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イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第4部 背負った重みを武器にして

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19章126話 有益情報は安くない



 向き合って座ったスクラーロさんは約束通り情報をくれた。ヒュドラーの人身取引活動について知っていることを教えてくれ、とだけ伝えたが、それなら結構具体的な情報が出せるぞ! と笑顔を貰った。




 ヒュドラーは国内に広く拠点を持つ、歴史の長い反社組織。手広く色々な犯罪に加担している。


 一言で言えば、横に広いドライな組織である。浅い協力関係の中で、豊富な経験や情報、財力や戦力の共有をしつつ、チーム毎に徹底した自己責任で動いているのが大きな特徴。


 協力体制を組まれれば怖いが、身内を切り捨てるのも異様に早い。また、切り捨てられた側も仲間については口を割らない。組織の全容について把握している組員は極小数とも言われる。その特性が長らく防衛統括を困らせているらしい。


 ここでスクラーロさんはおどけた。 

「名前通り、何度斬り落としても再生する沢山の首を持つという、伝説の毒蛇ヒュドラーのようだ! と言われてるぜ」


 思わずふっと吹き出し、肩をすくめた。

「なんか鼻につきますね」



 人身取引に手を出し始めたのは五年ほど前。界隈では新参者ながら、十人前後のチームを組み、帝都を拠点に好き勝手している。


 ボスの青年は慎重な性格で、組員が表立って動くことを嫌うため、下請け業者や臨時の傭兵を『裏』にて広く雇っている。関係性の深さはまちまちだが、それらの協力者を含めると、それなりの規模になっていることが推察される。どこの誰が関係者でもおかしくない状況ゆえ、敵に回すのはお勧めしないと言われた。



 俺はこの辺の話で冷や汗をかき始めたが、スクラーロさんは武器になりそうな情報もくれた。


 北区スラムは、ヒュドラーの人身取引チームの本拠地と言われている。だが、外部との接触は仮設アジトを都度設けて行っている上に、下請けを頼る部分も多いため、詳しいことは分からない。


 しかし、この仮設アジトで行われる接触には、スパイの潜入や下請けの不正を警戒するために、ヒュドラーの組員が必ず一人は配備されているそうだ。


 ――仮設アジトにさえ辿り着けば、尻尾を掴める可能性があるということだ。



 また、追加で尋ねた、傭兵三人から聞いた人身取引オークションについても教えてくれた。


 いつどこで行われているか分からないものの、複数の人身取引組織が集まる場だそうだ。市場の競りを想像すれば分かりやすいと言われて、嫌な気持ちになった。国内外から客が集まる大事なイベントだから、外注大好きなヒュドラーも組員のみで参加しているらしい。


 ――難易度は高いが、このオークション会場を掴めれば確実にヒュドラーと接触できる。犯罪イベントの摘発により、ジャンネさん達も万々歳だ。




 かなり有益な情報をくれた彼に、深く頭を下げた。


「本当に助かった。ありがとうございます」


「いいってことよ、約束だからな。お支払いは十万ネイでどうだ?」


「……うん?」


 下げた頭を上げ、ぽかんとしたら、笑われた。


「情報を渡すとは言ったが無料でとは言ってないぞ!」


「嘘だろ……ズルい……!」


したたかだとか、賢いとか言ってくれ。さあ、渡せる情報は全部渡したんだし、さっさと支払いな。手持ちの金がないなら、酒場にツケて貰え。短期返済できる見込みがあるなら、誓約書を書くだけで無利子の借金ができるぞ」



 十万は流石に……! いや、潤ってるし、仲間のためなら全然出せるけど、軽く出せる金額ではない。施設利用料二ヶ月分だぞ? それに、すぐ返すと言えど、酒場に十万の借金をして帰るのも普通に嫌だ。



 苦し紛れに提案した。


「……推薦状書くから、勘弁してくれないですか」


「えっ?」


「俺、他人を具体的に褒める能力には自信があるんで……丁寧に書くんで……ダメですか……?」



 ダメ元だったが、彼の黒い瞳は輝き泳いだ。


「マジかよ! 十万ネイどころじゃない価値だぜ? せっかく勝ったのに、お前、プライドないのか? よっぽど酔ってるのか? 大丈夫か?」


「あ、貴方こそ。俺のプライドなんかで十万ネイ分の情報を渡しちゃって本当にいいんですか?」



 お互い予想外の展開におろおろしている。


「ほ、本当に何も知らないみたいだから、ついでに教えるぞ? 依頼所でのランクと、推薦状について」


「あっ、是非お願いします……」


 メモとペンを改めて構えると、スクラーロさんに哀れみの目で見られた。




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