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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第92話 新衣装追加イベント


「ぐふっ…………た、ただいまインテ……いい子にしてたか……でも頼む、飛び込んでくるにしてもみぞおちは辞めてくれな……」

「申し訳ございません! あまりにも嬉しくて、つい……応急手当キット使いますか?」


 俺はそれを補給面を考えて丁寧にお断りして、代わりに四方さんに質問をする。


「あの、このカメラって24時間つながってるんですか?」

『いいえ、基本的には一日十分ほどしか使えませんので、そろそろ切断します。何か有りましたらインテに声をかけてご連絡ください、それでは……』


 四方さんはそう言って通信を切った。


「ちょ、待っ……この格好は、うわあああああああ! 俺が女装マニアだと思われたまま切れたあああああ!」


 そう叫ぶとおタヒとグリセルダが何かをいいたそうで我慢している顔になる。

 流石にわかるよな、ここで笑ったらさすがの俺もキレる。

 だから二人は顔面筋を動かさないように頑張っている……。頑張るべきところはそうじゃねえだろ。


「そう言うな、よく似合って愛らしい」

「そうよ、チケン可愛いわ! 桃色の髪に白い着物って似合うわね!」

「お可愛らしくていらっしゃいますよ?」


「俺はなあ! 可愛い自分よりも可愛いお前らが見たいんだよ! 俺じゃなくて! お前らが! 着ろ!」


 俺は魂の絶叫をするが、二人は『は? 嫌ですが?』みたいな顔をしている。くっそおおおおおおおおおお!


 俺は推しの新衣装、別スタイル、別スキンが欲しいだけなんだよ! リジェネ! オルタ! ジューンブライド! ハロウィン! クリスマス! ニューイヤー! 水着!!


「私の服は私に似合うように作らせたものだ。これで充分だと思うが。それともこの服は私に似合わぬか?」


 グリセルダの正論。ぐあああああ!! 似合うに決まってんだろ!


