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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第52話 ドナドナ



 出発するにしても、おタヒをどう移動させるか考えなくてはいけない。おタヒは裸足で履物がない。


「なんかおっさんの予備の靴とかはいってねえかな、もう一回カバン調べるか……」

「流石に、くつまで盗まれるなんてね……」

「金になるなら何でも盗むやつもいるだろうからな……」

「漆塗りのお気に入りだったのに……」


 おタヒはしょんぼりしていた。グリセルダが抱えていくのもありだが、戦いになったとき下ろす時間が致命傷になる可能性もある。

 俺がおんぶでもできればよかったんだが、今の俺はおタヒよりも小さい。無理だ。


 さて、どうしたものか。


 すると、後ろで何かがチラッチラッとこちらを見ている。さっきの式神のゆるキャラ牛頭天王だ。そして、気づいてほしそうにおタヒを見つめていた。

 あ、なるほど。


「おタヒ、その式神に運んでもらうのはどうだ?」

「その手があったわね!」


 そう言うと、ゆるキャラの仏像はゆるキャラの牛に変化し、上にはおタヒが座れそうな台座もあった。牛頭天王はウンウンと頭を上下に揺らして俺に頬ずりをした。


「よしよし、お前賢いなー」


 俺がそう言って撫でると牛頭天王は嬉しそうに蹄を鳴らした。昔実家で飼っていた犬のマシュマロ(命名:母)のようで可愛い。牛と言っても仔牛ほどのサイズで、細い道も通れそうな感じだ。


「よーし、とりあえずそろそろ出発するか! 謎の霊も怖いしな……」

「そうだな、これ以上おかしくなられては困る」


「民草ってさっきのチケンみたいな感じなのが普通なの?」

「俺が言うのも何だけど、普通ではないかなあ……」


 悲しい方の意味で普通ではないな、さっきの俺は。

 かっこいい意味で普通じゃなくありたかったぜ……。


 水を再度補給し俺達は出発した。意外に牛頭天王くんはキビキビ動いている。あれなら大丈夫そうだな。

 なんとなくドナドナを思い出す。

 引いているのが仔牛で、載せられているのはおタヒだが。


 数十分歩いたが、小さなヘビや虫、コウモリなんかがいただけである。大して経験値にもならないし食料も足りているので無駄な殺生はせず適当に追い払いながら進んだ。


 地図によるとこの先には大きく空間が開けた場所があるらしいので数十メートル前で一旦止まる。

 耳を澄ますと何かわずかに軋むような音が聞こえた。経験上、こう言う場所には大物がいることが多い。


「ちょっと待ってろ、様子を見てくる」

「頼む」


 隠密行動を久しぶりに使い、俺は空洞の中を覗き込む。しかし、他の場所に比べて異様に暗い。俺はエリア鑑定を使用する。


『↑ジャイアントスパイダーの巣』


 上を向くと明らか熊ぐらいのデカさのある蜘蛛が巣らしきものを張っているのが見えた。しかも一匹ではなく、数匹おり、更にコウモリや虫がかなりの数引っかかっていた。


 俺もあれに引っかかったら逃げられんだろうな、ある意味俺の天敵かもしれん。

 俺は元の場所に戻って報告する。


「うーん、この先、でけぇ蜘蛛の巣があるっぽい」

「どのくらいの大きさなの?」

「天井から数匹ぶら下がってたが蜘蛛1匹が熊よりでかい」

「うーん……」


 俺達の目的は最下層に辿り着くことであり、モンスター退治ではない。

 迂回しようと思ったが、迂回するととんでもなく遠くなる。地図を信じるなら更に半日かかるだろう。


「ううむ、面倒な場所にいるものだな、しかも上方か……」

「蜘蛛きらぁい……」


 まあ、蜘蛛が好きって人はそう多くないだろうな。俺も別に叫ぶほど嫌いというわけでもないが好きじゃないし。


「蜘蛛本体よりも、俺は蜘蛛の巣のほうが厄介だと思うんだよな。俺、あれは流石にかいくぐって避けられないし」

「じゃあ、蜘蛛の糸だけ燃やしてみたら? 私まだスキルポイント80以上余ってるわ」


「え、そんなに? おタヒ、ちなみにレベルおいくつ?」

「85」


「……グリセルダは?」

「72だな」


「…………あ、はい」


 俺より圧倒的に強かった。俺? まだ21だよ……ちなみに俺のレベルキャップは70で今のレベルは21である。レベルカンストしてもグリセルダに追いつけないということだ。

