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イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第2部 不器用で温かい仲間達

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5章25話 皆を知りたい



 ……何を聞いたものか。一つと言われると難しい。それに、あまり突っ込んだ質問をして地雷を踏むのも怖い。厳選しなくては。



 ひとまずは、隣のケインから。


 彼女はこの会社の中でも多芸で仕事が早い。その理由を知りたかった。


「社歴三年って聞いたけど、前職を聞いていい? 随分、仕事ができる人だなと思って」


 彼女は頬に手を当て、少し躊躇った後に言った。


「全然仕事できないと思ってるけど。――帝国防衛統括機関に、四年いたよ」


「ええ! 凄いな」



 カルミアさんが居た帝国防衛戦士団を擁する、バヤト帝国の武力を束ねる国防機関だ。


 防衛統括は、戦士団以上に入職が難しい。武技の他に、精霊術の技術や教養の筆記試験、その他様々なハードルを超えなくてはならない。言うまでもなく傑物けつぶつだ。


「何の仕事をしていたの?」


「色々。事務も、公共事業も、統括機関本部の清掃とかも。勿論戦闘がメインだけど、歴が浅い私には簡単な仕事しか来ないし、一緒に動く人数にも余裕があったから楽だったなあ」


 社内外の広い業務を難なくこなしているのも頷ける。


 ――発病したからここに移ったんだろうが、その経緯はいつか聞けたらいいな。



 礼を言って、その隣のウィルルに尋ねる。


「ウィルルの特技が知りたいな。回復と防御の術だけじゃないんだろう?」


 彼女は、苦手な事をして凹んでいることが多い。得意な事を多めに任せていきたいと思っている。



 ウィルルは、照れくさそうにフードを引っ張りながらも嬉しそうに話した。


「絵を描くのが好きなの。あと、ピアノもできるよ。後はね、裁縫と、植物の勉強と、計算と――あとは、やっぱり精霊術かなあ」


「おお、沢山だ。ウィルルは色んな事を頑張ってきたんだね」


「えへへ……。答えが決まってる勉強と、自由にしていい芸術はね、好き。ヒーラーも、治す役割って決まってるでしょ。しかも、勉強した分だけ、皆を助けられる。だからとっても好き」


 なるほど。ウィルルは、答えが曖昧な事が苦手なのだ。料理が不得手だと言っていたのもそれだろう。臨機応変な対応が必要な場面は、フォローすべきだな。


 ヒーラーというロールにやりがいを感じているのも、聞けてよかった。確かにヒーラーは、怪我の種類や治せる範囲など、医学に近い知識があればあるほど本領を発揮できる。



 次は、その隣のカルミアさん。彼とは稽古の合間に度々語り合っているから、まだ聞いていないことを聞いてみたい。この質問なら、会社の設立に関しても少し知れるだろうか?


「カルミアさんって社歴最長だよな。もしかしてスタートメンバー?」


「おお、そうだよ。レイジとダンカムの二人と一緒にスタートしたからねえ。――まあ、他にも何人もいたんだけど」


 五年あれば、辞める人もいるよな。最初は何人だったか気になりはするけど、今はカルミアさんへの質問だ。スルーしよう。


「そっか。何か入社のきっかけがあったの?」


「防衛戦士団時代のツテでレイジを紹介されて、俺みたいな病気持ちの戦士を探してるって言うからさ。変だよねー。面白くなって入っちゃった」


 そういう経緯か。入社までの間に何か紆余曲折がありそうだと思っていたが、良縁に恵まれたと言う話なら納得出来る。



 次はその向かいのダンカムさん。


「ダンカムさんって、凄く強そうな体格をしてますよね。何か武技の心得はあります?」


 ふふんと彼は腕を組んだ。


「歳を取ってあんまり自慢できなくなってきたけど、剣技と格闘術はゴールド、槍術はシルバーを持っているぞ」


 目を丸くした。そんなに色々な武技を極められる人はなかなかいない。ゴールド級は地方大会を優勝しないと貰えない称号なのに、二つだと?


「すっごいですね……今度稽古して下さいよ!」


「おお! 嬉しいね、是非やろう!」


 ダンカムさんの男気と不器用な優しさが、武技にどう反映されるのか楽しみだ。カルミアさんとの試合も見てみたいな。



 その隣のログマ。彼は分からない事ばかりで、何を聞いたらいいやら。


「――ログマの瞳って紫色だろ。初めて見たよ。どこの出身なんだ?」


「却下」


「え?」


「別の質問にしろ」


 他にもっと優しい断り方があるだろ……こういう所がこいつの難しいところだ。


「えーっと。じゃあ、前職は教えてくれるか?」


 ログマは黙り込んだが、今度は却下されなかった。やがて鼻で笑い、口を開いた。


「三社クビになったから覚えてねえな」


「ええ? お前ほどの実力者が?」


 全属性、攻防回復を満遍なく使える霊術士なんて滅多にいないぞ。


 彼は目を逸らしてへらりと笑った。


「少しイタズラしてやっただけなんだが。まあ、俺もガキだったな、加減が分かってなかった」


 ……今も分かってないと思う。俺を燃やしやがったの、忘れてないからな……。


 まあ、過ぎたことだ。これからは友好的にいきたい。


「この会社は四年続けてるんだろ。今後とも居てくれよな」


「お前より先には辞めねえよ」


 顔を顰めてため息をついた。なんでこんなに対抗されているのか未だに分からない。



 最後はレイジさん。素朴な疑問を投げてみる。


「レイジさんって凄く仕事できるでしょう。逆に、苦手な事ってあります?」


 彼は斜め上を見て一瞬考えた後、二本指を立てた。


「まず、相談を聞くのが苦手だ。結論を急いで怒らせる節がある」


「そうなんですか。結論から伝えて下さるのが助かる場面も多いですけどね」


「はは、俺もそう思ってるから直らん。――もう一つは、蜘蛛」


「蜘蛛?」


「お前らが掃除をサボって蜘蛛の巣なんか作らせやがったら分かってんな。減給だぞ」


 カルミアさんが笑いながら「横暴だー!」と茶化した。



 改めて皆を見回す。


「皆の事、色々知れました。丁寧に答えてくれてありがとう」


 ダンカムさんがにやりと笑った。


「そうなれば、次は僕達の番だよな?」


 嫌な流れが来た。


「うぅ……お手柔らかに、お願いしますよ」


 酒が回ってきたケインが元気よく手を挙げた。


「はーい! ルークの第一印象発表会!」


 うわあ、最悪だ。聞きたくない。




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