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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第65話 間話4:某社の社員と、主任とヨシュア


「よっしゃあああああ! 主任、連れてきましたよ!」

「ヨシュア偉い!」


 いつもとは違う部屋で、主任とヨシュアが会話している。白い部屋には何もなく、机と椅子があるばかりだ。窓もなく扉もない。どこから入るのかは伺い知れない。


「ふえええええ、ここどこですかぁ!?」


 ヨシュアと主任の前に、うら若いけれど垢抜けない、ラフな服を着た成人女性が涙目を浮かべている。

 彼女はここでの名前を『田中ハルカ』と名乗っていた。もちろん本名は別にある。


 彼女はローレンツェン王国物語を開発した『ヴェレル・ソフトウェア』の社員だ。

 その女性の前で、ヨシュアと主任はいつもとは違う顔を見せている。冷徹な役人の顔だ。


「ここは星間法務庁の分室です。あなたには星間犯罪への関与の容疑がかけられています」

「ちょっと待ってください、私、黙秘権とかありますよね? あとあなた達身分証あるんですか?! 私これでも内務庁の職員ですよ、嘘だったら公人詐称罪で……」


 慌てふためく女性に、スッと身分証を取り出して見せる主任。女性はまじまじと眺め、自前の身分証を上に乗せて真偽チェックをする。すると、確かに公務員である反応があった。


 その上この身分証はエリートの就職先として有名な星間法務庁の職員、それもとんでもなく高位の職員だった。

 普段なら、彼女にはまずお目にかかれないような身分だ。


「えええええ、うそ、私政府のちゃんとした筋のお仕事だって聞きましたよ!?」

「そうですね、ではその政府の人が法律に違反したんでしょうね、可哀想に」

「な、なんの犯罪だっていうんですか!」

「準放棄施設のバックドアの私的な流用です。心当たりがありますね?」


 そう言われると女性はへなへなと崩れ落ちる。心当たりがあったのだろう。


「だってー、大臣がやれって……私みたいな下っ端に断る権利あるわけ無いですよぉ……」


 女性は涙目になって逃げの一手を打つ。しかし、ヨシュアは動じない。


「ちなみにあなたには一万人以上への間接殺人罪、第一級公共施設損壊罪などの嫌疑がかかっています。調べればもっと出るでしょうね。ちなみに、量刑は被害にあった人数×被害者の精神状態、生存状態、などを計算して求刑されます。まあ、少なくとも素で一万年以上の拘禁刑、数千回の疑似報復刑がお待ちしてますよ♡」


 ヨシュアが笑顔で告げると、田中ハルカの顔色は一気に悪くなった。


「な、何も知りません、黙秘します」

「たしかにあなたには黙秘権があります。しかし、一定規模以上の重大犯罪に関しては記憶への関与が許可されていることもお忘れなく。もう一つ、司法取引の準備もあります。その場合、あなたの罪は極めて軽微なもので済むでしょう」

「うう~、司法庁の記憶閲覧機能なんて、そんなものに屈するわけが、こちらにはハイエンドクラスの記憶保護機能が……」


 そう女性が強がると、ヨシュアがニッコリと笑った。


「そうそう、この星には自白剤って薬があるんですって。副作用はすごいみたいだけど、使ってみます?」

「あら、いいわね! どんな副作用かはわからないけど、体が死んでも生き返らせるから大丈夫よ。ちょっと怪しい薬だけど、記憶への関与の範疇なので合法になるでしょうね」

「やだあああああ! そんな得体のしれないもの飲むくらいなら話します! 全部! どんとこい司法取引!」


 ヨシュアは残念そうな顔をして、主任はニッコリと微笑んだ。

 おそらく、これでうまく作業は進むだろう。


「じゃあ、まずこの仕様に沿ってプログラムを改ざんしてもらいます。期限は三時間で」

「三時間?! いくら私が天才とはいえ!」


「じゃあおくすり飲みましょうね~、あ、もちろん経口なんかじゃないですよ、この星の技術を使った原始的な針での血管への注入でーす♡ 資格はあるのでご安心を~! ちくっとしますよー♡」


 ヨシュアは手慣れた様子で令和にしては太めの針の注射器を取り出す。わざわざ太い針の注射器を取り寄せたのだ。もちろん拒否すれば普通に実行に移すつもりで。


「がんばりましゅ……ゆるぢて……」


 ヨシュアの言葉に田中ハルカと言われる女は、涙目になる。

 こんな場末の星の怪しい薬なんて絶対に投与されたくない。言うことを聞く以外の選択肢は彼女には残されていなかった。


 田中ハルカ(仮名)の監視はヨシュアに任せ、主任はセーレのいる部屋に移動する。


「セーレ、テスターの方はどう?」

「……あんまり良くないですね、本体の体調は悪くないはずなんですが魂に上手く接続されてない感じです。ジャミングとかじゃないといいんですが……接続はやり直してみます」


 セーレの後ろには未来的な設備のベッドにテスターこと、茅原ケンイチが眠っているように見える。病院にいるほうがダミーであり、こちらが本体だ。

 しかし、顔色が悪くうなされているように見える。


「プログラマー連れてきてるから、本人に連絡が取れるよう機能を追加させる予定なんだけど大丈夫そうかしら?」

「……多分大丈夫だと思うんですけど、人間の体は水物ですからね……」

「ここ数十年いなかった三層の突破者だし、なんとか上手くいってほしいんだけど……」


 好事魔多しという。まさに今がそれなのだろう。

 二人は不安そうな顔で、横たわる三十歳男性を見つめていた。





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