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第8話「調理レベル上昇で新スキル獲得しました」


 異世界キッチンカー生活、8日目の朝。


 職業別専用メニュー開発プロジェクトが始動してから、俺の元には今まで以上にたくさんの客が押し寄せるようになった。


『(嬉しい悲鳴だけど...正直、対応しきれなくなってきたな)』


 朝8時、営業開始と同時に既に20人の行列ができている。


「栄養キッチンカーさん!戦士用メニューお願いします!」

「魔法使い用はまだですか?」

「僧侶の友達にも勧められて来ました!」


『(みんな期待してくれてる...でも、狭いキッチンカーじゃ限界があるな)』


 俺は必死に調理を続けた。しかし、狭い車内では一度に大量の料理を作ることができない。


『申し訳ございません、少々お待ちください!』


「大丈夫ですよ!待ちますから!」

「美味しい料理のためなら何時間でも!」


 客たちは文句一つ言わずに待ってくれているが、俺の心は焦っていた。


『(もっと効率よく、たくさんの人に料理を提供したい...でも、この狭さじゃ...)』


 その時、ミラ、ガルド、エリーがやってきた。


「あら、今日はすごい行列ですわね」

「人気店の証拠だな!」

「でも、栄養キッチンカーさん、大丈夫ですか?すごく慌ててるみたいですけど...」


『(バレてる...)』


『実は、お客様が増えすぎて、対応しきれなくて...』


「そうですよね。この狭いスペースじゃ限界がありますもん」


 ミラが心配そうに言う。


「もっと大きなキッチンカーに買い替えるとか?」

「でも、そんなお金ないよな...」


 ガルドが現実的な問題を指摘する。


『(お金...確かに、大型キッチンカーを買う余裕はないな)』


「あら、でも最近魔法で大きさを変える道具があるって聞きましたわよ」

「でも、それもすごく高価ですのよね...」


 エリーの情報も参考にはなるが、やはり金銭的な問題が...


『(何か方法はないのか...)』


 その時、俺の体に異変が起きた。


『!?』


 温かいエネルギーが体全体を包み込む感覚。そして、頭の中に文字が浮かんだ。


『【調理レベルが上昇しました!】』

『【現在のレベル:5→10】』

『【新スキル獲得:サイズ変更】』

『【新スキル獲得:効率調理】』

『【新スキル獲得:味覚共有】』


『(おおお!レベルアップした!しかもスキルまで!)』


「栄養キッチンカーさん?急に光ったような...」


 ミラが驚いている。


『(サイズ変更スキル...これはもしかして!)』


 俺は新しく獲得したスキルを使ってみることにした。意識を集中すると...


『【サイズ変更発動】』


 ゴゴゴゴゴ...


「うわあああ!?」


 周りの客たちが驚きの声を上げる。俺のキッチンカーが、徐々に大きくなっていく!