「めちゃめちゃ似合ってるよ!!」

「ならば良いではないか」

「そうよ、私だって似合ってるじゃない。ほーら、白いそろいの着物よ?」


 よく見るとおタヒは俺と同じデザインのおそろいのドレスのようなワンピースを着ている……。しかもブーツまでお揃いだ。まあ似合っているが……。


「ああ、うん……似合ってるな」

「そうでしょう! もっと褒めなさい!」

「わーにあうー、すてきー、かわいいー、うるわしいー、こうごうしいー」


 軽く褒めるとおタヒは満足してくれたようだ。棒読みでもいいんだ……。



「チケン、気に食わないにしても一応見せてこい。きっと村人が喜ぶであろう」

「えー……」

「えー、ではない。寝込んでいるチケンのためにわざわざ部屋を用意してくれたのだぞ。見せるだけでいいのだから早くいけ」

「はい……」


 未だに自分の声に慣れない。バグる。しかし、あまりモタモタしている時間もない。さっさと行って着替えて出発するとしよう。


 ドアを出て、一昨日出迎えられた応接間に行くと黒いモヤの人達がたくさんおり、皆が俺を歓迎してくれた。


「おはようございます! やっぱりお似合いになりますわ!」

「ほんとうにお可愛らしくて、ずっと村にいて欲しいですわ」

「そうそう、お菓子を食べてくださる人もいると嬉しいですものね……」

「お茶を飲んでくださる方も!」


 ここ、刑務所なんだもんなあ……。実情は俺とインテ以外知らないはずだが。そりゃめったに誰も通らないから客が珍しくなるよな。

 本当に通るだけでマレビトになってしまう村だなここは。


「服とベッドをありがとうございました、助かりました。あ、寝てる間に声が変わったんですけど、チケンです」

「大人の声から子どもの声に声変わりすることもあるのですね……」

「ええ、まあ……そういう人種的なアレです」


 俺は曖昧にごまかした。詳しい技術解説を伝えられる自信がなかったからだ。俺の言葉に皆満足そうに頷く。

 俺の声変わりは残念ながら好評のようだ……。


「新しいお声、とても似合っておいでですわ!」

「ありがとうございます……慣れないんですけどね……」

「うふふ、そのうち慣れますわよ」

「ああ、そうそう。ほら、ミネルヴァ、例のものを」


 村長がそう言うと、村長夫人と思しきモヤの人が新しい紙包みを持ってきてくれた。リボンで包まれたそれを開くと、きれいに畳まれた服一式があった。

 俺でも精神的に着やすそうな、シンプルでかっこいい正統派ファンタジーっぽいやつだ。


「すごくかっこいいです、こう言う服欲しかったんですよ、ありがとうございます!」


 これは本当にそう思っている。

 なぜなら、所持品と武器をメインにポイントを使ったら残ったポイントで買えた服がいかにも無課金アバターだったので……。

 女装よりは無課金アバターのほうがマシだが。


「着てきてもいいですか?」

「ええ、どうぞ!」


 俺は元の部屋に戻ってこの服を脱ごうとしたが、脱ぎ方がわからない。これ、女の子はどうやって自前で着てるんだ?


 諦めてグリセルダに手伝ってもらって服を脱ぎ、貰った服に着替える。もうグリセルダには全身見られてるしな。シャツとパンツくらいならいいよ……。


「こう言うドレスは一人で脱ぎ着出来るようには作っていないからな、侍女がいる前提で作っている」

「あ。そうなんだ……どうりで」


 後ろ開きの上にボタンで開けしめするワンピースなのだ。とてもではないがどうしても一人で開けないボタンがある。グリセルダが手慣れた様子で外してくれた。

 お嬢様ってやつも大変なんだな……。たかが服を着るだけで人が必要なんてあまりにも面倒がすぎる。


 しかし、脱いでしまえばこちらのもの。

 新しく用意された服は一人でも着やすく、また着心地も良かった。無課金アバターの生地、ゴワゴワだったもんな……。


 軽く動かしてみたけど可動範囲も問題がない。腕の可動範囲も、足も問題なく動かせる。部屋の中だが軽く宙返りをしたりしてみたが、特に邪魔になることもなく体を動かすことが出来た。


「よし、これでいいか。あ、ベルトもストラップつけられるなこれ。本当にいい服だ……ポケットが有るのもいい」


 ジャケットにシャツ、ネクタイっぽい飾りの布、半ズボン。あと、地味に嬉しいのが編み上げのブーツ。3センチほどだが身長を高くしてくれている。

 この体の数少ない欠点、背の低さをフォローしてくれるのはありがたい。


「似合っているではないか」

「あら、そう言うのもいいわね。兄に仕えてた侍童達を思い出すわ」


 まあ二人にも好評だからいいか。今の俺は上流貴族の少年のような格好だ。男子風の服にしてくれたのは助かる。唯一の懸念がなくもないが。


「問題があるとしたら、この格好汚したり破いたりしたくないことだな。前の服着てこれはカバンに突っ込んでおいたほうがいい気もする」

「そう言うと思って前の服は捨てておいたわよ」

「なんで!?」


 おタヒのさらっとした一言に俺は絶叫する。


「予備の服として取っておいてくれてもいいのでは?!」

「そんな事言ってたらこの素敵な服をチケンは絶対に着ないじゃない」


「じゃあ汚れた時どうするんだよ!」

「私が衣服洗浄の魔法を使えばいいのでは?」


「破れたら!?」

「あっ、チケン様! お聞きください! 新機能の追加によって皆様の持ち物の修復機能なども追加されてます! 安心してどうぞその素敵なお召し物を身に着けてくださいませ!」


 インテまでそんな……。インテは絶対俺の味方だと思っていたのに。


「インテ、一応聞くけど前の服そんなに駄目?」

「うーん、チケン様の内面の素晴らしさに対してまるで無課金アバターのようで見合いませんかと」


 俺の内面なんて成人済みのお姉さんの罵倒で興奮する駄目なおっさんだから褒めるもんじゃねえだろとは思うんだが。俺には無課金アバターで充分だよ……。


 ちなみに未成年女子の罵倒では興奮しない。ニッコリくらいはする。



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