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イルネスウォリアーズ-異世界戦士の闘病生活-  作者: 清賀まひろ
第4部 背負った重みを武器にして

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16章98話 ルークの目標は……



 目を伏せた。


「正直、まだ見つけられそうにないな。皆の話は凄く参考になったけど……皆みたいな立派な夢を持てるような趣味も力も志も、今の俺には無いなと思っちゃった」



 カルミアさん自身の目標に言及しようと再挑戦して、結局やめた。開きかけた口を閉じたのと、カルミアさんがいたずらっぽく笑うのが同時だった。


 彼は青い顔で目を閉じながらも、楽しそうに話した。


「俺さぁ……一つ、思いついちゃったんだ。酔っ払いの戯言ざれごとだから、流してくれていいんだけどさ――」


 彼の人差し指がゆるりと俺を差す。


「武技の先生になる、なんていうのはどう?」



「えっ……」


 予想外だった。


「確かに戦闘は好きだし、俺が一番頑張ってきたことだけどさ。俺が先生は、ちょっとなぁ。自信ないし、できるイメージがないよ」



 人差し指が、彼自身に向く。

「俺を、霊槍士れいそうしに育ててくれた実績があるじゃないの」


 はっと彼を見た。薄く開いた優しい目。目を合わせても緊張感を感じない、柔らかい視線。


「ルークの教え方、俺は好きだったよ。俺の感覚や得手不得手をしっかり聞いて、やり方を考えてくれたから。槍は専門外でしょうにね。おかげで、風竜戦では随分活躍させて貰えた」



 事実、風竜戦で霊槍士としての技を効果的に用いる彼は頼もしかった。身内の贔屓目ひいきめではなく、スパークルのメンバーからも口々に賞賛されていた。


 それが俺のおかげだなんて言われたら、嬉しくなってしまうじゃないか。


「……そう言って貰えるのは光栄だけど」



 カルミアさんは更に俺を褒める。


「ルークは剣技プラチナ級保持者でしょう? 指導者として箔が付くよ。精霊術も一通り使えるし、霊剣士でもある。あ、格闘術もかじってたよね。それでいて、皆に慕われる誠実さもある。……なかなか、いい先生になれる気がしない?」


 ――これを言うのは躊躇ためらわれるが。


「……でも俺、病気持ちだし。……精神的に、その……。そんな奴に教わりたいなんて、誰も思わないでしょ」


 彼は何でもないような声で応じた。


「雇われる訳じゃなければ、わざわざ病人ですって名乗る必要はないでしょ。誰かに迷惑をかけたり、配慮させたりするわけじゃないんだしさ。ちょっと身体が弱いってくらいの説明だけでやっていけるよ」


「うーん……」


「それに、病気が知られても大丈夫。ルークには、偏見を跳ね除けられる高い実力と人柄の良さがあるよ」


「そ、それは買いかぶりすぎだよ」


「事実、最初酷い態度だったレヴォリオさんとは見事に打ち解けられたでしょ」


「まあ……あいつはまた特殊と言うか……」



 彼は少し身を捩り、俺に笑顔を向けた。 


「そう謙遜けんそんせずに、考えてごらんよ。ルークは、入社してからたった半年で、色んなことが出来てると思うよ。それは、病気も含め、今までの人生で積み重ねてきたものがあるからでしょ?」


「そう、かな……」


「そうだよ。ルークは、病気で全部ダメになったみたいに不貞腐れてることあるけどさ、闘病の経験だって糧になるんだからね?」


「えっ、ほんと?」


「うん。俺は病気になってから自分の調子の把握能力が上がったし、それに合わせた対応にも詳しくなったな。そのお陰で、病気になる前より戦いやすいかも」


「すげえ! 確かに、調子が悪い時の戦い方を知ってるって、安定して結果を出すためには大事だね……」


「そうそう。何があっても、大体何かの役には立つんだよ。ルークの人生にも色々あったと思うからさ、役に立つ経験や伸ばせる力、まだまだ眠ってるんじゃない?」


「それは……夢があるね」


「せっかくこの会社で現役の戦士をやれてるから、今後も実績を積んでいけるでしょ? その他に、コネやツテ、知識や技を増やしたりしてさぁ。先生でなくても、武技でずっと生きていける方法を考えて動いてみてもいいんじゃないかなぁ」


「カルミアさん……」


 彼のくれる肯定の言葉は、どうして意固地な俺の心に沁みてしまうのかな。俺なんかでも、何か大きなものを目指せるかもしれないだなんて、夢見たくなってしまうだろう?



 大好きな剣で、戦闘技術で生きていく。それは俺にとって最上の幸せだろう。少なくとも今はそう思う。でも、叶わないものと思っていた。


 戦士として稼働できる期間には、個人差はあれど限界がある。現役を退しりぞいた後は、所属組織の管理側に回る者が大半。個人稼業の傭兵は死ぬまで現役を掲げる者が多いが、実際にそれができるのはほんのひと握り。貯蓄や副業に頼って余生を過ごすことになる。


 商売道具とも言える心身が不安定となった俺は、尚更、この仕事にしがみついていることで精一杯だった。現役を退かされるその時を恐れてすらいる。


 でも、今カルミアさんが示してくれた指導者としての道は、足元に落としたままの俺の目線を未来に向けさせてくれる気がした。



 カルミアさんの息がまた少し荒くなった。


「だ、大丈夫? ほら、水――」


「う……大丈夫。ありがとう。……ごめんね、好き勝手言って。酔ったおじさんの与太話だ。……俺はルークの一番弟子だから、お節介したくなっちゃったんだ。目標、見つかるといいな。うっぷ――」


 がばっと立ち上がりトイレへ駆け込んでいくカルミアさんを見送り、再び目線を手元へ移した。



 ウエストポーチから手帳とペンを出し、テーブルの上のランプを頼りに開く。最新のページに書いてあるのは、問題だらけの俺の現状と、今後の足掻き方。


 ――そこから沢山の白紙をめくり、手帳の最後のページに、大きく書き殴った。



『武技を教えられる戦士になる』

『もっと鍛えて、実績を作る』

『もっと勉強して、技術を言語化する』

『闘病経験だって糧にしてやる』


『俺は剣で生きていきたい!』




次話以降しばらく1500字/1話となります。ご承知おき下さい。

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