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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第97話 うさぎと蛾


 着ぐるみ装備の俺とおタヒ。

 並ぶとまるで姉妹か同じ学校の生徒のように見える。

 うーん、グリセルダが引率の保母さんか先生ポジションだな。気恥ずかしくないといえば嘘になる。グリセルダとおタヒが俺を見る目はやや嬉しそうだが。なんでだよ。



 周囲を見渡すと無機質な空間だった。コンクリートのような無骨な壁に、パイプや配線、ダクトが通っているのが見える。


 あの手をかけたヴィルステッド村の優しい部屋とは違う、工場のような無機質な空間だ。見回すと、天井の隅に小銃が仕掛けてあった。

 エリア鑑定がなければ見つからなかっただろう。ダクトの影に巧妙に隠されていた。


「グリセルダ、あの罠の銃回収したいから悪いんだけど足場にしていいかな……」

「……まあよかろう」


 流石に靴は脱ぎ、グリセルダの肩の上にのって背伸びをして仕掛けられていた小銃を回収する。マガジンは刺さったままだ。

 何かあるといけないので鑑定してみる。


『自動小銃/ 量産型の武器。マジックマガジンを装備して使う。使用可』


 一応インテに収納しておく。持っておけば役に立つこともあるだろう。


 部屋の出口には鉄製の扉が有り、扉には看板が貼り付けられていた。


『ここより五層

 セーフエリア以外での魔法・スキルの使用にはペナルティがあります

・消費MP30倍

・パッシブスキルにはペナルティは有りません

・攻撃魔法の威力は50%減少します』


「……マジかよ、まあ俺のメインはステータスとパッシブスキルだから影響あるのは【エリア鑑定】くらいか?」

「私も困らぬな……【パワースラッシュ】もあれば便利ではあるがなければ地道に斬り殺せば良い」


 うわー、グリセルダの脳筋思考。こう言うの好き。大好き。


「私が困るんだけど! 消費MP30倍って! ろくに術が使えないじゃない!」

「あれ? お前の術ってMP消費するの? 筆と墨と紙だけじゃないの?」

「流石に使ってるわよ。式神も発動時以外も僅かだけど常時消費してるし……」


 流石にもとから持ってる技術だから消費しないのではないか、なんて考えは甘かったようだ。


「セーフエリアとやらを目指していくのが良かろうな」

「そうだな……エリア鑑定が使えないのは不安だけどな。30倍消費だと一回も使えないからなあ」


 俺の最大MPは100くらいだ。エリア鑑定と隠密行動は10消費なので300消費することになる。とてもではないが使えない。しかし、先程は使えていたということは、少なくとも一定時間発動のものだけでもここで発動していけば次のセーフエリアにつくまでどうにか出来るだろう。


