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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第56話 温泉の効能



 俺達は数十分歩いて、三層出口から一番近い水場についた。


 相変わらずこのダンジョン、水場だけは整備されてて一定距離に置かれているのが助かる。

 そんな親切なら通報機能とかも入れてほしいもんだが。


 この手のゲームにはたまに『運営に通報』する機能が実装されてるやつがある。PKもできる治安悪目のゲームなら、尚更そう言う通報機能はあったほうがいいと思うんだが……。


 野営の準備をしながらステータス画面を見たけど、やっぱりそう言う機能はなかった。


 その時ティロン、という音がして俺の上に『水辺の開拓者』という文字が現れた。器用さ+10されている。この称号は変わるたびにステータスも変わる。器用さはずっと欲しいステータスだから、永遠に消えないでいてほしいが……難しいだろうな。


 グリセルダが岩だらけの周辺を整地し、火を用意し、俺が有り物の素材で夕食を作る。

とは言え、乾燥したヘビ肉、固形の蜂蜜、塩、コショウ味の乾燥肉。今あるのはこれだけだ。


 乾燥した肉をゆっくり水で戻してスープにしていく。沸騰しすぎないように弱火でじっくり煮込むとそれでもいい匂いがしてくる。塩と胡椒風味のヘビのスープだが、今までの塩単体のスープに比べれば大分まともだろう。


「あー、お腹が空く匂いがする……」

「そうだな、料理らしい匂いだ」

「あと酒とか醤油とかワインとかカレールーとか野菜があるとまともな味になりそうなんだけどな……」


 料理はあまりしない俺でもカレーくらいは出来る。


「チケン、料理スキルとかないの? あったら取りなさいよ」

「ねえよそんなもん……あってもお前と違ってスキルポイント余ってるわけじゃないからな」

「チケンは料理の才能があるぞ、スキルが有るならとるがいい」

「ないない、こんなんで料理できるとか言ったらガチ勢に鼻で爆笑されるわ」


 おタヒとグリセルダの無茶振りを適当に流す。

 俺は自炊をすると言ってもガチャ代のための節約か、好きなメニューをコスパよく沢山食べたいときくらいにしかやらない。だから、作れるメニューが限定的だ。

 そして、同じメニューを三日くらいなら平気でリピートしているのだ。そんなやつに料理の才能なんてあるわけがない。


「えー、料理スキルとってお菓子作ってほしいのに」

「私は肉の赤ワイン煮込みが好きだ」

「材料がないからな、そもそも……」


 そんな雑談をしていると、ふわりと異臭がする。すっかり嗅ぎ慣れた、かび臭い洞窟のにおいではない、硫黄の匂いだ。


「……なんで硫黄の匂いが?」

「あ、するわね……あっちから」


 おタヒが指さしたの方向は行き止まりだ。


「……何か触るとあったけえな」


 行き止まりの壁はそこはかとなく暖かかった。拳でコツコツと叩いてみると空洞のような音がする。


「お、もしかして四層への新たなルートか……?」


 もしそうなら危険なアンデッドナイトをスルーして四層に向かうことができる。そう思っているとおタヒが異議を唱えた。


「ちょっと、まだ私の荷物回収してないわよ!」

「まあそうだけど、でも死ぬ可能性よりはよくないか?」

「それはそうだけど……」


 後ろから不審な顔をしたグリセルダも来た。


「行き先を決めるのは、その岩の向こうが何かを確かめてからではないか?」

「それもそうだな」


 明らかに空洞がある感じなのだ。ナイフで叩いて回った感じ、2メートル四方の空洞があるようだ。


「グリセルダ、岩どうにか出来る?」

「ふむ……」


 グリセルダが剣先で壁をツンツンと真面目な顔をしてつついている。その様子が普段の力強い剣技からは想像できず、ギャップがとても可愛らしい。本人には言わない。


「この感じなら行けそうだな、よし、チケン、おタヒ、後ろに下がっているがいい」

「はーい」

「了解~」


 グリセルダは数秒意識を集中させると、岩を一閃する。すると、岩はいくつかの塊に分割され、中から一気に煙……いや、湯気が溢れ出てきた!


