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イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第4部 背負った重みを武器にして

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18章118話 破天荒?



 ジャンネさんは泣きそうな顔で狼狽えた。


 しかし、ほどなくして、いかにも戦士といったキッとした目付きに変わり、乱暴に右手を差し出した。


 俺の顔には勝利の愛想笑いが浮かんだ。我ながら性格が悪いと思ったが、それこそ、結果が良ければなんでもいい。


「よろしくお願いします。貴女が味方でよかった。裏切らないで下さいね」


「それはこちらのセリフだ! 貴方は人畜無害そうな顔をして、油断ならない人だ。それでも貴方達に賭けるから、絶対に結果を出すぞ! 人身取引組織など蹴散らしてやる! 私は負けず嫌いなんだ!」


「あはは! 一緒に勝ちましょうね」


 彼女の華奢で硬い手を握った。傘の下から差し出された俺達の手は、雨に濡れながらも固く握り合っていた。




 取り調べは、男性二人によってやや高圧的に行われた。だが、無実で無知で無関係の俺からは何の有力情報も出てこよう筈がない。素直に答えるだけで、壮年男性の苛立ちと焦りがつのっていくのが分かった。その横の有角人の男性は議事録のようなものを書きながら退屈そうに同僚を見ていた。


 俺はそんな彼らを妙に冷静に見ることができていた。ジャンネさんの事前情報のおかげで腹をくくることが出来たのかもしれない。彼女には感謝だ。




 帰社すると、ウィルルとカルミアさん以外の全員が食堂に揃っていた。夕飯を準備しながら俺を待っていてくれたらしい。



 俺の報告は、その場の全員の驚きで迎えられた。


 自らの手柄に胸を張ろうという気持ちはダンカムさんにへし折られる。


「不器用で口下手なルークにそんな交渉が出来るとは思っていなかったよ、驚いたなあ!」


「ひっ、酷い! 確かに、レイジさんの助言のお陰だし、相手が素直だったのは幸運でしたけど……!」


「ガハハ、ごめんごめん! ――でもレイジ、これは大きいんじゃないかい?」


 レイジさんは満足気だった。


「うん。防衛団側の事情も分かったし、現場で動ける立場の協力者が得られた。やりやすくなるぞ」


 ケインも、ほっとしたような笑顔を向けてくれた。


「これからどうなっちゃうのかなって思ってたの。不安で仕方なかったよ。ようやく立ち向かえるって感じだね……ああ、よかった……」



 気を取り直して胸を張った。

「俺にしては頑張っただろ!」



 ログマはあまり喜ぶ様子を見せずに考え込んでいた。


「ルークが疑われているのは厄介だ。防衛団内部や貴族の事情なんて、予測も把握も出来ないしな。今は証拠がないから疑いで済んでるが、捕まえる口実を見つけられないようにしろよ」


 頷きながらも、疑問だった。


「……そうしたい。でも、更に疑われたり、逮捕の理由にされるような場面、あるかな? 思いつかないよ」


「そうだな……情報収集の時に、積極的にスラムに通ったり、悪人と一時的にでも手を組んだりはしない方がいいかもな」


ぎくっとした。疑問は確かめておくものだな。


「なるほどね。俺、ヒュドラーの情報を探しにスラム行く気満々だったよ……。気をつける。ありがとう、ログマ」


 やり取りを聞いていたレイジさんが唸った。


「俺とやり取りしてる北区支部副長はルークを警戒している側の派閥なんだろうな。あいつはどうせ今後も使えないだろうし、こっちの情報も迂闊うかつに出さないようにするか……アテが外れたなぁ」


 そしてレイジさんは俺を見ながら、心底面白そうに言った。


「まさかルークが地元の貴族を敵に回してたとはな。意外と破天荒な所もあるんだなぁ」



 目が白黒した。

「はてっ……?」


 俺は兵団でウッズに逆らった自分を、馬鹿正直だとか、無鉄砲だとか、色々な言葉で自責してきた。でも、破天荒と言われると、なんだか豪快で大胆で、自分の行動じゃないみたいだ。とは言いつつも、言われてみれば確かに破天荒かも知れない。


 可笑しくなって、笑った。あの記憶に関して一瞬でも笑えるなんて思わなくて、自分で自分に驚いた。


 今なら、少しだけ笑い飛ばせるかな?



「ふふっ――でしょ? だって凄くムカついたんですもん。あははは!」



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