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イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第5部 雪の下で芽吹けるか

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25章187話 表彰と会見、ネタとしての俺達

25章 ウィンターブルー



 彩度の下がった情景を眺めながら、頬を打つ木枯らしの心地良さに目を細める。


 冬の空気は好きだ。しかし、冬場の厚着で首や肩の凝りが酷くなるのは悩ましい。今日何度目か、肩甲骨を軽く回した。



 珍しく、会社の本部チームメンバーと管理職が七人揃って河沿いの帰り道を歩いている。服装は全員スーツ、これもまた珍しいことだ。



 普段からスーツのレイジさんだが、今日のは特に高級感がある。彼はずっと高揚したままだ。


「うちもデカくなったなぁ……。防衛統括の表彰を受けて、報道機関に囲まれるなんてこと、夢にすら思ってなかったよ……なぁ?」


 絡まれたダンカムさんは微妙な顔。彼のスーツは少し小さいのか、発達した筋肉と最近気にしているお腹のお肉でぴっちりして見える。


「名誉な事だと思うよ。でも僕はちょっと疲れた」

「武技の大会で散々表彰されて慣れてるんじゃないのか?」

「あれは賞状を受け取って終わり。今回の何が気になるって会見の方だよ……。気疲れしちゃった。良い質問ばかりじゃないしさ」


 ケインが同調した。彼女は淡いグレーのスーツ姿が物凄く似合ってる。普段からたまに着て欲しい。


「私も一緒! ほんと疲れた。て言うか上司二人とルルちゃんは良いとして、他の男共……!」


 他の男共の代表として睨まれたのは、彼女の隣のカルミアさん。彼は首を傾げてにこにこ笑う。洒落たスーツと拘りを感じる革靴を着こなす彼は渋くてカッコいい。


「嘘はついてないもん」

「面白がって適当に喋ってたでしょ!」


 どちらも間違ってない。元々(ちまた)で大袈裟に噂されていたカルミアさんは多くの質問を受けたが、大袈裟な部分も否定せず、意味深に事実を答えるという立ち回りをした。報道機関からすれば自由度が高く面白い素材だ、どう書かれるやら……。


 だが彼は、自分以外については誤解のないように答えていた。ケインもそれを分かった上で、彼を案じるがゆえの苦言を呈しているのだ。


 そしてカルミアさんは、こういう事もちゃんと頭に入れている。


「――それにこの報道の目的は『反社を退しりぞけるような名声と注目』を得ることでしょう? 少しくらいユニークな話はあった方がいいよ」


 会見中は、一貫して至極まともな回答を続けたケイン。大きなため息をついた。


「分かるけど……『精神疾患を持つ戦士達』て時点で好奇の注目は充分だったでしょ! あんなに報道機関が集まったの、防衛統括にいた頃も見たことないし!」


「はは! 俺が防衛戦士団にいた頃も見たことないなー」


「もう……!」


 ケインの袖を掴んで離さないウィルルがぽつりと呟く。生まれて初めての紺のスーツに逆に着られている雰囲気が何とも愛らしい。


「……私は変なこと言ってなかった……?」

「全然! むしろ一番まともだったかも」

「そ、かな……」


 確かに。『助けてくれた優しい皆のことが大好きです』と話す彼女の真っ赤な顔は報道関係者の心を打ったようで、怒涛の写真撮影の音が印象的だ。


 未だにもじもじと縮こまったウィルルを見ていると不憫だが、参加を決めたのは彼女自身だ。皆の仲間として認められたいと言っていた。


 微笑ましい気持ちに浸っていたら、後ろから肩をどつかれた。見るまでもなくログマだ。スーツ姿が凄く決まっているが、どうにも反社っぽ……なんでもない。


「おいルーク、問題はお前だろ。なんだあのクソつまんねえ応対。今回の報道は目立たなきゃ意味ねえんだよ」


「つまんねえって……俺は真面目に……」


「真面目枠は他で足りてる。ルークが真面目に答えても面白くねえに決まってんだろうが」


 割と傷つくな。静かに凹んでいると、カルミアさんがフォローを入れてくれた。


「過剰にやばい集団だと思わせちゃうと、味方を減らして敵を増やすよ。リーダーはまともな受け答えしとかなきゃ。あれがルークの役割。……ログマがヤバ過ぎたから良いバランスだよ」


「あ? 俺もカルミアと同じだぞ。嘘はつかず、俺達に手を出すなって思い知らせた」


「一緒にされたくないよ……。ログマのあれは悪目立ちって言うんだよ……」


 ログマが『俺達の邪魔をしたクソバカ犯罪者を根絶やしにしてやれて最高の気分です』と言い放ち中指を立てた時の皆の一体感を思い出すと口角が上がってしまう。


 笑っていたらケインが肩越しに一瞥いちべつしてきた。


「言っとくけど、ルークもやばかったからね」


「え、そんなわけ。どこが?」


「舞台上で笑っていたのは何故かって聞かれた時、思い切り挙動不審になって『調子が良くてェ、嬉しかったんですゥ……』て変な苦笑したの、その前後がマトモだっただけに一番不気味だった」


「そんな……!」


 ログマが吹いた。


「じゃあ良いか」

「良くねえよ!」


 不本意だったけど、皆が楽しそうに笑ったから良い事にした。我ながら単純だとは思う。



 この日の写真と話した内容は、デカデカと詳細に次の日の報道紙に載った。帝都北区、帝都全域、帝国内全域の報道紙。それぞれ取り上げ方は違ったものの、どれも一様に好意的ではあった。ただ、社会的弱者の下克上と支え合いを称え、感動や同情を売り物にしていたように思う。


 せっかくなので、一通り買って丁寧に保管した。俺だけがカッコよく写った以前の報道紙よりも、七人で並んで写っている今回の報道紙の方が余程嬉しかった。写真機は高級だし、わざわざ写真屋を呼んで撮る事もないから、仲間達の写真が手に入る機会はなかったのだ。



 勿論、広く衆目に曝されるのは良い事ばかりではない。一部のゴシップに特化した通俗的な報道機関なんかは、俺達の功績にかこつけて精神疾患や精神障害をセンセーショナルに取り上げた。


 当事者にとってはあまりにもシビアな内容だと感じた。少し目を通しただけで俺は買わなかったが、売れ行きはかんばしいように見えた。国じゅうの精神病に苦しむ人達が傷付くきっかけを作ってしまったように感じ、申し訳ない気持ちになった。




 ――俺の家族は、俺が仲間達と共に称えられ、記事となって国じゅうに広まったことに気付いただろうか。どう思っただろうか。



 他の皆の家族もだ。ケインを追い出した両親と兄姉。カルミアさんが遠ざけた息子と彼を養う義父母。ログマを置き去りにした母親と愛した孤児院。ウィルルを売った父親。――彼らはここで頑張る俺達に、心を馳せるのだろうか……。



 俺達を苦しめた大騒動は、こうしてようやく、取り敢えずの区切りを迎えたのだった。





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