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第6話 入院


 月曜日になった。

 俺は寮の管理人さんに退去の申請をして、布団とかゲーム機とかは実家に送った。スマホと着替え、それと僅かな現金と交通系ICカードなんかを持って病院に向かった。


 三週間の入院とはいえ、三食出るし、入院中に着用するのは病院で用意してくれている入院着でいいらしい。


 ただ、流石にパンツとか靴下とかは要る。何枚かもっていけば洗濯もできるらしいし多くなくてもいいだろう。至れり尽くせりの設備だ。

 あまり暴食しないならおやつなんかも病院の売店で買ってもいいらしい。


 スマホがあれば時間とかも潰せるだろうしな。


 すこし早めに病院に行った俺を出迎えたのは、治験コーディネーターのクールな女性、四方よもさんだった。


「おはようございます、茅原様。時間の厳守誠にありがとうございます」

「こちらこそ、お世話になります」


 四方さんは営業スマイルを浮かべて一礼してくれた。流石に、50万前後の大金のかかったアルバイトだ。時間くらいなんぼだって守る。

 渋沢さんの顔が50個並ぶ様子を思えば10分前行動なんて余裕だ。


 四方さんの案内に従い、俺は病院の中でだけ使える電子マネー(しかもなんと三万円分チャージされている!)になるリストバンドを受取る。

 これでコインランドリーや売店を利用できること、スマホを使うときは病室の外の談話室でという注意、もちろん禁酒禁煙であることなどが告げられた。


「俺の他にも治験を受ける人っているんですか?」


 四方さんになんとなく気になっていたことを質問してみる。


「今回は茅原様のみとなっております。もしどなたかと面会などのお約束がございましたら、事前に受付の者にお申し付けください」

「わかりました」


 誰にも会う予定はないから大丈夫。

 しかし、あの喜んでた学生受からなかったのか。意外だ。


 売店やコインランドリーのある病棟から、俺が入院する研究棟に移動する。

 ここはセキュリティチェックがあり、受付に先程の身分証を兼ねている電子マネーを見せる必要がある。そして、出るときも同様に勝手に出ることは出来ない。


「大変かと思いますが、自由に動かれますとデータが取れなくなってしまいますので……」

「ですよねえ、気をつけます」


 俺は適当に相槌を打ったが実は全然困らない。

 俺はスマホさえあれば1日36時間分の暇をつぶすことが出来るからだ。


 36時間の内訳はメテクエ16時間分、別のスマホゲー片手間オートで16時間分、合間に見る動画4時間分というところである。そのために常にスマホを3台持っている。

 我ながら恐ろしいほど規則的な生活だ。



 そんな雑談をしながらも四方さんは手慣れた様子で病院を案内し、エントランスのテーブルにつくと俺にお茶を入れてくれた。


「どうぞ。それと何度も書いていただいて申し訳ないのですが、入院同意書とこちらとこちらの書類にサインをお願いします……」


 ここに来るまでにもう10枚以上書類に署名捺印をしているんだが、まだ必要なのか……。でもまあ、これも渋沢の為だ。


「わかりました!」


 俺は爽やかに返事をして、軽やかに署名を書き込んでいく。


「ご協力助かります」


 と四方さんが頭を下げる。普段どんな事言われてるんだろう、大変なんだろうな。

 その後、看護師さんや検査技師さんに引き継ぎが行われ、俺が三週間過ごす個室へと紹介された。


「こちらで三週間過ごしていただきます」

「うわ! 広!」


 これ、普通の入院で使うとしたらめちゃめちゃ高い病室だぞ。

 でかいベッドの周りにクソでかい機械があるのはともかく、冷蔵庫、大型テレビ、ソファ、トイレ、風呂までついている。


 内装も洒落ており、病院特有のあのベッドがなければホテルのスイートと言われても信じられるほどだ。

 なんだか宝くじにあたったみたいな気分だな……。


「スマホの電波は入らないようになっていますのでスマホを使うときはナースステーションの前の談話室でお願いします」

「わかりました! あ、オフラインなら使ってもいいですか?」

「大丈夫ですよ」


 よし、これで余った時間はメテクエができるな。


 初日はそんな感じで終了し、俺は病院の中をウロウロしたりゲームをしたり、実家で見た以来の地上波テレビなんかを物珍しく眺めて終了した。

 病院の飯は薄味だが結構うまい。


 いつも飲んでるエナドリ禁止なのは辛いが、ウォーターサーバーもあるのでそれで水を飲んでその日は大人しく寝た。


 どんな治験が始まるのか、恐いような楽しみなような気分だ。







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