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第18話「ミラちゃんの成長が親心で嬉しすぎる」


 異世界キッチンカー生活、気持ち18日目の朝。


 エリーとガルドの成長を見届けてきた俺だが、今日はなんだかそわそわしていた。


『(今日はミラちゃんの昇格試験の日だ...)』


 そう、ミラが中級冒険者への昇格試験を受ける日なのだ。俺は朝から心配で心配で、まるで娘の受験を控えた父親のような気分だった。


『(落ち着け、俺。でもミラちゃん、ちゃんと朝食食べてくれたかな...昨日渡した栄養補助食品、持って行ってくれたかな...)』


 そんな時、キッチンカーの向こうから見慣れた栗色のポニーテールが見えた。


「おはようございます!」


 ミラが駆け寄ってくる。でも、いつもより顔が青白い。


『ミラちゃん!大丈夫?顔色悪いよ?』


「あ、はい...実は昨夜あまり眠れなくて...」


 ミラが不安そうに言う。


『(やっぱり緊張してるのか。可愛いなあ...って、今は可愛いとか言ってる場合じゃない!)』


「今日の試験、本当に大丈夫でしょうか...」


『大丈夫、大丈夫!ミラちゃんなら絶対に合格できる!』


 俺は慌てて励ます。


「でも、中級冒険者の試験って、すごく難しいって聞いて...」


『(ああ、もう見てられない!こんなに不安そうなミラちゃん...)』


 俺は急いでミラ専用の「合格祈願スペシャル朝食」を作り始めた。


『今日は特別メニューです!「勝利の女神朝食セット」!』


「勝利の女神!?」


 ミラの目がきらりと光る。


『集中力を最大限に高めるDHA、緊張をほぐすマグネシウム、持久力を支える複合炭水化物を完璧にバランスしました!』


 俺は気合いを入れて調理する。まるで娘の弁当を作る父親のような気持ちだ。


『そして!』


 俺は特製のお守りを取り出した。


『昨夜、徹夜で作った手作りお守りです!中には栄養バーと、緊急時用のエネルギードリンクが入ってます!』


「手作りのお守り!?」


 ミラが感動している。


『ミラちゃんの健康と安全を祈って、一針一針縫いました』


「栄養キッチンカーさん...まるでお父さんみたい...」


 ミラの言葉に、俺の胸がキュンとした。


『(お父さん...前世では結婚もできなかったのに、今は娘みたいな子がいる)』


 その時、ガルドとエリーもやってきた。


「よお、ミラ!今日はいよいよ試験だな!」


「ミラ、頑張ってくださいまし!」


「ガルドさん、エリーちゃん...」


 ミラが嬉しそうに微笑む。


「みんなで応援してますからね」


『そうそう!みんなミラちゃんの味方だから!』


「ありがとうございます!頑張ってきます!」


 ミラが元気よく試験会場に向かっていく。


『(ああ、行っちゃった...心配だなあ)』


 その後、俺はまったく仕事に集中できなかった。


『(大丈夫かな、ミラちゃん...お腹空いてないかな...怪我してないかな...)』


「栄養キッチンカーさん、さっきから同じ野菜を10回も洗ってますよ」


 客の一人が苦笑いしながら指摘する。


『あ、すみません!ちょっと心配事があって...』


「もしかして、ミラちゃんの試験のことですか?」


『(バレてる...)』


「街中で話題になってますよ。『栄養キッチンカーの一番弟子が昇格試験』って」


『一番弟子って...』


「だって、ミラちゃんが一番最初の常連客でしょ?みんなそう思ってますよ」


 確かに、ミラは俺の最初の常連客だった。


『(そうか、ミラちゃんは俺の一番弟子なのか)』


 午後になっても、俺はそわそわしていた。


『(試験、どうなったかな...もう終わったかな...)』


 その時、ギルドの方向から歓声が聞こえてきた。


「合格発表だ!」


「誰が受かったんだ?」


 俺も気になって、キッチンカーを一時的に閉めて、ギルドに向かった。


 ギルドの前には大勢の人だかりができている。合格者リストが張り出されているようだ。


『(ミラちゃんの名前はあるかな...)』


 俺も人混みに紛れて、リストを確認する。


 新中級冒険者合格者一覧

 1. ミラ・フォレスト(弓使い)

 2. ダン・アイアンソード(戦士)

 3. ...


