第17話「ガルドさんの脳筋が栄養で進化しました」
異世界キッチンカー生活、気持ち17日目の朝。
エリーの劇的変化に続いて、今度はガルドに注目が集まっていた。
「おはよう、栄養キッチンカー!今日も筋肉強化メニューを頼む!」
いつものようにガルドがやってきたが、最近の彼は以前とは明らかに違っていた。
『おはようございます。今日も調子良さそうですね』
「ああ!絶好調だ!昨日のダンジョン攻略も大成功だった!」
ガルドが嬉しそうに報告する。
「なんと、B級ダンジョンを単独でクリアしちまった!」
『単独でB級!?それはすごい!』
俺も驚いた。B級ダンジョンは通常、3-4人パーティで挑むレベルだ。
「でも、一番驚いたのは俺自身だ」
ガルドが興奮気味に話し続ける。
「力任せに戦うんじゃなくて、戦術を考えながら戦えたんだ」
『戦術を?』
「そうだ!『この敵にはどの技が効果的か』『体力を温存するにはどう動けばいいか』とか、戦いながら考えられるようになった」
『(集中力と思考力が向上してるのか)』
その時、ミラとエリーもやってきた。
「おはようございます!あら、ガルドさんすごく嬉しそうですね」
「ガルドさん、また何か良いことがあったんですの?」
「聞いてくれ!俺、昨日B級ダンジョンをソロクリアしたんだ!」
「えええ!?B級をソロで!?」
ミラが驚愕する。
「まあ!すごいですわ!」
エリーも感動している。
「でも、それだけじゃないんだ」
ガルドが続ける。
「戦い方が完全に変わったんだ。前は力任せで、すぐにスタミナ切れを起こしてたのに...」
『どんな風に変わったんですか?』
「まず、持久力が段違いになった」
ガルドが説明し始める。
「以前は30分も戦えば息切れしてたのに、昨日は3時間連続で戦えた」
『(複合炭水化物とビタミンB群の効果だな)』
「それから、集中力も続くようになった」
「集中力?」
ミラが興味深そうに聞く。
「ああ。前は戦いに夢中になると周りが見えなくなってたんだが、今は冷静に状況判断できる」
『(栄養バランスが脳機能にも影響してるな)』
「例えば、敵の攻撃パターンを覚えて、それに合わせて戦術を変えるとか」
ガルドが具体例を話す。
「ドラゴンゾンビとの戦いでは、最初は力で押し切ろうとしたんだが、途中で『これじゃダメだ』と気づいて」
「気づいて?」
「相手の弱点を冷静に分析して、効率的な攻撃方法を考えたんだ」
『(戦略的思考ができるようになったのか)』
「その結果、無駄な体力を使わずに勝てた」
ガルドが嬉しそうに言う。
「前の俺だったら、絶対に力任せで突っ込んで、返り討ちにあってただろうな」
その時、戦士ギルドからガルドの同僚がやってきた。
「ガルド!いたのか!」
「おお、ロックじゃないか」
「お前のこと探してたんだ。昨日のB級ソロクリア、ギルド中で話題になってるぞ」
『(ギルド中で話題に?)』
「でも、みんなが一番驚いてるのは、お前の戦い方が変わったことだ」
ロックが説明する。
「以前のガルドは『脳筋の代表』だったのに、最近は戦術を駆使するようになった」
「脳筋って...まあ、確かにそうだったな」
ガルドが苦笑いする。
「ギルドマスターも『ガルドは本当に同一人物か?』って言ってたぞ」
『(それほど劇的に変わったのか)』
「それで、ガルドの変化の秘密を教えてくれって、みんなが言ってるんだ」
「秘密は...栄養だ」
ガルドが俺を指差す。
「栄養キッチンカーの料理を食べ続けたら、体だけじゃなく頭も良くなった」
「栄養で頭が良くなる?」
ロックが首をかしげる。
『脳も筋肉と同じで、適切な栄養が必要なんです』
俺が説明を始めた。
『特に、集中力や思考力には、ブドウ糖、オメガ3脂肪酸、ビタミンB群が重要です』
「へー、そうなのか」
『ガルドさんの場合、以前は肉中心の食事で、脳に必要な栄養が不足していました』
「確かに、肉しか食わなかったからな」
ガルドが納得している。
『バランスの良い食事に変えることで、脳の機能も向上したんです』
「俺にも同じメニューを作ってくれ!」
ロックが興奮して言う。
「俺も頭の良い戦士になりたい!」
昼時、ガルドが実演を見せてくれることになった。
「じゃあ、最近覚えた戦術を披露するか」
ガルドが練習用のダミー相手に戦闘を開始する。
「まず、相手の動きを観察」
ガルドが慎重にダミーの周りを回る。
