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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第58話 門番のミサキ


 そして、五日目が来た。まだ迷宮の半分にも到達していないが……。

 俺とグリセルダはともかくおタヒ(12歳)に無理をさせられないのでどうしようもない。最悪、荷物だけでも置いていきたいところだ。


「よく寝た……!」


 俺は他の二人より早く起きた。やっぱ懸念事項があるとなあ。

 離れてステータス画面や連絡などを試みてみたがやはり連絡は取れない。

 それでも、今日中に難所のアンデッドナイトだけはどうにか通過したいところだが。


 昨日大分早く寝たおかげでまだ朝の5時だ。今日はアンデッドナイトを通過したら進めるところまで進んでおきたい。最悪おタヒは寝ててもいいだろう。


「チケン、もう起きていたのか」

「たまにはな」

「おふぁよぉ……あさげまだ……?」

「俺よりも寝起きが悪いなおタヒ……」


 今朝は白湯と干し肉、おっさんの鞄の中にあったまだ食えそうなお菓子という変則的なメニューだ。作る時間が惜しかったからだ。


「このお菓子美味しい! 食べたことないけどどうやって作るのかしら」

「バターや小麦粉で作られた焼き菓子だな。こう言うものはどこにでもあるものなのだな、懐かしい」


 おタヒの国は和菓子っぽい菓子はあるけど洋菓子はないんだよな。口に合わなかったらどうしようかと心配していたが好評で良かった。

 しかし、こうなると茶やコーヒーの類が欲しくなるな……。おっさんのカバンに入ってないのが悔やまれる。コーヒーとめちゃめちゃ合いそうな味だ。


 水の在庫をチェックし、荷物をまとめる。と言っても、まとめるほどの荷物は大体俺のカバンに入っている。忘れ物がないかだけチェックして出発することにした。


「チケン、ランタンは大丈夫か?」

「持った」


「よーし、亡霊なんて牛頭くんでボコボコにしてやるわ!」

「おタヒ、お前ターンアンデッド取れないの?」

「スキルツリーに存在しないわ。多分信仰がが違うからじゃないかしら……」

「ヒールとかもないんだ」

「無いわね……」


 まあしょうがないな、その辺は……。

 人それぞれスキルツリーが違うの、面倒くさいな……。制作会社、凝りすぎだよ。


「とりあえずくつを取り戻したい……歩きたいわけじゃないけど裸足は不便だもん」

「そうだなー、逃げる時に逃げられないしまずいよな」

「店でもあればよいのだが……」


 そういいながら歩いていくが、途中コウモリやペッパードラゴンなんかも目撃したが、今日の最大の目的は第四層への到達だ。見なかったことにして進む。


 1時間ほど歩くと、光の柱のある空洞にたどり着いた。


「やあ、いらっしゃい! でもそこの茅原くん、そのランタンは消してくれないかな?」


 俺達を出迎えたのは、光の柱の前に陣取っているうっすらとした黒いモヤだった。スフォーのおっさんのときと同じく、生前の容姿はわからない。しかも二人居る。


 しかも無闇矢鱈にフレンドリーで……あれ?


「お前がアンデッドナイトか? 消すわけねーだろ」


 呆れながら俺がそう言って武器を構えると、グリセルダが俺を手で制した。

 俺の名前を知ってるなんて明らかに怪しいんだが……。


「チケン、少しでいい、消してくれ」

「何でだよ」

「あの声、聞き覚えがある」


 迷わず前に進むグリセルダ。


「危ないって!」

「グリセルダ、危ないわよ!」

「構わぬ、そこで待っていろ」


 そう言うと、平然とした顔でグリセルダは黒いモヤ、亡霊の前に立つ。


「ディーか?」

「よく分かったね、ゼルダ。こっちはエミール」

「……やはりか」

「久々でござるなw」


 グリセルダは大きく息を着いた。ため息ではなさそうな、安堵の空気がある。

 グリセルダ、知り合いにはゼルダって呼ばれてたのか。知らんかった。ゲーム中ではその呼び方なかったもんな。やっぱ某有名ゲームに配慮したんかな……。


「チケン、おタヒ、紹介しよう。これは私の元婚約者、ディートリヒ・フォン・ローレンツェン王太子とその侍従、エミール・フォン・フリースランドだ」


 えっ、あのTS趣味の王子様とあの魔法メガネ!? メガネ女の声してるぞ!?