『(あった!ミラちゃんの名前が一番上に!)』


 俺は嬉しさのあまり、思わず声を上げそうになった。


「おお、ミラが合格したのか!」


「しかもトップ合格じゃないか!」


 周りの冒険者たちも驚いている。


「新人だったミラが、こんなに短期間で...」


「やっぱり栄養キッチンカーの効果かな?」


『(トップ合格!?すごいじゃないか、ミラちゃん!)』


 その時、ギルドからミラが出てきた。手には合格証書を持っている。


「みなさん!見てください!合格しました!」


 ミラが嬉しそうに合格証書を掲げる。


 瞬間、俺の目から涙がボロボロと流れ出した。


『(ああ、ミラちゃん...よく頑張った...)』


 まるで本当の娘が合格したような気持ちだった。


「栄養キッチンカーさん!」


 ミラが俺を見つけて駆け寄ってくる。


「見てください!トップ合格です!」


『ミラちゃん...おめでとう...』


 俺は声を震わせながら言った。


「ありがとうございます!栄養キッチンカーさんのおかげです!」


『(もう、涙が止まらない...)』


「あの、栄養キッチンカーさん、泣いてるんですか?」


『嬉し涙だよ。ミラちゃんがこんなに成長して...』


 俺は素直に気持ちを表現した。


『まるで娘が合格したみたいで...』


「娘...私、栄養キッチンカーさんの娘なんですか?」


 ミラが照れながら聞く。


『気持ちの上では、本当の娘みたいに思ってる』


「わあ...私もお父さんができたみたい!」


 ミラが嬉しそうに笑う。


 その時、レオンギルドマスターが出てきた。


「ミラ君、改めて合格おめでとう」


「ありがとうございます!」


「試験官たちも君の成長ぶりに驚いていた」


 レオンが説明する。


「特に体力測定と集中力テストの結果が素晴らしかった」


『(やっぱり栄養改善の効果が出てるな)』


「それから、ミラ君を指導した栄養キッチンカーさんにも感謝状を渡したい」


『感謝状?』


「優秀な冒険者の育成に貢献したということで」


 レオンが立派な感謝状を差し出す。


『こんな立派なものを...』


「君の栄養指導がなければ、ミラ君のこれほどの成長はなかっただろう」


 夕方、お祝いパーティーを開くことになった。


 ガルドとエリーも駆けつけて、みんなでミラの合格を祝った。


「ミラちゃん、本当におめでとう!」


「俺たちの自慢の仲間だ!」


「私たちも嬉しいですわ!」


『今日は特別に、「合格お祝いフルコース」を作らせてもらいます!』


「フルコース!?」


 俺は気合いを入れて、ミラのお祝い料理を作り始めた。


 前菜から始まって、スープ、メイン、デザートまで、全7品のフルコース。


『これは「成長の軌跡コース」です』


 俺が料理を説明しながら出していく。


『最初の前菜は「出会いのサラダ」。ミラちゃんが初めて来た時を思い出して』


「あの時のこと、覚えてるんですか?」


『もちろん!栄養失調でフラフラだったミラちゃんを見て、すごく心配になった』


『次のスープは「友情の温かさ」。みんなと仲良くなっていく過程を表現』


「みんなと出会えて、本当に良かった」


『メインは「挑戦の勇気」。いつも新しいことに挑戦するミラちゃんの姿勢を讃えて』


「私、栄養キッチンカーさんに出会って、いろんなことに挑戦する勇気をもらいました」


『そして最後のデザートは「輝く未来」。これからのミラちゃんの活躍を願って』


「栄養キッチンカーさん...」


 ミラの目に涙が浮かんできた。


「こんなに私のことを思ってくれて...」


『ミラちゃんは俺の自慢の娘だから』


「お父さん...」


 ミラが俺に抱きつく。


『(ああ、この子を見守ってきて本当に良かった)』


 その夜、俺は一人で振り返っていた。


『(ミラちゃんと出会ったのが、俺の人生の転機だったな)』


 栄養失調でフラフラだったあの少女が、今や立派な中級冒険者になった。


『(人の成長を見守るって、こんなに幸せなことなんだな)』


 翌日、俺のキッチンカーには新しい看板が掲げられていた。


『祝!一番弟子ミラ様 中級冒険者トップ合格!

~栄養指導の成果がここに実証されました~

父娘の絆で結ばれた最高の成長物語』


 この看板を見た人々が、温かい笑顔で俺を見てくれる。


「親子みたいで微笑ましいね」


「栄養キッチンカーさんの愛情が伝わってくる」


 ミラの成長は、俺にとって何よりの宝物だった。


『(これからも、みんなの成長を見守り続けよう。それが俺の一番の幸せだ)』


 バルト商会との戦いはまだ続いているが、こんなに素晴らしい仲間たちがいれば、どんな困難も乗り越えられる。


 特に、ミラちゃんという「娘」ができたことが、俺の人生を豊かにしてくれた。


『(ありがとう、ミラちゃん。君に出会えて、本当に良かった)』


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