 いや、ある意味美味しいのか? いや駄目だ。ここで性癖を出すな、俺。


「チケンは?」

「21だよ……俺はな、冴えないサラリーマンだったんだよ。切った張ったなんてしたことがないんだよ……俺はお前らと違って何のスキルもない一般人だからな、マジで……」


 言い訳がましいことの一つや二つ、俺だって言いたいときはある。


「戦い慣れているから私より上のレベルだと思っていた」

「場馴れしてるから冒険の達人か何かかと思ってたわ」


 優しい言葉をもらうがちょっと悲しい。生まれ持った才能とかの違いだろうか……。

 ゲームシステムが俺の知ってるものに近いから最適化出来た、というのもあるのだが……でもちょっとレベル離れすぎてない……?


「言い忘れてたけど、おタヒ。俺、三十路のおっさんだからな中身。このガワは攻略のためにハーフリングの女にしただけで……」


「ああ、確かに声が中年よね。道理で見た目にそぐわぬ声だと思っていたわ。見た目は可愛い子どもなのに」


 おタヒの言葉がグサグサ刺さる。事実なので何も言い返せねぇ。

 正論でも言われて嬉しいやつと嬉しくないやつがある。年齢はあんまり嬉しくない。まだ俺の修練が足りないのかもしれんな。


「うーむ、ならばチケンのレベルとやらを上げる必要がありそうだ。やはり蜘蛛を倒そう。そのほうが近道であろうしな」

「はい……未熟ですみません……」

「蜘蛛の糸対策が必要だな」

「糸でしょ、燃えないかしら?」


「蜘蛛の糸ってあれだろ? タンパク質で出来てるから燃えるっていうか炎にあたった部分が溶けそうだな」

「普通に剣で斬るよりは良さそうだ」


 しかしそれよりも問題があった。


「でもさ、見えねえんだよ、糸が……入口から中を見てみろ、入口なら大丈夫だから、音を立てないようにな」


 二人はそろそろと入口を近づき中を覗き見る。確かに蜘蛛が上に数匹鎮座し、そしてその周辺には何匹ものコウモリや虫が空中に浮いているかのように見えた。


「全然糸が見えないわね……」

「そうだな、どうしたものか……」


「魔法は効くのか?」

「図鑑見てみるか」


『ギガントケイブスパイダー/ 洞窟に住む巨大な蜘蛛。透明の糸で巣を張り獲物を絡め取る。糸は高級な織物にすることが出来る。耐魔力:A』


 うーん……。戦いづれぇ~……。魔法効かねえのかよ……。


「俺、ナイフじゃなくて弓矢にすればよかったな……」

「あれは付け焼き刃で出来る技術じゃなかろう」

「クリティカルあるから当てるには当てられると思うんだが。そのための幸運スキルだしな」

「無いものを嘆いてもどうしようもない。迂回も視野にいれるか?」

「糸さえ見えればなあ~……」


 蜘蛛の糸は鑑定スキルの対象外だし、エリア鑑定では大まかすぎて参考にならない。せめて、糸に色でもついていればマシなのだが……できれば蛍光色とかで。


「じっくり時間かけられればいいんだが、俺の制限時間があるんだよな」

「えっ、何よそれ!」

「そうであったな……」

「俺、ここに一週間居るだけの仕事って言っただろ。もう4日目なんだよ。7日目にここから急に消えるかもしれん……何かの事故で残る可能性もあるが」


 そう、もう4日目の午後なのだ。あと3日しか無いし、その3日も職員たちの時間を考えると朝に強制ログアウトされて終わり、と言う可能性もある。

 実質2日しかないかもしれん。


 そう思うと、ここで迂回するのも悪手だ。せめて、次の層か次の次の層くらいまでは二人がたどり着くのを見守って、もう一回土下座してログインさせてもらうとかは出来るだろうか……。


 俺はなけなしの頭をフル回転させて悩んだ。しかし、何も思いつかなかった。



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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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