 俺が驚いていると、おタヒが俺を全力で引っ張って止める。


「チケン、グリセルダ、駄目! その右の亡霊、強すぎる!」

「そうなの?」


「私じゃ勝てないわよ、何あれ、神仏の力を得た人外の者よ、死んでもまだ力があるのよ……ってあれ?」


 おタヒが首を傾げる。


「ねえ、そこの……右の人」

「ええとね、僕は殺していないので……」


 どうにも話がつながっていない。どういうことだ?

 疑問に思っていると、グリセルダがツッコミを入れてくれた。


「ディー、お前は何故いつも過程を省略して結論のみを話すのだ。それでは誰にも伝わるまいと何百回説明した?」


「だって、面倒くさい」


 王太子は心から面倒くさそうだった。


「済まぬな、この王太子は千里眼を持っていて、未来も過去も見ているのだ。結果を知っているから結果だけ話す、そう言う癖がついているのだ……直せと言い続けてはいるのだが」


「そうなんだ。僕は全く悪くないけど一応謝るよ。エミール、僕の可愛い子犬ちゃん。悪いけど伝わるように説明してあげてくれない?」


「王太子様のお望みのままに……デュフフ……」


 メガネの方はなんとかまだ話が通じそうだ。いや、喋り方は嫌なんだけどさ……。

 メガネと王太子が交互に語ったことをまとめるとこうなる。


 メガネはついに女体化魔法を習得して念願の王太子とのデート中にダンジョンに召喚された。しかし、ほぼ装備なしでもこの三層までは余裕で到着したらしい。


 そりゃ未来が見えてりゃ何が出るか準備してから挑めるだろうしな……。メガネもあれで魔法だけなら一流の部類の魔術師だったし。


 ただ、三層出口にはアンデッドナイトがいた。

 アンデッドナイトはいわゆる『七人ミサキ』という怪談に近い存在であり、アンデッドナイトが三層出口から開放されるには誰かを殺さなくてはいけない。アンデッドナイトを滅ぼすと三層出口は封鎖される。


 アンデッドナイトがいる間しか三層出口は開放されないのだ。


 王太子には未来が見えていた。なので、王太子がそのアンデッドナイトを引き受けようと思ったら、メガネもお供して二人で死んだ。

 せっかくなのでグリセルダが来るまで、ここでイチャイチャしていたらしい。業の深いデートだな……。


「というわけなんだ。ゼルダと茅原くん、そして乙橘姫が来るのは解ってたからね。君たちをここで待つことにしたのさ。ほら、乙橘姫、君の荷物はここだよ」


 ぬっとおタヒの眼の前に、おタヒの持っていたくつと文箱が現れる。漆塗りに蒔絵の豪華な箱と、これまた漆塗りで中にキラキラした布や金の模様のある豪華な履物だった。

 ありゃ盗まれるわ。俺みたいなやつでも金目のものにしか見えない。


「私の沓と文箱!」

「中身は全部無事かい?」

「ある! 私の筆も墨も硯も! 紙も!」


 おタヒの目がキラキラ輝いていた。良かったな、回収できて。しかし、あれ? 盗まれたやつだよな?

 それに俺は本名をここで名乗っていない。何故俺の本名を?


「ああ、エミール、あの箱のことも」

「かしこまってござるw」


 女の声でそう言う喋り方なの、何か脳がおかしくなりそうだ。

 メガネ、喋り方さえ直せば本当にイケメンだったのにな……。



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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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