「攻撃パターンを分析して...よし、弱点を発見」
以前の力任せなガルドとは全く違う、計算された動きだった。
「そして、最小限の力で最大効果を狙う」
ガルドが的確にダミーの急所を攻撃する。
「すげー!まるで別人だ!」
「本当に戦術的になってる!」
見ていた客たちが驚嘆している。
「以前の俺なら、力任せに正面突破してただろうな」
ガルドが振り返る。
「でも今は、効率を考えて戦える」
『(筋肉だけでなく、知力も向上してるな)』
午後、バジル博士がやってきた。
「ガルド君の変化について調査したくてな」
『どのような調査ですか?』
「栄養改善による脳機能への影響を調べたいのじゃ」
博士が興味深そうに言う。
「特に、筋肉中心の職業の人が、バランス良い食事でどう変わるかは貴重なデータじゃ」
「俺が実験台か?面白そうだな」
ガルドが快諾する。
「最近、本当に頭が良くなった気がするんだ」
『どんな場面で実感しますか?』
「戦闘中の判断力もそうだが、日常生活でも変わった」
ガルドが具体例を話す。
「例えば、クエストの依頼書を読むのが早くなった」
「読むのが早くなった?」
「ああ。以前は文字を追うのも大変だったのに、今はスラスラ読める」
『(集中力向上の効果だな)』
「それから、お金の計算も得意になった」
「計算も?」
「装備品の価格比較とか、クエスト報酬の配分とか、以前は仲間任せだったのに」
ガルドが嬉しそうに言う。
「今は自分で計算できる」
『(脳の血流改善と栄養状態向上の結果だ)』
夕方、戦士ギルドのギルドマスターが視察に来た。
「ガルドの変化、本当に驚いている」
『ありがとうございます』
「我がギルドの戦士たちは、どうしても力任せになりがちでな」
ギルドマスターが説明する。
「だが、ガルドを見ていると、『知力も重要だ』ということが分かる」
「ギルドマスター、俺はまだまだですよ」
ガルドが謙遜する。
「いや、君の成長は目覚ましい。他の戦士たちの見本になってくれ」
ギルドマスターがお願いする。
「栄養の重要性を、ギルド全体に広めたい」
『喜んでお手伝いします』
営業終了後、常連の3人が集まってくれた。
「今日のガルドさん、本当にかっこよかったです」
ミラが感動している。
「戦術を考えながら戦うなんて、まるで騎士みたい」
「私も驚きましたわ」
エリーも同感だ。
「以前の力任せなガルドさんも魅力的でしたけど、今の知的なガルドさんも素敵ですわ」
「へへ、照れるな」
ガルドが恥ずかしそうに頭を掻く。
「でも、俺が一番驚いてる」
『どんなところが?』
「自分でも信じられないんだが、最近本を読むのが楽しくなった」
「本を!?」
ミラが仰天する。
「ガルドさんが本を!?」
エリーも驚いている。
「ああ。戦術書とか、歴史書とか」
ガルドが説明する。
「知識があると、戦いでも役に立つことが分かったんだ」
『(知的好奇心まで向上してるのか)』
「以前は『本なんて読むもんじゃない』って思ってたのに」
ガルドが当時を振り返る。
「今は『もっと知りたい』って思うようになった」
「素晴らしい変化ですね」
ミラが感動している。
「筋肉だけじゃなく、知識も身につけたガルドさんって最強じゃないですか」
「まだまだだよ」
ガルドが謙遜する。
「でも、栄養キッチンカーのおかげで、新しい自分を発見できた」
『ガルドさんが努力したからですよ』
「いや、栄養の力がなかったら、絶対に変われなかった」
ガルドが感謝を込めて言う。
「脳筋だった俺が、こんなに変われるなんて夢みたいだ」
翌日、俺のキッチンカーには新しい看板が追加されていた。
『栄養改善成功例
ガルド様:筋力・持久力・知力すべて向上達成
~脳筋卒業、知的戦士への進化~』
この看板を見た戦士たちが、続々と相談に来るようになった。
「俺も頭の良い戦士になりたい」
「持久力を向上させたい」
「ガルドみたいに変わりたい」
ガルドの成功事例が、新たな客を呼び込んでいく。
『(筋肉だけでなく、知力も向上できることを証明できた)』
バルト商会との戦いはまだ続いているが、俺には確信があった。
人の可能性を引き出す力。これこそが、俺の真の価値なのだ。
『(ガルドさんの変化を見て、俺も改めて栄養の力を実感した)』
肉体だけでなく、精神的な成長も促せる。これが俺の栄養指導の真髄なのかもしれない。