表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/50

第27話「高級食材vs栄養バランス、どちらが勝つ?」


 異世界キッチンカー生活、気持ち27日目の正午。


 中央広場には、街の住民たちが大勢集まっていた。審査員として選ばれた50名も、特設の審査席に座っている。


「いよいよ始まるのか」


「王都の料理人vs栄養キッチンカー、どっちが勝つかな」


 ざわめく観客席の中央に、2つの調理台が設置されていた。


 片方にはアルフレッド、もう片方には俺が立っている。


「さあ、世紀の料理対決を始めよう!」


 司会を務めるレオンギルドマスターが宣言する。


「制限時間2時間!材料費無制限!審査員50名の過半数票を獲得した方の勝利だ!」


 会場が沸き上がる。


「頑張って、栄養キッチンカーさん!」


 ミラが声援を送ってくれる。


「負けるな!」


 ガルドも拳を振り上げる。


「私たちが応援していますわ!」


 エリーも優雅に手を振ってくれる。


 一方、アルフレッドの方には王都から来た取り巻きたちが陣取っている。


「アルフレッド様の勝利は間違いありません」


「田舎の屋台料理など、相手になりませんわ」


『(さあ、勝負だ)』


「それでは...料理開始!」


 レオンの合図と共に、料理対決が始まった。


 アルフレッドは早速、豪華な食材を並べ始める。


「見よ、これが王都最高級のフォアグラだ!」


 アルフレッドが高らかに宣言する。


「そして、これは幻の黒トリュフ!1個で金貨10枚もする超高級食材だ!」


 観客席からどよめきが起こる。


「すげー、そんな高い食材があるのか」


「金貨10枚って、俺の年収じゃないか」


「さらに、これは王室御用達のキャビア!」


 アルフレッドが次々と高級食材を披露する。


「王都でしか手に入らない最高級ワイン!」


「伝説の職人が作った熟成チーズ!」


 まるで宝石のように輝く食材の数々に、観客は圧倒されている。


『(確かにすごい食材だな...でも)』


 俺は、自分の調理台に並べた食材を見つめた。


 新鮮な地元の野菜、バルト商会から仕入れた良質な肉、バジル博士の魔法植物。


 どれも高価ではないが、栄養価が高く、安全で美味しい食材ばかりだ。


『(俺は俺のやり方で勝負する)』


 俺は「バランス重視の健康定食」を作ることにした。


『まずは、メインのチキンソテーから』


 鶏胸肉を丁寧に下処理し、ハーブでマリネする。高タンパクで低脂肪、消化も良い。


 一方、アルフレッドは派手なパフォーマンスを始めていた。


「これが王都秘伝のフランベ技術だ!」


 フライパンに炎が上がり、会場が「おお!」と沸く。


「さらに、芸術的な盛り付けもご覧あれ!」


 皿の上に、まるで絵画のような美しい料理が完成していく。


『(見た目は確かにすごいな...)』


 俺も負けずに調理を続ける。


 付け合わせには、彩り豊かな温野菜。ビタミンとミネラルをバランス良く摂取できる。


 ご飯は雑穀米。食物繊維とビタミンB群が豊富だ。


 スープは、野菜の旨味を凝縮したコンソメベース。体を温め、消化を助ける。


「何だあれは、普通の定食じゃないか」


「高級食材は使わないのか?」


 観客の一部から困惑の声が上がる。


『(見た目は地味かもしれないけど...)』


 俺は栄養バランスを最優先に、一品一品丁寧に作り上げていく。


 30分経過。アルフレッドの料理は、既に芸術作品のような美しさだった。


「見よ、これが『王都風フォアグラのポワレ、黒トリュフソース添え』だ!」


 観客席から感嘆の声が上がる。


「美しい...まるで宝石みたい」


「こんな料理、見たことない」


「さすが王都の料理人だ」


 アルフレッドが得意げに胸を張る。


「これこそが本物の料理だ。見た目、香り、すべてが完璧だ」


