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イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第4部 背負った重みを武器にして

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24章180話 俺の『正義』の後始末




 三人でスラムを抜け、会社が面する河沿いのまっすぐな通りへ。いつも人通りの多い道だが、今は日付が変わる手前の深夜。人影は少なく、日頃は気に留めないような自然音を聴くことができた。



 雰囲気は違っても、見慣れた帰路だ。気が緩んだところで、腰元のポーチを探る。さっき貰った物を取り出し眺めていると、カルミアさんが気付いて微笑んだ。


「良かったね。友達できて」

「まだ友達になれるか分からないよ」

「相変わらずだなぁ。でも嬉しいでしょ?」

「……まあね」



 別れ際、ガノンさんが俺を名指しで呼び止めて、二枚目になる名刺をくれた。前回受け取ったのとは違って、裏に手書きで連絡先が書いてあった。


『前回会った時、ルークさんとは気が合いそうな気がしたんよ。今日それが確信に変わった。へへ! 良かったら今度、仕事抜きで話そうよ。――じゃ、また!』


 彼の人懐っこい笑顔を思い出すと、俺も顔が緩む。仲良くなれるといいな。



 カルミアさんが不思議そうに言う。


「しっかし、随分慣れた雰囲気で話をまとめたね。ルークは口下手なんじゃなかったの?」


「あー……交渉や説得みたいな、自分の意見を通す方向は全然ダメだよ。でも譲歩とか謝罪なら得意かも」


「なるほどね! ガノンさんも場を収めたがってたから上手く噛み合ったんだなぁ」


 ガノンさんの悪戦苦闘を思い出し、ちょっと先を歩く彼に声をかける。


「そういやログマって、ジャンネさん判定で悪人じゃないらしいね。予想外だった」


 横でカルミアさんが軽く吹いた。ログマは振り向かずに舌打ちする。


「俺はどう見ても善人だろうが」

「……たまに凄く面白いこと言うんだよなぁ」

「あ?」


ウケ狙いかどうか分からない絶妙なラインを突かないで欲しい。



 俺と同じような顔で笑いを噛み殺したカルミアさんが言う。


「ジャンネさん強かったねぇ! 最後には、私の正義でこの組織を正してみせる! なんて言ってさ。あの人は多分病まないよ、良い事だ」


 複雑な思いが湧き上がって苦笑した。


「病まないだろうなぁ。正義感も実力もある人だから、いつか本当に改革するかもよ。凄いよなぁ。……正直合わないけど」


「へえ、ルークが自分からそんな事言うなんて珍しいね。最後もジャンネさんの事フォローしてたのに?」


「いや、助かったのは事実だし、他人事と思えなくてお節介しただけ。俺は過去に独走して、貴族を敵に回してるからな」


「そういう感じか……。ここだけの話、どこが合わないの?」


「自分を正義とか言えちゃう感性が無理すぎ」


「あっ、思ったよりちゃんと嫌いだね……」



 ――同族嫌悪も入っているのかも知れない。過去の俺が兵団のためだと振り翳し、身を滅ぼすに至る元凶となったのも、お粗末な『正義』だったと言える気がしているから。



 その後始末をしてくれた彼に、礼を言わなくてはならない。


「ログマ」


「なんだ」


「……俺と貴族の因縁で、迷惑かけたな。助けてくれて本当にありがとう。すげー嬉しかった」


 彼はやはり振り向かずに、恨みがましく返してきた。


「その割には随分と俺の事を下げて話したな」


「わ、悪かったよ……! あっちの低姿勢に合わせるべき場面だと思ったんだ……」


 少しの沈黙の後、ログマはため息をついた。


「――利用出来そうな面白いもんが偶然手に入って、思いつきでやってみただけだ。今後も迷惑かけられたらたまったもんじゃねえからな。……それにまだ助かってない。ロデュセン家が味方に付くまでは油断すんな」


 口元が緩む。心に留めていなければ思いつかないし、助力しようと思わなければやってみないだろうに。


「今後がどうでも、俺の心が救われた事には変わりないよ。この件に関しては本当に敵ばかりで、手を貸してくれる味方なんて想像もできなかったから……」


 苦しくなり目を伏せる。その心を知ってか知らずか、隣のカルミアさんがおどけた。


「えー? 俺も味方なんだけど?」

「あっ、そりゃ、味方だと思ってるよ!」


 肩を優しくぽんぽんと叩かれた。


「独走した、敵に回したって言うのは簡単だけど、色々あったんだろ。いつか聞かせてよね」


 目頭が熱くなった。味方に恵まれた今の俺は、なんて幸せ者なんだろうな。


「うん……。話したい。聞いて欲しい。……もう少しだけ、心の準備をさせてくれ」


「はいはい、いつでもどうぞ」


 

 ……でも、与えられる善意に喜んでばかり居られない。俺だって味方したいんだ。



「なあ、カルミアさん……」

「何ー?」


 胸元が苦しくてたまらない。だが彼が抱えてくれたものに比べれば些末なものだ。震える唇をこじ開けた。



「――マティレートにかけた呪いって、なんだったんだ? 教えてくれよ……」



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