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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第83話 現実にて 4


 俺は相変わらず事情説明を続けていた。


「おタヒが式神でその女性を助けてあげた後、三層に移動して、隠れて寝てたら荷物全部盗まれたらしくてそれの犯人が多分、ドイツ人の方なんじゃないかと……」


 四方さんは眉間を抑えて目を閉じていた。同僚のやらかしに頭痛がするのか、それとも別の件なのか。俺には予想もつかなかった。


「根拠は?」

「三層出口にいたアンデッドナイトっているんですけど」

「存じております。三層出口の難所ですよね」


「そこにいたのがローレンツェンの王太子、グリセルダの婚約者のあいつと、魔法で女にTSした魔法メガネ……名前なんだっけ、魔法研究部のアイツ。あれがアンデッドナイトになってたんですよ」


 吉田さんがこらえきれずに噴き出す。気持ちはわかる。あのゲーム内の情報だけでは王太子がTSマニアなことは一切わからないようになってるからな……。


「てぃーえす……?」

「あ、性転換って意味ですよ、主任!」


 四方さんに解説をいれる吉田さん。やっぱりこっち側の人物だったか。


 個人情報も多いので、俺は王太子もここに転送されてきたことや千里眼を持っていること、アンデッドナイトが七人ミサキ的存在であったこと、ドイツ人が残していった装備、そしてドイツ人らしき人物がもう5層に到達していることについて簡潔に言及するにとどめた。


 王太子の性癖の話とかしてもしょうがないからな、すると俺が言い寄られた悲しい事実も話さないといけなくなるし。


「その装備や遺留品、今出せますか?」

「インテ出せるか?」


「いえ、あちらから出すにはかなりの時間がかかりますね。紙一枚程度なら数時間で済みますが……画像データでよろしければ今お見せ出来ます」

「インテリジェンスパック1025-εΔ、お願いします」


 ピッという音がなって見知らぬ文字で画面上に目録と写真が投影されていく。それは確かに俺達が王太子から受け取った、追い剥ぎの戦利品の一部だった。


「うーん、これは……アメリカのヴェレル社のマークの付いたレーションですねぇ……マガジンもあっちのやつです」

「茅原さん、この指輪やブレスレットは?」

「これは追い剥ぎが持っていた1~3層のどこかで殺された人たちの遺品です、もし遺族が居るなら届いてほしいと思って名前の入ってるやつだけでも回収してきました」

「……ありがとうございます」


 吉田さんが頭を下げた。

 その一方インテが俺を肩掛けベルトでツンツンとつついてくる。


「チケン様、三層の蜘蛛の巣の話もなさらなくて大丈夫ですか?」

「あっ」


 そうだ、三層の大蜘蛛の巣に大量の明らかにもともと一般人であっただろう人骨があったことも話をする。

 そうか、こいつ黙れって言われてたから黙ってただけで、ずっと俺のことを見ていたのか……。


「それについて画像や証拠品などは?」

「チケン様が良ければ出せますが」

「お前本当に有能だな……出してくれ」


 どことなくドヤ顔をしたインテがまたデータを送信するが、俺のようには見えないように投影していた。確かに思い出したくない画像だからな……。


 それを見た四方さん達は過去一番渋い顔をしていた。明らかに数十人以上いたし、おそらく『残っているのが』それだけということだからだ。

 痕跡の残ってない被害者はもっといる可能性がある。


「これは……後日調査に行かないとダメそうですねぇ……」

「そうね……」

「物証は大量に得られそうですが……やだなぁ……」


 四方さんたちがあの無名の屍達をどうにかしてくれるなら助かる。俺にはどうしてやることも出来なかったからな……。


 そして四層の話をする。とはいえ、ヴィルステッド村の話をしただけだ。ヴィルステッド王都で死んだ人たちを中心に営まれている平和な村があった。


 その村の来歴は国民の謎の大量死から始まったこと、そして毎日悪霊に襲われていたが、俺とグリセルダ、おタヒが倒したことなどだ。

 なお、俺が女装したことは死んでも言わない。


 四方さんたちは俺の胡乱な話をゲーム中のことだと疑わずに聞いてくれた。


「ありがとうございます、貴重な証言助かります」

「よくわからないですがお役に立てたなら良かったです。それで、俺これからどうしたらいいです?」

「これから簡易ですがメディカルチェックを受けていただき、その後休憩していただいて明日の12時ころに再ログインでいかがでしょうか」


 時計を見ると今は15時か……。


「あのー、買い物とかって駄目ですかね?」

「買い物!?」

「あと俺のスマホのチェック」

「スマホは大丈夫です、今お出ししますね!」


 吉田さんが部屋の隅っこで何かをして、俺のスマホを3つ持ってきてくれた。中をチェックすると、恐れていたことが起きていた。


「マジかよ……」


 俺は頭を抱えた。かーちゃんと弟からメッセージが着ていたのだ。しかも、そのうちくると思っていた死の宣告だ。


『ケンイチ! ちょっとあんたの部屋いらないものばっかりじゃない! 今月中に回収しないと全部リサイクルショップに持っていって、レンちゃんの部屋の改造費にするからね!』


『兄ちゃん、母さんがやばい。孫に狂って断捨離始めたから早く帰って荷物回収したほうがいい』


 スマホのカレンダーを見る。今月ってあと5日しか無いじゃねーか……。


「うわぁ……あの、吉田さん今から隣の県の◯◯市ってところまでダッシュで行って帰ってきちゃ駄目ですかね……」

「えっ!? 駄目ですよ! ここからお出しするわけに行かないんです!」


「でも俺の荷物が親に勝手に捨てられそうになってて……」

「それは……弁償するということではどうにか……」


「卒アルとかはどうでもいいんですけど、サ終して再販売の希望のないゲームのグッズとかがですね……」

「あぁ……」


 流石に吉田さんは俺の気持ちを理解してくれているようだ。


 グリセルダとの約束を違える気はないけど、四年強を費やした思い出のアイテムを捨てられるのは辛い……。


 フィギュアもそうなんだがキャラクターデザイナーのイベント限定デザイン画集(再販なし)とか声優さんのサイン入りアクスタとかさあ……。もう手に入らないものが結構あるんだよな……。


 いや、グリセルダとおタヒのためだ、泣く泣く売られたあとに買い戻しに行くか……?


 どうせかーちゃん、近所のハドフに捨てるだろうし、近所に住んでるフォロワー(実家近くのラーメン屋の画像を定期的に上げる相互のフォロワー)がいたはずだし、なんか俺の死亡説とか流れそうだな……。


 売られるものがあまりにも『俺』過ぎるんだよ。


 もう現実なのか夢なのか、グリセルダが実は幻とかだったらあきらめが付くけど、約束はしたし、何かグリセルダもおタヒも非実在だと思えないし……。でもこのかーちゃんからのメッセージは現実だし……。


 かーちゃんの怖いところはなにかに夢中になると他のことが見えなくなることだ。

 とーちゃんも弟もストッパーとして全く頼れないだろう。強いて言うなら弟の嫁がかなり常識人なので、そこに頼るしか無い。


 多分というか確実に『孫』というコンテンツにドハマリしている。間違いない。

 血が争えないのは感じるが、それはそれ、これはこれである。


「もうだめだああああああ!! 俺の人生はおしまいだあああああ!」


 俺はベッドの上で世を儚んで絶叫した。

 四方さんと清野さんが困惑した顔をしている。

 そして、吉田さんがニコニコと嬉しそうにしていた。なんでだよ。




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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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