 一方、俺の料理は相変わらず地味だった。


「栄養キッチンカーさん、大丈夫?」


 ミラが心配そうに声をかけてくる。


『大丈夫です。俺の料理は、見た目じゃなく中身で勝負します』


 俺は魔法植物を使った特製ドレッシングを作る。


 マナリーフで魔力回復効果、スタミナベリーで疲労回復効果を加える。


 1時間経過。アルフレッドは2品目を完成させていた。


「続いては『幻のキャビアとロブスターのテリーヌ』だ!」


 これまた豪華絢爛な一品が完成する。


「材料費だけで金貨50枚はかかっているぞ」


 観客が驚愕している。


「金貨50枚!?俺の家が買えるじゃないか」


 俺も2品目に取りかかった。


『今度は『免疫力向上サラダ』を』


 緑黄色野菜をたっぷり使い、抗酸化作用の高い食材を組み合わせる。


 見た目は普通のサラダだが、栄養価は抜群だ。


「また普通のサラダか...」


「栄養キッチンカー、本当に大丈夫?」


 観客席から不安の声が漏れる。


 しかし、常連客たちは俺を信じてくれていた。


「栄養キッチンカーさんの料理は、見た目じゃ分からない良さがあるんです」


 ミラが周りの人に説明している。


「そうだ!俺たちは実際に体で感じてるからな」


 ガルドも力説する。


「私たちの美と健康が証拠ですわ」


 エリーも自信を持って言う。


 1時間30分経過。両者とも最後の一品に取りかかる。


 アルフレッドは豪華なデザートを作り始めた。


「最後は『王室秘伝のシャンパン・ソルベ、金箔添え』だ!」


 本物の金箔を使った、まさに王様のデザート。


『(すごいな...でも)』


 俺は最後に『完全栄養バランススープ』を作る。


 5大栄養素すべてをバランス良く含み、体の調子を整える万能スープだ。


「制限時間残り10分!」


 レオンが時間を告げる。


 アルフレッドは最後の仕上げに入っていた。


「完璧だ!この美しさ、この高級感、これぞ真の料理だ!」


 俺も最後の味付けを行う。


『(味だけじゃない、体への効果も考えて...)』


「時間です!調理終了!」


 レオンの合図で、両者とも手を止めた。


 まず、アルフレッドの料理が審査員に配られる。


「うわあ、美しい!」


「こんな豪華な料理、初めて見た」


「食べるのがもったいないくらいだ」


 審査員たちが感嘆の声を上げる。


 アルフレッドの料理は、確かに見た目が圧倒的だった。


 宝石のように輝くキャビア、芸術的に盛り付けられたフォアグラ、金箔が舞うデザート。


 どれも王都の高級レストランでしか味わえない、まさに非日常の料理だった。


「美味しい!こんな味、初めてだ」


「口の中でとろけるような食感」


「さすが王都の料理人だ」


 審査員たちが次々と絶賛する。


 アルフレッドが満足げに笑う。


「どうだ、これが本物の料理だ」


 続いて、俺の料理が配られる。


「あれ?普通の定食だ」


「見た目は地味だな」


「本当にこれで勝負するの?」


 審査員たちが困惑している。


『(見た目で負けてる...でも、食べてもらえば分かるはず)』


 審査員たちが恐る恐る俺の料理を口にする。


 最初は戸惑っていた表情が、だんだん変わっていく。


「あれ?なんか体が温まる」


「疲れが取れた感じがする」


「不思議だ、元気が出てくる」


 審査員たちが俺の料理の効果を実感し始めた。


「これは...ただの定食じゃない」


「食べただけで健康になった気がする」


「体の奥から力が湧いてくる」


 会場の雰囲気が変わり始める。


 見た目の華やかさで圧倒的だったアルフレッドの料理と、体への効果で真価を発揮する俺の料理。


 果たして、勝負の行方は...?


『(さあ、審査員の判断は?)』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