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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す 1/30完結  作者: 芥部


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第76話 間話7:プリンセスin同人イベント

 都内の巨大イベント会場に、大きな看板が掲げられている。


「ガールズブックフェスティバル」略してガブフェスという。


 イベントは女性向けの同人誌即売会で、この日はゲームジャンルの配置日であり、多くの女性がお目当てのジャンルに向けて歩いている。


 その中に二人組がいた。コスプレも許容されているイベントではあるが、その二人はイベントの雰囲気からすらふんわりと浮き上がっている。


 金髪のウェーブの髪を愛らしくリボンで飾ったピンクのドレスの美少女と、黒いストレートロングと和ロリータドレスを着た藤色の髪飾りをつけた少女が笑顔で一般参加列に並んでいた。


 SNSや匿名掲示板に一瞬で目撃情報が上がる。


『ローレンツェンのプリンセス来てる!』

『マジでヒロインちゃんみたい、かわいい!』

『今日も蘇芳姫と一緒だ、ハオ……』

『今日もやっぱ絨毯かな』

『やばい、プリンセスもいい匂いする……好きになりそう』

『おつきの執事みたいな背広の人がカート引いてるんだよね』

『いつ見てもメイクバッチリで服もハイブラのお嬢様が同人買い漁ってるんだよな』


 彼女たちは一部界隈の有名人だった。まるでゲームのヒロインのような佇まいで、そのゲームのヒロインが描かれた同人誌やグッズを一冊残らず絨毯爆撃で買っていくのである。

 誰も正体を知らず、お金持ちの令嬢であるとか、高貴な身の上の少女であるなどの憶測が流れていた。


 礼儀正しく一般列に並び、開場すると二人のプリンセスは二手に分かれる。金髪のプリンセスはローレンツェン島に。黒髪のプリンセスは蘇芳宮島に。


 金髪の少女はにこやかに微笑み、サークルスペースに座る女性に語りかける。


「まあ、素敵な新刊。夏イベント以降に出した主受け本全てをいただけますか?」

「あっあっあっ、ありがとうございます!」

「前回読んだこちらの本、主人公ちゃんの描写が素晴らしくて感動いたしました。特にリボンの話が……次の本も楽しみにしておりますね」


 まるでバラが咲くような笑顔で金髪の少女は4冊分の2000円を支払い、代わりに有名高級菓子店の包みを差し出した。


「差し入れです、よろしければ原稿のお供にしてくださいね」


 少女はそう言うと、次のスペースに移り、同じように並び、同じように買い、簡潔に感想を述べて差し入れを渡す。それを特定のカップリングの全てのスペースに行っていた。


「あ、あの、その本、私が初めて描いた本で上手くなくて、なので無料配布で……」


 35サークル目に回ったサークルで、金髪の少女はそう言われてお金も差し入れも拒まれそうになる。


「ヒロインが好きだって気持ちが伝わってくる本ですね。読ませていただくお礼に、せめて私の差し入れをもらっていただけませんこと?」


 そう差し出した菓子折りを女性は受け取ると、嬉しそうに頭を下げていた。


 数時間後、すべてのローレンツェンのヒロイン関係カップリングのサークルの本を絨毯爆撃で購入し終えた金髪の少女は、伴の執事を連れて一緒に一般行列に並んでいたSNSで蘇芳姫と呼ばれている少女と合流する。


「戦果はいかが?」

「上々ですわ」


 二人は荷物を執事に預け、高級車に乗り込む。


 数十分後、都内にあるとは思えないほどの広さと立地を持つ瀟洒で広大な邸宅に二人は入っていった。荷物を執事に持たせ、自分たちは広大なリビングへと向かう。


「この国に会社を作って正解だったな」


 金髪の少女は急に喋り方が変わっていた。


「ああ、正解だ。あと数年楽しんだらこの星でもまともに仕事をするか」


 戦利品を並べながら蘇芳姫と呼ばれている黒髪ロングの少女も呟く。並べられているのは、成人向け、全年齢向けを問わず全て『ローレンツェン王国物語』と『蘇芳宮の花嫁』がヒロインとして描かれている同人誌だ。小説も漫画もグッズも問わない。とにかくすべてを買って集めた。


 金髪と黒髪の少女が並んで座ると、確かにコスプレイヤーのような姿を超えてゲーム中のヒロインが現実風の服を着ているかのような雰囲気すらある。


 金髪と黒髪の少女が並んで座ると、一瞬にして目が閉じ意識が失われる。


 代わりに、近くにいた大柄な中年男性が立ち上がった。

 ペラペラとテーブルに上げられた本を開き、満足げに眺める。


「テラ。見よ、この本の数々を」

「素晴らしいコレクションかと」


 テラと呼ばれた清楚な黒髪メガネ美女は丁寧に礼をする。


「これら全てが儂を讃えているのだ」

「誠にその通りです」

「これらは全てコレクションルームに並べて飾っておいてくれ」

「畏まりました」


 テーブルの上に並べられた戦利品を、テラと呼ばれた女性は回収して別室に去っていく。それを見守って男は用意された高級グラスから、プレミア価格で有名なウィスキーを注ぎ口にする。


「この星の文化は面白い。儂の素晴らしさを称える道化として暫くは残しておく。まあ、しかる後に資源に変えるがな」

「それがよろしいかと」


 執事は恭しく頭を下げた。


 ご機嫌で酒を飲む中年男。彼の名をセヴェロ・ヴェレルという。

 海外24カ国に広がる多国籍企業、ヴェレル・コーポレーションを一代で立ち上げた立志伝中の人物だ。だが、彼の過去を誰も知らない。


 そんな人物が、何故か乙女ゲーの同人誌を買い漁っている。

 その理由も、誰も知らない。




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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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