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うちの同居人が可愛すぎる件について  作者: 駒野沙月


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3/3

あったかいコーヒーを飲む話

 凛さんはコーヒー党である。


 砂糖もミルクも入れないで、そのままブラックで飲むのがお好みらしい。なんでも中学の頃からそうやって飲んでいるのだとか。流石は凛さん、小さい頃から味覚が大人である。

 そして私も、どちらかと言えばコーヒー派だ。だから一週間ぶりの休日である今日も、私は二人分のコーヒーを淹れた。淹れたと言っても、喫茶店で出てくるような絶品のコーヒーなんて淹れられないから、普通のインスタントなんだけど。


 凛さんはいつものようにブラックで。私は砂糖とミルクをたっぷり入れて。

 さあ一息入れよう、としたところで凛さんのスマホが鳴る。


 スマホを見た凛さんはあからさまに嫌そうな顔をしていた。ちょっと見えた画面に表示されていた名前は、以前少し聞いたことのある凛さんの上司のものだ。


 「ごめん、ちょっと出てくるね」と席を外した凛さんは、10分ほどで戻ってきた。

 その顔は思っていたよりも平然としていたから、嫌な内容の電話ではなかったらしい。嫌そうな顔をしていたのは、多分反射的なものだったのだろう。


「おかえりなさい」

「うん。ごめん、待っててくれた?」

「ええ、まあ。コーヒー温め直します?」

「ううん、これくらいなら大丈夫。ありがとう」


 せっかくなら一緒に飲もうと思って待っていたけれど、若干不自然だったかもしれないな。

 そんな風に思いつつカップを渡せば、凛さんは両手で受け取ってくれた。カップが熱かったのか、すぐにテーブルに置いてしまっていたけれど。


 自分の分はちょっと冷めていたのでレンジへ入れることにして、出すのをすっかり忘れかけていたお茶菓子も持っていくことにする。

 その間、凛さんはもう大して湯気も立っていないコーヒーにふーふー息を吹いていた。わざわざ両手でカップを持っているのがあざとくて可愛い。


 自分でも分かるくらいにこにこしながらその姿を眺める私は、傍から見ると中々に気持ち悪かったかもしれない。


「……凛さん」

「なに?」


 とはいえ流石に、レンジの温めが終わっても尚冷まし続けているのは流石にツッコみたくなる。そのコーヒー、電話してる間に結構冷めたはずなんだけど。


 ……まだそんなにふーふーしないと駄目ですか、凛さん?


「まだ熱いです?」

「ちょっとね」


 さっき自分の分を飲んでみた時、確かにカップの表面は多少熱かった。でも、そんな外身に反して、中身のコーヒー自体は決して熱くなかったように思う。私的には、冷まさなくたって充分飲める温度だった。

 しかも、凛さんの分は元々あまり熱くならないように淹れているから、私のより更に温度は低いはずだ。


「相変わらず猫舌ですねえ」

「……仕方ないでしょ」


 そう、凛さんは極度の猫舌なのである。たこ焼きなんてよっぽど冷まさないと食べられないし、この前、二人でラーメンを食べている時に油断したのか、少し涙目になっているのを見たこともある。

 そんな姿もギャップ萌えを感じていいけれど……って、それはどうでもよくて。


 そういうわけで、我が家では私が作る時は飲み物もご飯も凛さんの分は少し冷ますようにしている。熱いものをふーふーする凛さんも可愛いけれど、うっかり火傷なんかされては困るからだ。

 まあ、そんな気遣いも実際意味があるのか微妙なところではある。なにせ本人は、冷たい飲み物はお腹を壊しやすいからと、夏場でもなければ基本的に温かいものしか飲まないし、ラーメンもお鍋も熱いのを食べるのが美味しいんじゃないと言って温かいのを食べたがるから。


「気をつけて飲んでくださいね」

「うん、ありがとう」


 とはいえ、私としては意味があろうがなかろうが、これからも凛さんのコーヒーはぬるめに淹れる一択なのだが。火傷なんてさせたくないし。


 次淹れるコーヒーはもっと温度を下げなくては。そう改めて決意を新たにする私の横で、何も知らない凛さんはようやく飲めるようになったらしいコーヒーを美味しそうに啜っていたのだった。

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