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イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第4部 背負った重みを武器にして

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18章114話 冤罪なんて勘弁ですよ!



 ジャンネさんがクールな声に焦りを滲ませた。


『お、落ち着いてくれ。普通はこんなこと、呼び出し時には言わないんだ。貴方は無実だと思っているから、私が個人的に味方をしたくて言っているんだよ』


 それは分かる。警戒されるだけの情報をわざわざ伝える意味はないだろうから。それでも俺の動揺は収まらない。


「どっ……なっ……ええ? 俺、何かしましたっけ? むしろ、何も出来なかったって凹んでたくらいですが……」



 ジャンネさんは少し黙った後で言った。


『――これに関して、私はかなり思うところがあってね。更に個人的な提案なんだが、私一人で迎えに行くから、支部までの道中話さないか』




 固定連絡機を切った後すぐ作業室を出て、取締役室を乱暴に三回ノックした。怪訝けげんそうな返事が聞こえたので思い切り開け放ち、声を張る。


「レイジさん! 俺疑われてるらしいです! これから迎えが来て連行されます! どうしよう!」


 ゆったりと椅子に座ってコーヒーを飲んでいたレイジさんは、大きくむせた後笑い出した。


「ははは……! 何かと思ったら。お、お前……取り調べの時、よっぽど挙動不審だったんだろうな。見てただけなのにな……ふふ……くっははは!」


「笑いごとじゃないですよ! 打開策を下さい! 冤罪えんざいなんて勘弁ですよ!」


 レイジさんはなおも肩を震わせて笑いながら、取締役用の作業机の前にあるローテーブルを指差した。


「はっはは――まあ座れよ。焦ったって良いことは無い。北区支部からここまでだったら、迎えが来るまで三十分はあるだろ。何を言われたか教えろ」



 俺は適当にソファに腰掛けて、早口でジャンネさんとの短いやり取りを伝えた。



 レイジさんは軽い調子でうーん? とうなり、ニヤッと笑った。


「――ビジネスチャンスの匂いがするぞ」


「は? 真面目に考えて下さいよ」


「いやいや、これはマジな話だ」



 苛立ち混じりに見つめると、レイジさんは斜め上を見て考えながら話し出した。


「ジャンネさんとやらの口ぶりだと、防衛団内で意見が割れてるっぽいだろ」


「そうなんでしょうね」


「今、その対立のカギを握ってるのがルークなんだろう」


「えぇ? そんな突拍子もない……」


「もちろん仮説だし、理由も内容も分からん。だが、そうでもなきゃ、北区支部小隊長が直々に迎えに来て、容疑者のルークと密談したがるか?」


「それは……」


「俺の見立てでは、人身取引問題は防衛機関内で大きな影響力を持っている。この国の金と権力が密接に関わってるって事。そう思うと、昨日俺が対談した防衛団員が情報を出し渋ったのも納得がいくんだ。デリケートな話が多いんだろうってな」


「そうか……」


「そしてその重要な問題に、ルークが絡んでいると思われていると。疑いを晴らすという名目で存分に協力出来るわけだ。……貢献の暁には、手間賃くらいは要求する権利があるんじゃないか?」


 唖然とする俺に彼は続ける。


「元々俺達も黒幕を追うつもりだった。そこに防衛団のお墨付き……とまではいかなくても、後ろ盾と謝礼金がくっついてくるなら、こんな良い話はないぞ」



 苦笑した。希望的観測が過ぎないか?


「そんなに上手くいきますかね……ただ俺が振り回されて終わるオチですよどうせ」


 レイジさんは机に手をついて立ち上がる。


「そうならないための今だろ! いいか、ルークに肩入れしているジャンネさんをどう取り込むかで、戦況が変わり得るんだ。彼女が頼もしければ擦り寄れ。頼りなければ利用しろ。――これから十五分で俺の対人折衝(せっしょう)ノウハウを叩き込むから絶対失敗するなよ」


「無茶な……!」


「この俺に打開策を寄越せって言ったからには覚悟を決めろ」


「くそお……!」





 心配そうなダンカムさんとケイン、面白そうに笑うレイジさんとログマに見送られ、会社を出る。一応、護身のために剣は背負った。



 ジャンネさんは約束通り一人だった。飾り気のないシンプルな青い傘の陰から、美しい笑顔が覗く。


「待たせたね。行きましょう」



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