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イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第4部 背負った重みを武器にして

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18章112話 黒幕は毒蛇の名を冠する



 エスタがひとしきり笑った後、続けた。


「入社まではそんな感じ。――それで昨日の話に戻るんだけど。襲撃者達の黒幕は、お父さんからウィルルを買ったのと同じ組織みたい。……ウィルルは超高額商品になるから、もう一度捕まえに来たんだって。最近仕事で外に出るようになったから、チャンスだと思ったのかなあ」


 確かに、襲撃者が、赤字の回収だとか言ってたな。


 ケインが尋ねた。


「敵は分かったけど『人身売買組織』とかじゃ言いづらいし、ちょっと露骨だよね。エスタくん、奴らの組織名はないの?」


 エスタは頷く。


「僕も、今回の襲撃者が話してたのを聞いて初めて知ったところなんだ」


そして、その名を口にした。


「『ヒュドラー』って言うんだって。……昔ウィルルが絵本で読んだ、どっかの国の伝説の毒蛇と同じ名前」



 蛇と聞いて反射的に顔を顰めた。ログマが馬鹿にしたようにはんと笑う。


「そのどっかの国は知らんが、バヤトでは蛇は縁起がいいとされてるからな。趣味が良いね。毒持ちで縁起モノの蛇に手出ししようもんなら無事じゃ済まねえってか?」


 カルミアさんが苦笑する。


「はは……それ、冗談にならないかもよ。人の売り買いみたいなリスクの大きな犯罪ができるんだから、巨大な反社組織かもしれない。そんなのに本気で目をつけられたら、俺達は文字通り消えるよねえ」



 物騒なことを言う彼はレイジさんに目を向ける。


「で、事情と敵は分かったとして。どんな風に立ち向かうつもり? 防衛団と連携するって言ったけど、ツテはあるの?」


 レイジさんは頷いた。


「ウィルルの入社した二年半前から防衛統括への相談実績があるんだよ。あちらさんも人身売買組織を摘発したいらしくて、定期的に情報交換のために会ってる。今回その問題が再燃したとあれば、フォローはしてくれるはずだ」


 しかし、と続ける。


「ウィルル含めた会社の皆を守る分には信用していいだろうが、攻めに関してはあまり期待できないんだよな。そもそも腰が重い組織だし、人身取引の証拠なんて、おそらくそう簡単には出ないだろ? だから、俺達も同時並行で動く。まずは情報収集だな」




 ダンカムさんが戸惑いの声を上げる。


「情報収集って言ったって……。相手は反社だぞ。防衛戦士団が掴めないような情報を取るには、結構危険を冒す必要があると思うんだけど……」


 レイジさんはそれを肯定した。


「まあな。最終的には攻め入って現場を抑えるとか、グレーな取引で情報を得るとか、俺達に仕掛けてきた奴を現行犯で捕まえて話を聞く、ってあたりが想像つくな」


 伏し目がちになった俺達を見てレイジさんが笑う。


「まあ、そんな危険はもっと後の話。今やることはシンプルだ。襲撃に気をつけながら、取れそうな情報を集めるだけ。まず俺が防衛団と話してみるから、動き方はその後随時相談ってことで、心づもりだけしておいてくれ」



 皆が頷いた。この話の区切りに、手を挙げて付け加える。俺の数少ない仕事だ。


「俺からお願いがある。通院とか、やむを得ない外出の時は必ず武器を携帯してくれ。あと、できる限り俺に声をかけて。同行するから。単独行動を避けて欲しいんだ」


 ログマが軽口を叩く。


「護衛がないよりはマシか。頼りねえが、一応ルークの戦闘スタイルは遠近両用だからな」


「老眼鏡みたいな言い方すんな。ログマだって遠近両用のくせに」


「俺レベルは『万能』って言うんだ。一緒にするな雑魚」


「腹立つ……」



 レイジさんが席を立つ。


「よし、今話せる内容はこんなものだな。俺は早速防衛戦士団と連絡を取る。皆、それぞれ不安はあるだろうが、極力社外に出ずにいつも通り過ごしてくれ」



 緩く返事をしながら次々席を立つ一同。椅子と机を元の配置に戻す仲間達に、エスタが深く頭を下げ、大きな涙声を出した。


「ありがとう! ……本当にありがとう!」


 俺達は顔を見合わせて笑い、泣き出した彼を宥めた。



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