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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第74話 念には念を入れ


「おはよ~? 誰と話してるのよあんた達……」


 おタヒは寝ぼけ眼で俺達を見ている。


「えーと、おタヒ、新しくパーティーメンバーになった俺のカバンことインテさんです。正式名称はインテリジェンスパック 1025……なんだっけ?」


「おタヒ様、初めまして。そしてお早うございます。私はスフォー様にお仕えしていた人工知能搭載型バッグのインテリジェンスパック 1025-εΔ(イプシロンデルタ)、長いのでインテとお呼びくださいませ」


 礼儀正しく挨拶をするインテ。しかし、おタヒは目が半開きのままこちらを凝視している。そりゃ見たこと無いよな、喋るカバン……。


「……カバンが喋ってる?!」


「はい! お喋りならおまかせくださいませ! 私は所有者の皆さまと親睦を深め会話により学習し、皆様の発した一言一句を忘れずメモリーに刻み、反芻し、より良いカバンの使用体験をご提供するべく作られております! なにかお探しのものや運びたいものがございましたらぜひお申し付けください! 現所有者のチケン様さえお許しになりましたら皆様の御無聊を慰めるお話の百や二百は……」


「インテ、ストップ!」


 なるほど、これはスフォーのおっさんが会話を止めさせるわけだわ。喋り始めると止まらないのか、このカバン。


「えー……まだ自己紹介が済んでないですよ~」


「えーじゃないんだよ、えーじゃ! 今日は大変急いでいる。やることが多い。なので、必要なときだけピンポイントで手伝ってくれ。それが有能なカバンってもんだ。いいか、インテ。お前は少なくとも地球上に存在するあらゆるカバンより貴重で高性能だ。お前は天才だ。素晴らしい。空気も読めるカバンだ。俺の言ってる意味がわかるな?」


 俺の説得に、インテはプルプルと震えだした。怒らせたか……?


「……畏まりましたっ……!! 私の有能さをそこまで評価していただけるなんて、インテリジェンスパック冥利に尽きます! では皆様、しばしご歓談をお楽しみください! 私インテはこれより話しかけられるまで黙っております!」


 なんとなくカバンが嬉しそうなのがわかった。嬉しそうなカバンってなんだ? と言われると難しいんだが、そうとしか表現できなかったのだ……。

 撫でるとなんとなく更に嬉しそうな感じになった。具体的には表現できないのだが……。


 その様子をグリセルダとおタヒが眉間にシワを寄せて眺めていた。まさか身近にこんなヤバいのがいるなんて思わないもんな……。


 しかし、上手く頼れば極めて有用だろう。無限に物が入り、勝手に整理整頓されるカバン。最高だ。

 正直リアルでほしい。これがあれば親にフィギュアを捨てられるかもなんて言うしょうもない心配から開放されるのに……。


「……要するに、そのカバンには大量に物が入るし、喋るってことね?」

「そうだな」

「左様でございます!」


 許可してないのに喋りだした。まあこのくらいならいいか……。


「付喪神のようなものかしら……」

「似たようなものかもしれん、しかも超強いやつな」

「えっ……前々から自分は優秀だと思ってましたが、ついに神の領域と呼ばれるなんて……照れますね!」


 駄目だ、インテが喜んでしまっている。付喪神の神のとこしか見てない。


「いいか、インテ。お前が優秀だとバレるとさらわれる可能性がある。だから、俺達以外の前では極力喋らないでくれ。わかったか?」

「畏まりました! ふっ……辛いですね、優秀なカバンというものは……!」


 本当にわかったのか不安だが、とりあえず伝わったのなら良かった……。実際、こいつを盗まれると中に入れてある保存食とかも消えるので詰む。本当に普通のカバンのふりをしてほしい。


