下り石畳に降り立つ。この石畳は市街地の太い一本道と繋がっていて、道に迷わなくて済む。



 市街地の少し手前の大きめの樹に、腕を組むレヴォリオがもたれていた。



 俺達が露骨に嫌な顔をしたんだろう、あいつは見かけ上爽やかに笑った。


「アハハ、そんな顔するなよ。協力関係なんだろ」


 苛立ちを抑え、無害な苦笑をして見せた。


「何の用? 業務連絡なら後でするよ」


 レヴォリオは真っ直ぐ俺を見つめた。この曇りなき自負が羨ましいと言うか、しゃくさわると言うか。


「ルーク、お前に用がある。他の奴らは席を外せ」



 戸惑う間もなく、後列のログマに左肩を叩かれて追い越される。


「だろうと思った。ごゆっくり」


「え、いや、置いてくなよ!」


 ウィルルはもう後に続いていた。


「ルーク、ごめんね。私も、帰る……」


 ケインがそれを追う。


「ルルちゃん、昼食後から顔色が悪いから、同室の私が付き添いたいの。ごめん、任せた」


 最後に残ったカルミアさんも、手をひらひらさせて笑顔で去る。


「リーダー同士の交流って事にして貰おうかな。じゃね、ルーク。晩酌でもして待ってるよ」



 レヴォリオは笑った。


「随分頼りにされてるみたいだな! ま、ゆっくりお話でもしようぜ」


 帰路につく仲間達を、小さく手を振って見送りながら、大きなため息をついた。



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