表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第4部 背負った重みを武器にして

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/245

24章185話 動き出す



 前進しているかも、と思った矢先の、重症を突き付けるような提案だと思った。咄嗟に拒否しようとした。


 ――が、止めて少し考え、言葉を変えた。


「理由を説明して頂けませんか」



 先生は少し嬉しそうに目を細め、頷いた。


「度々言ってると思うけれど、薬で体調を安定させる事をまず目指したいんだ。しかし、地元の医師も僕も、君から楽になったという実感を一度も聞けていない」


 確かに……。良くても前よりはマシ程度だ。俺の頷きを確認し、先生は続ける。


「とはいえ、試行錯誤の末に今の薬に落ち着いてるわけだし、話を聞く限り効いてはいるようだ。だから薬の効能や性質は変えずに、効果だけ少し強めたい。それでベースを調整した後、足りなければ、気力を支える薬と眠りを深くする薬を最小量から試すって計画」


 拍子抜けするくらいに納得してしまった。聞いてみてよかった。


「ありがとうございます。……俺も、試してみたいかも。それでお願いします」



 先生は、いつもより柔らかく、いつも通りの締めの雰囲気を出し始めた。


「分かりました。注意深く様子を見ていこうね。良い流れは見られるけど、張り切りすぎちゃダメだよ。一応次の診察は一週間後にしましょう。では――」


「あ……もう少しだけ、いいですか」


「おっ。なんでしょう」


 迷惑かな、と一瞬思ったが、先生はゆったりとした態度で聞く姿勢を示してくれた。たまにはいいかと甘えることにした。



「以前から先生は、自分と病気の理解を深めようと仰ってましたよね」


「そうだねえ」


「この一ヶ月、会社がトラブってて。自分の中でも、人間関係でも、色々と悩んだんですけど……それがヒントになって、先生の助言を実践する形を考えることが出来たんです。その話を、聞いて頂けませんか?」


「ほう。ぜひ」


「――ありがとうございます」



 不器用で頭の鈍い俺が、皆の力を借りて、ようやく掴んだ……ような気がする手応え。どうか役に立つものでありますように。不安と期待を胸に話し出す。


「俺は発病して以来、自分を責めてばかりでした。悩んで反省するのは良いとして、その後どうすべきか分からず停滞してました。……病気療養も、人としての成長もです」


「自責や脳の働きの低下も症状の一つではあるけどねえ。……それで?」


「でも今回、他人の為なら頑張れるっていう自分の特性が、プラスに働きました。色んな問題があって、どう対処すべきか何も分からなかったけど、会社の恩人達が困ってる中で停滞してられなくて、とにかく行動したんです」


「ふむ」


「成功も失敗もありましたけど、物事が動いたと感じました。結果に関わらず、精一杯立ち向かったと思える事が自信になりました。それが次に繋がったこともありました」


 それで……と頭を搔いて結論に戻る。長くならないようにしなきゃ。


「俺は闘病を始めて……もう三年か。回復の手応えをほぼ感じないままです。これ以上どうすべきか分からなくて、停滞してる。――今回の経験が参考になる気がしたんです。病気についても何か新しい行動を起こしてみたい。それを先生に相談できたらと」


「うんうん。何か考えている事はあるの?」



 先生はいつの間にかカルテにメモを取り始めていた。症状の相談よりは自分語りに近い気持ちだったので、そこまでされると少し恥ずかしい。


「え、えっと……まず一つは、自分の理解のために、カウンセリングを受けてみたいと思っています。会社が、福祉総合カウンセラー? とか言う凄い資格を持つヘルパーさんと契約してくれているので」


 レイジさんに以前提案された事だが、悩んだきり放ったらかしていた。この勢いで受けてみようと思ったのだ。


 先生の反応は芳しかった。


「ああ、それは賛成だねえ。自分について考えて素直に話す時間を設ける事は、君にとって良いと思うなあ」


 気分が高揚した。専門家の肯定を貰い、前向きな方策が一つ整ったと感じた。続きの言葉がつい少し早口になる。


「ほ、ほんとですか。――それでもう一つは、病気の理解の方でして。病気関連の本を買って勉強しようかと思ってるんです。客観的に症状を理解出来るかな、なんて……」


 またも先生は大賛成してくれた。


「いいね。僕は応援したいなあ。ルークさんは特に、本来は多角的に物を見れる人だと思うから、知識はあるだけ良いでしょうねえ」


「ほんとですかっ……!」


 つい両の拳を握った。俺がはしゃいでもウィルルのように可愛くはならないので自重した。


 先生は淡々と言う。


「ただ、世の中には色々な意見や主張、学説や事例がある。特に心に関する分野は専門家の間でも意見が別れたりするものでね。――僕から、何冊か紹介させて貰ってもいいかな?」


 願ってもない提案だった。書店を物色した事はあるが、怪しいタイトルの本や思想の強い本が多すぎるのだ。


「是非! 助かります」




 普段と比較すると結構長い時間を貰ったが、診察料はいつもと同じだった。……病院のシステムには詳しくないが、診察がいつも五分程度でサクッと終わる理由の一端を見た気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