 岩で隠されていたのは温泉だった。一気に湯気が立ち上り、硫黄の匂いがあたりを包み込む。薄っすらと白いお湯が、そこに鎮座していた。


「うわっ、温泉だ! 超ラッキーじゃん!」

「やったー! お風呂よー!」

「え? 風呂……?」


 俺とおタヒが喜ぶなか、グリセルダだけが飲み込めない顔をしていた。

 こわごわ触ってみると、これは程よい温度だった。一応やべえ温泉だったら困るから鑑定もしておくか。


『硫黄泉/ 普通の温泉。 効能:美肌、疲労回復』


「入るだけで何か美肌になったり疲労回復するみたいだぞ、入っとけば?」

「私入る! ここにきてから一回もお風呂に入ってないのよ!」

「私は……」


 見慣れぬ温泉に困惑するグリセルダ。そういやローレンツェンって平野の国で、山とかそう言うのあんまりなかったもんな、温泉文化もあまりなさそうだ……。


「うーん、でもこの先風呂入れる可能性、多分あんまりないぞ。今のうち入っとけば?」

「うーむ、そう言われると心が動くな……」


「ああ、俺だったら見張りしとくから……二人が着替えるまでの足止めくらいなら出来ると思うぞ、結界ももちろん貼るし」


「グリセルダも入りましょうよ! 牛頭ごずくんも見張ってるから大丈夫! 風呂! 風呂よ! 温泉があるなら絶対に入る、これはあずまの国の人間のさがなのよ! でも一人で入ったことないから一緒に入って!」


 おタヒの目は久々の風呂という事実にガンギマリになっており、ギラついて怖い。グリセルダがおタヒにビビっているのを見るのは初めてだ。これは様々な意味で健康に良いイベントである。


 こいつ一人で風呂に入れないのかよ、と思ったけど、こいつガチプリンセスだからずっと乳母や女官と風呂に入ってたんだったな……しょうがないか。


 俺はカバンの中から石鹸と、追加の手ぬぐいを取り出し二人に渡した。おっさんのカバン、本当に色々入ってんな。

 探しても出てこないときもあるのに、本当に必要な時はスッと出てくる。カバン自体になにか魔法がかかっているのかも知れない。


「じゃあ俺は見張っとくからな、入ってきてくれ」


 そう言って、俺はクールに立ち上がり結界を張る。

 ついでにさっきの肉煮込みを見張りつつ背を向けた。後ろから水音や何かが聞こえてくる気もするが、おタヒが張った防音結界がいい仕事をしておりあまりガールズトークは聞こえてこない。


 そして、その結界の中にゆるキャラの式神が居る。

 場所変わってくれねえかな……無理か。


 肉も煮込み終わり、明日の準備を整えているとすっかり身だしなみを整え終えた二人が帰ってきた。髪の毛も乾いていた。


 ほぼ虚無の温泉イベントにがっかりしたのは否めないが、顔に出すわけにはいかなかった。まあ、二人から石鹸のいい匂いがするので良し。


「お風呂最高だった! グリセルダがね、髪の毛乾かす魔法もってるの、私も使いたい!」

「うむ、長髪だと髪の手入れが大変だからな……」


 あー、確かに。そういう身だしなみにまつわる魔法ってあると便利そうだな。女の人の髪乾かすの大変そうだもんな。俺はガーッと洗ってタオルで拭くだけで充分だが……。


 グリセルダもおタヒも髪の毛長いからなおさらだろうな。


「まあいいや、水でも飲んで飯を食えよ」

「やったー!」

「入浴後に飲むとただの水でも美味に感じるものだな」


 本当は牛乳だのビールだのカルピスだのをお出しできればいいんだが、水しかない。あるだけマシか。

 風呂上がりはやっぱ何か炭酸系のやつかキンキンに冷えた飲み物欲しいよなあ。



お盆が終わりましたので1日1回投稿にします

読んでくれた皆様ありがとうございました~!

しばらく毎日投稿する予定です(毎日22時ころ予定)

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