「インテ、頼みがあるんだが」

「何でございましょう?」


「俺、今日の夕方か明日の朝か夜かわからんけど、急に消えるか死ぬ可能性がある」

「えっ……嫌です! せっかく素晴らしい最高の御主人様が出来たのに!」


 そういえばそうだったな、という顔をおタヒとグリセルダがしている。もしそうなったときに、インテが言うことを聞かなくなったらまずいので俺は先に言うことを聞かせておくことにした。


「仕方ないんだ、俺、一週間限定でここに来てるだけの普通の人間だから」

「そんな……チケン様のご活躍の素晴らしさはそばで見ている私めが何より存じておりますのに……」


 そういえばそうだったな。一層以降、ずっとこいつを背中に背負って冒険をしてきた。ある意味グリセルダよりも付き合いは深く長い。


「だから、もしそうなったら頼む、インテ。ゲーム内の常識とかわかってるよな?」

「はい、迷宮11層までの基礎知識はインストールされてございます。12層だけは情報がございませんが……」


「マジか、じゃあもし俺が消えたり意識を失った場合、グリセルダとおタヒを助けてやってくれ。もしそうなった場合でも、元の場所に戻れるように土下座して戻ってくるつもりだけど、拒否されたらどうしようもないからさ……。俺、ただのアルバイトだし」


 インテは身じろぎもせず考えていた。


「所有権ほいほい譲渡されるの嫌だよな、ごめんな。でも、お前にしか頼めないんだ」


 これは本当のことだ。スキルとステータスがあるということはこの迷宮はゲーム的な要素がある。そして、おタヒとグリセルダにはその基礎知識が皆無だ。誰かが導かねばならない。


 机上の知識だとしてもないよりはいい。

 それを導けるやつがいるとしたら今はこいつしかいない。何より、危険なPKと思しき人物がさらに先にいることが判明している。


 俺は自分が死んでおタヒとグリセルダには絶対迷宮をクリアしてもらいたいのだ。

 でも、元のスフォーのおっさんから譲渡されて6日でまた持ち主が変わるのは人工知能とはいえ嫌だと思う。だから俺は頭を下げる。


「頼む、俺が見たいんだよ。迷宮をクリアして望みを叶えるグリセルダとおタヒを」

「……畏まりました。インテリジェンスパックの誇りにかけて必ずや」


 俺はホッ息を着いた。少なくとも、これでこいつらが飯で困って飢え死にするとか道に迷うことはなさそうだ。


「ありがとな、インテ」


 本皮っぽそうな飴色に輝くインテの本体を俺は優しく撫でる。よかった。懸念事項が一個解決された。

 戻ってきたらきたで恥ずかしいだろうが、もしそうせずにグリセルダやおタヒが悲惨な結果になるよりはよほどいい。


 グリセルダとおタヒも恐る恐る近寄ってくる。


「インテ嬢、不束者だが宜しく頼む」

「インテ……? 私乙橘皇女おとたちばなのひめみこ。みんなはおタヒって呼ぶわ。わからないこと、教えてくれると嬉しいわ。よろしく頼むわね」

「はいっ! 畏まりました! 精一杯務めさせていただきます!」


 元気いっぱいのインテの返事に俺達はホッとした。少なくともこれで二人が常識がわからず路頭に迷うことはなくなった。


 俺達の冒険はさらに一歩進んだと言ってもいいだろう。しかし、スフォーのおっさんもっと早くインテのこと教えといてくれたら良かったのに……。


 ステータスで時間を見るとまだ朝の6時だった。6時1分になった瞬間、部屋をノックする音がした。


「皆様、目は覚めていらして? 朝食の時間ですわよ。お着替え、ここにおいておきますから。着替えたら食堂にいらしてくださいね」


 村長夫人(王妃殿下)の柔らかい声がした。


「解りました、ありがとうございまーす!」


 俺は大声で返事をして、今日の予定を改めて考え始めた。とりあえず、このドレスみたいなパジャマを卒業していつもの服に戻れる。やったぜ!




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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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