「おタヒ、牛頭くんをここで呼んでおこう。ここは多分セーフエリアだ」

「えっ、そうなの? でも罠があったわよ?」

「セーフエリアはダンジョンの敵が入ってこないってだけだ。俺達みたいなプレイヤー同士には関係ないんじゃないかな。ということで合ってるか、インテ?」

「その通りでございますチケン様!」

「そうなのね、じゃあ牛頭くん! いらっしゃい!」


 そういやすっかりもう牛頭天王という本名が忘れられている。ゆるい雄叫びを上げながら牛頭くんが登場した。


「にょわーん!」

「しかし、本当はもっと雄々しい雄叫びを上げるはずだったのだけれどどうしてこんな面白い鳴き声になっているのかしら……」


 やっぱりサインペンで書いた呪符がいけないんじゃねえかなあ……。

 なんかかっこいいはずの呪符がゆるいイラストみたいだし……。


「よし、じゃあドアを開けて前に進むか」


 軋んだ音を響かせてドアを開く。

 無機質なコンクリートの柱と床の廊下がどこまでも続いている。俺達はセーフエリアを出て前へ進むことにした。


 歩いて数分すると、ザーッという雑音が流れる。ラジオやテレビの砂嵐のようなあれだ。そして、ブザー音がなる。


「なんだ?」


 ブザー音が消えると空中から蛾のような化け物が現れた。テレビやネットで見た覚えがある。


「モスマンだ!」


 モスマンは薄汚い茶色い羽をしていて、羽から何か粉が飛び散っている。あれは吸わないほうがいいだろうな……。赤い目をしたモスマンが5匹高速で襲ってくる。


 俺は予備のナイフで応戦するが、手応えが薄い。俺が足止めし、グリセルダと牛頭くんがモスマンの頭を叩き割るも、まだ4匹も残っている。


 モスマンの攻撃はかわせるが、そのたびに鱗粉が飛び散るのが地味に嫌だ。


「インテ! こんなの図鑑にいなかったと思うんだが!」

「新しく導入されたモンスターでしょうねえ……」


 まあ古文書みたいな本を信用してもしょうがないしな……。

 この前聞いたら、あの本の初版600年前くらいらしい。地球だと余裕で古文書の域だ。


 初見のゲームだと思って気を引き締めていこう。しかし、ブザー音が鳴るたびに追加でモスマンが追加されていく。キリがない。


「蛾の弱点ってなんだ?!」

「火じゃないかしら……」


 おタヒが自信なさそうに呟いている。なるほど。確かに飛んで火に入る夏の虫っていうしな……。


「インテ、松明かなんかあるか?」

「おまかせを!」


 インテは触手を伸ばし、スイッチの付いた棒のようなものを渡してくれた。

 スイッチを推すと先端から溶接でもするかのような勢いのいい炎が飛び出した。すると、モスマンがこっちに集まってくる。本当に動きが虫の挙動だ。高速で飛んでくるのが怖いが避けられなくはないのが幸いだ。

 火に集まってきたモスマンの群れを牛頭くんとグリセルダでタコ殴りにする。


 俺が松明を持ってぐるぐるしているだけで敵は二人が倒してくれる。パーティープレイって素晴らしい。


 そう思っていると、電子音が鳴ってモスマンの湧きはそこでストップした。惜しい、あとちょっとでレベル上がったのに……。


 モスマンが落とした羽の欠片や足、謎の汁とかは一応インテが回収していた。何を合成するのか怖くて聞けない。食い物にはしないで欲しい。


「しかし、罠があったってことは追い剥ぎもこっちに来たんだよな」

「そうであろうな、足元を探しながら見ているが、薄暗くて痕跡がよく見えぬ」

「でも薄暗いところに明かりなんかつけたらいい的じゃないかしら……」

「痕跡もだがセーフエリアか水場探したいな、水は一応持ってきたけども生活用水とかそう言うの考えると余裕はほしいからなあ」


 だってほら、真っ白な着ぐるみが鱗粉で茶色く汚れている。手も洗いたい。変な匂いがしないのは幸いだったが。

 グリセルダも多少汚れているし一番前に立っている俺と牛頭くんがとても汚い。


 そうぼやいていると、インテが気を利かせて空中に地図をだしてくれた。四方さん達が先ほどカハールカさんから貰った比較的近年の地図データらしい。確かに数十分歩いた体感と合致している。


「かなり広い上に複数フロアがあるのか、面倒だな……」


 地図によれば五層と六層は複合構造になっている。階段で行ったり来たりする感じの構造だ。考えるだけで足が死にそう。


「そして、中央の大広間付近の細い路地に行方不明になっている姫がいるはずなんだよな」

「姫? スフォー殿が仕えていたとかいう姫か? 何故ここに?」


 あっ、説明するのすっかり忘れてた……。

 俺は改めてこのフロアの中央の細い路地で消息を絶ったスフォーのおっさんの仕える姫君のことを話す。


「……15年前に行方不明になったのであろう? 果たして生きているのか?」

「四方さんたちによればたくましいから大丈夫らしいけど、詳しいことは教えてくれなかったんだよなー」

「普通のお姫様だったら死んでそうなものだけど」

「私もそう思う」

「お姫様って弱いものね」

「まあ普通の姫はだいたい箱入り娘だからな……」


 と、二層や三層に単独で到着したお姫様達が何かを言っている。この二人に鏡を見せてやるべきだろうか……。悩んだが、辞めておいた。

 俺だって空気を読むことくらいできる。




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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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