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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第54話 おタヒの回心


 しかし、激しく動いて戦ったせいか『状態異常:口渇』が発生している。

 少し歩いた場所に平らな場所があるのでそこで休憩を取ることにした。


「流石に動きまくると疲れたな……」

「年なの?」


 おタヒはシンプルに攻撃力のあることを言う。お前、それが死因になること何度もあっただろ……と思ったが、俺は言葉を飲み込んだ。


「この体は18歳くらいのはずだから違うな。単純に動き回って疲れたんだよ」

「怖いからあんまり見てなかった……そんなに動いていたのね」


「そうなんですよ、危ないから戦闘中袖で顔隠したままは止めてくれな。何かあったとき逃げられねえだろ」

「うー……」


「今回はチケンが一番動いていたからな、多少の休憩もやむを得ぬだろう。気にするな」


 グリセルダの言葉が嬉しい。疲れてるときの優しい言葉が糖分のように染み渡る。塩分以外もたまには悪くはない。

 おタヒの言葉は糖分でも塩分でもない。例えるならサルミアッキか唐辛子だ。俺の好みの味ではない。


 ひとまず水を飲んで状態異常は回復して、一息つく。


「そういや、今のうちに三層ボスについておさらいするぞ」

「そうだな……」

「何が居るの?」


 モンスター図鑑と、地図にある書き込みによれば四層の入口を守るボスは固定でアンデッドナイトらしい。

 どのアンデッドかは不明、強さも大きさも魔法耐久力も不明。図鑑にはこう書いてある。


『アンデッドナイト/ 四層入口(A)を護るボスモンスター。遭遇した時によって姿形を変えるため詳細は不明。パーティーで挑む場合、死者が出る想定で挑むこと』


 ……改めて読んだけどやっぱこえーよ。なんでパーティーだと死ぬのか、そして単騎で挑んだ場合どうなるのかが書いていない。他のモンスターは割と詳しく書いてあるのに……。


「ちょっと何よこれ、別の入口ないの!?」

「死者が出るのは宜しく無いな」

「うーん………」


 俺はまた地図を見る。火山エリアと洞窟エリアをつなぐ細い通路があるからどうにかそこを通じて火山エリアに行って、そこから四層の『氷山地帯』に行くことも出来なくはない。


「お前ら、火山の中で生き残れる自信ある? なんかマグマバードとかいう溶岩を飛ばしてくる鬼畜な鳥とか居るらしいけど」

「無理だな」

「無理ね」


 皆さん諦めが早い。


「それを乗り越えても、火山地帯からは氷山地帯にしかつながってない。氷山地帯は敵は一匹もいないらしいが、それは普通に一匹も生存できない環境だからだろうな。標高数千メートルの、ガチの登山家でも厳しいレベルの山を超えないといけないみたいだぞ」


「氷山て氷の山? それならいけそうじゃない?」


 箱入りのお姫様は冬山登山の厳しさをご存知ではないようだ。


「そうだけど、常に吹雪いてて、目を開ければまつげが凍って、普通に息をするだけで肺が凍るレベルの寒さらしいぞ。装備がないだろ、装備が。しかもその山って富士山よりたけーんだぞ」


 おタヒの世界にも何故か富士山はある。結構高い山だ。なのでそれを聞いたおタヒは諦めた顔になった。


「……無理そうね」

「分かってくれて何より」


「それに、時間がないのだろう」

「そうなんだよなぁ……。まあ、何か戻れないかもって気もしてきたけど」

「……」


 グリセルダは何かをいいかけて、言わなかった。


「でも、最後まで到達する努力はするよ」

「そうしてくれると助かる」


 こいつら、戦闘力あっても生活力が微妙なんだよな……本当に、ただのゲームなら良かったんだが、本格的すぎて水分や飯を食わないと動けなくなる。

 ただのゲームだったなら、俺は頑張れよーと手を振ってログアウトできるのだが……。


 グリセルダは士官学校に通っていたから炊事以外の自分の身の回りのことは出来るだろうけど、特におタヒが無理だろうな。かといって、グリセルダがおタヒを見捨てるとも思えないので俺はできるだけ一緒にいてやりたい。


「そうだ、チケン。あのランタンは少しは効果がないのだろうか」

「ああ、浄火のランタン!」


 ずっとただのチルい雰囲気の照明としてしか使ってなかったが、元々は悪霊を近づけない効果があると言う聖なる炎だ。


「なにそれ、見せて!」


 おタヒの好奇心が炸裂したので、逆らわずにランタンを出す。つけると、何となくその場に清浄な空気が漂い、青い光に包まれる。何度つけてもいい雰囲気だ。


「えええええ、ちょっと、それ、とんでもない代物よ! どこでそんなの手に入れたのよ!」

「前も話したけど、亡霊のおっさんにカブトムシあげたら貰った」

「私も欲しい!」

「やらねーよ、最下層に行ったら生き返ったおっさんに返すんだからな」


「聖なる炎の灯りってあらゆる不浄を焼き尽くすの。それさえあれば先帝の霊に取り憑かれて死ななくてもすんだのに……欲しすぎる……」


 そういえばそんなエピソードあったな。

 庭に出る先帝(おタヒの兄に殺された)の怨念を払えと命じられたおタヒが、舐めてかかって先帝の怨霊に「ざーこ♡ ざーこ♡」って煽りまくったから、兄君からターゲットが移って激怒超発狂モードになった先帝の怨霊におタヒが呪われて死に、兄は救われてヒロインと結ばれ幸せに暮らしたとかいう作中屈指のポンコツエピソードが……。


「お前、人のことすぐ雑魚とかいうの、直せよ。また死ぬぞ」

「うっ……別にいいでしょ、事実なんだし……」

「なんだ、その雑魚とかいうのは?」

「グリセルダも聞きたいか?」

「聞いていいなら」

「よーし、あれはおタヒの兄が怨霊にとりつかれて……」

「やめてー!! もう言わない! 直すからやめてー!!」


 おタヒが顔真っ赤にして全力で絶叫している。こいつにも人並みの羞恥心とかあったんだな。グリセルダも面白そうに見ている。可愛い。

 たまにはこう言うのもいいだろう。反省してくれればなおいいが。


「まあいい。で、この炎って、ランタンから出して使えるのか?」

「どれどれ試してみるか……」


 友達と付き合いでキャンプっぽいものに行った時にいじった以来だな……と思いつつ、そんなに難しくはなかった。ロックを外してツタに火を移して見ようとしたが出来なかった。


「普通のものには火がつかないのよ、それ。私の荷物の中にある紙なら大丈夫だと思うんだけど……」

「まずその荷物を取り戻しに三層は超えないといけないんだよな……」


 うーん、問題がループしている。

 おタヒの履物は諦めるにしても、結局荷物は回収したいところだな。


「しゃーない、アンデッドナイトは倒すか」

「今何時かわかるか、チケン?」

「えーと、18時かな。相変わらずログアウトも表示されないしなんの通知もないな……」


「ふむ、どうせ洞窟は昼夜がわからぬ。もっと安全そうな場所まで進んで野営をしてはどうだ?」

「そうだな。そして明日はアンデッドナイトとご対面だ。会いたくねえなあ」

「不死の武人なんて私も見たくないわ……」

「複数名で戦うと戦死者が出るというのもな……」


 不安なことだらけだが、三層出口と蜘蛛の間の中間にあるちょうど良さそうな水場に向かうことで意見が一致した。



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