 幅が2倍、奥行きが3倍、高さも1.5倍に拡張された。


「すげー!魔法のキッチンカーだ!」

「こんなの見たことない!」


『(やった!広くなった!)』


 車内を確認すると、調理スペースが大幅に拡張されている。コンロが4台、作業台が3つ、冷蔵庫も2台に増えている。


『(これなら一度にたくさんの料理が作れる!)』


 さらに驚いたことに、店内に座席スペースまで出現していた。


「あ、中にテーブルと椅子がある!」

「これで立ち食いじゃなくて、ゆっくり座って食べられる!」


『(座席まで!これは完全にレストランレベルだ!)』


 俺は新しいスキル『効率調理』も試してみた。


『【効率調理発動】』


 すると、体の動きが明らかに速くなった。まるで時間が加速したかのように、手際よく料理を作ることができる。


『(これなら待ち時間も大幅短縮だ!)』


「おお!すげー速さで料理してる!」

「魔法使いみたいだ!」


 30分後、全ての客の料理が完成した。


『皆様、大変お待たせしました!本日より座席でのお食事も可能です!』


「やったー!座って食べられる!」

「まるで高級レストランみたい!」


 客たちが喜んで座席に座る。8人用のテーブルが3つ、計24人が同時に食事できるようになった。


『(これで行列問題も解決だ!)』


 その時、3番目のスキル『味覚共有』も試してみたくなった。


『【味覚共有発動】』


 すると、客たちが食べている料理の味を、俺も感じることができるようになった。


『(おお!みんなの感じている味が分かる!)』


「このスープ、すごく優しい味で体に染み渡る...」

「この肉、今まで食べた中で一番柔らかい...」

「野菜がこんなに甘いなんて驚き...」


 客たちの感想が、俺の中にリアルに伝わってくる。


『(みんな本当に喜んでくれてる...これ以上の幸せはないな)』


 ミラたちも拡張された店内に驚いている。


「すごいです!まるで魔法ですね!」

「俺も座って食えるのか!いつも立ち食いだったからな!」

「まあ、素敵なレストランになりましたわ!」


『皆さんのおかげです。常連客として支えてくださったから、レベルアップできました』


「私たちのおかげ?」


『はい。お客様の満足度が上がると、私もパワーアップするんです』


「そうだったんですね!」


 その時、一人の客が手を挙げた。


「すみません、追加注文お願いします!」


『(追加注文!座席があるからゆっくり食べて、もっと注文してくれるのか!)』


「俺も追加で!このスープもう一杯!」

「私もサラダの追加を!」


 次々と追加注文が入る。これまでは立ち食いで早々に帰っていた客たちが、ゆっくりと食事を楽しんでいる。


『(売上も上がるし、客の満足度も上がるし、一石二鳥だ!)』


 昼時になると、さらに多くの客が押し寄せた。


「あ、キッチンカーが大きくなってる!」

「座席もある!これは便利だ!」


 新しく来た客たちも、拡張された店内に感動している。


「今まで行列で諦めてたけど、これなら座って待てるね」

「友達同士で来ても、一緒に食べられる!」


『(コミュニケーションの場としても機能してるな)』


 午後になると、ガルドが仲間の戦士たちを連れてきた。


「おい、みんな!ここが例の栄養キッチンカーだ!」

「おお、本当に大きいな!」

「座席もあるじゃないか!」


 戦士たちが座席に座って、職業別メニューを注文する。


「戦士用メニュー4つお願いします!」


『承知しました!効率調理で一気に作らせていただきます!』


 俺は新スキルをフル活用して、4人分の戦士用メニューを同時調理。あっという間に完成させた。


「はやっ!魔法みたいだ!」

「この効率の良さ、さすがプロだな!」


 戦士たちが感心している。


 夕方、エリーも魔法使い仲間を連れてきた。


「皆さん、こちらが私がいつもお話ししている栄養キッチンカーですわ」

「まあ、素敵なレストランですわね!」

「これなら女性同士でも気軽に利用できそう!」


 魔法使いの女性たちが、優雅に座席に座る。


「美魔女ビューティーセット、5名様分お願いしますわ」


『かしこまりました!』


 俺は魔法使い用メニューを5人分同時調理。拡張されたキッチンスペースで、余裕をもって調理できる。


「美しい盛り付けですわね」

「味も見た目も完璧ですわ」


 魔法使いたちも大満足の様子。


 夜になると、今度はミラが弓使い仲間を連れてきた。


「みんな、ここが私の体調を劇的に改善してくれた栄養キッチンカーよ!」

「ミラ、最近本当に調子良さそうだもんね」

「秘密はここの料理だったのね」


 弓使いたちも座席でゆっくりと食事を楽しんでいる。


『(常連客が新規客を連れてきてくれる...最高のマーケティングだ)』


 営業終了後、俺は一日の売上を確認した。


『(売上が3倍になってる!座席効果と追加注文効果がすごい!)』


 さらに、客の満足度も大幅にアップしていることが分かった。


『【本日の客数:120人】』

『【平均満足度:98%】』

『【リピート率:95%】』


『(ほぼ全員が満足して、また来てくれるってことか!)』


 ミラたちが最後の客として残っている。


「今日は本当にすごい一日でしたね」

「俺も仲間たちと一緒に食事できて楽しかった」

「女子会みたいで楽しかったですわ」


『皆さんのおかげで、また新しいステップに進むことができました』


「私たちも嬉しいです!」


 その時、俺の体にまた温かいエネルギーが流れた。


『【お客様満足度向上により、新機能解放】』

『【配達サービス機能獲得】』

『【予約システム機能獲得】』

『【メニュー開発支援機能獲得】』


『(まだまだパワーアップしていくのか!)』


「また光った!?」


『今度は配達サービスと予約システムが使えるようになりました』


「配達!?」

「予約もできるの!?」


『はい。明日からは、ダンジョン攻略中の冒険者への配達や、事前予約でのメニュー確保も可能です』


「すごい!どんどん進化してる!」

「これで忙しい時でも確実に食事できるな!」

「予約できるなら、特別な日のお食事も計画できますわね!」


 俺のキッチンカーは、単なる移動販売から本格的なレストランへと進化を遂げた。


『(でも、一番大切なのは変わらない。みんなに栄養のある、美味しい食事を提供すること)』


 規模は大きくなったが、俺の想いは最初と同じ。一人一人の健康を考えた、心のこもった料理を作り続けていく。


『(明日はどんな新しい出会いが待ってるかな?楽しみだ!)』


 拡張されたキッチンカーで迎える明日に、俺は期待を膨らませていた。


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