第50話 生まれ持ったステータス
俺はおタヒに問う。
「あのさ、そのうち片方は、茶褐色の短い髪で、グリセルダよりデカくて、白い肌の筋骨隆々の男じゃなかった?」
「そうよ、あなた達の知り合い?」
「今日、ここに来る前に追い剥ぎに殺された死体が有ったっていったろ。それだよ」
「……じゃあ、その片方が追い剥ぎ。もしくは両方とも追い剥ぎで、仲違いしただけなのかもね」
なるほど、あのおっさんも加害者であり被害者だったというわけか。
グリセルダが考え込む。
「しかし、私のように、何度も死んだものが複数いるとはな」
「私もそれは思った……偶然とは思えないのよね。しかも、聖堂で見た女も草原で見た女も身なりは良かったわ」
「あー。そういや、俺達も迷宮でどこかの令嬢の遺品っぽい手帳見つけたもんな……」
「……」
グリセルダとおタヒは厳しい顔をする。
「……私達は、もしかして運が良かった方なのかも知れぬな」
「そうね……少なくともまだ生きているもの」
「明らかに男っぽいゾンビとかもいたから、なんか何人もまとめてダンジョンに放り込まれてるのかな」
グリセルダが俺に視線を向ける。
「まだ、連絡はつかぬのか?」
「……まだ来ないな。清野さーん、吉田さーん、いませんかー? ……やっぱいないな」
「もしかすると、チケンも私達と同じなのかしら?」
「いや、それはないと思う……多分。だってそれならただ治験ですって最初からVR機器に叩き込めばいいだろ」
俺もちょっとはその可能性は考えたけど、それならあの最初の富士山の見えた簡易テストの時に叩き込んで置けばいい気もするし、わざわざ俺に金をかけてVRに慣れさせて高い部屋で高い飯を食わせる意味がない。
あの病室、暇な時に検索したら特別室で一泊25万する部屋だった。
真っ当な人間なら殺すために叩き込む人間をそんな部屋に入れてお金を無駄にしたりしないと思う。
「まあ、考えてもわかんないし、癪だけど最下層を目指すしか無いのかしらね……」
「私もそう思う」
「途中で何かの手がかりもあるかも知れないしな」
時間を見るとまだ13時だった。まだ、少しは動いておきたい。
「そういえばおタヒ、スキルとかとったか?」
「なにそれ」
やっぱりそうか……。グリセルダもそうだが元のスペックが高いから、スキルやステを上げなくてもここまで来れちゃうんだなあ……。
俺なんてスキルを死ぬほど考えてからいっぱいレベリングしてスタートしたのに、羨ましい。
とりあえず、グリセルダと同様に、ステータスとスキルの説明をするとあっさり理解してもらえた。良かった。
「うーん、スキルねえ……この魔法って言うやつ使おうかな。この世界で言う術なのよね? でも、杖がないと使用不可ってある……」
「杖、あるぞ」
「えっ、あるの? 杖ってどんな奴? 大師様の錫杖みたいなやつ?」
こいつの杖のイメージすげー古めかしいな……。うちのばあちゃんでもそんな想像しないぞ。
俺はカバンからスフォーのおっさんから貰った杖を取り出した。杖は40センチほどで細く握りやすく、キラキラとした虹色の宝石が頂上についており、蔓のような植物を模した銀色の装飾が美しい。
「ほい、一応最下層に着いたら返すつもりだから、壊すなよ」
「なにこれすっごおおおおおおい! 握ってるだけで力が回復するのが分かる!」
おタヒが興奮で目をギラギラさせている。やっぱこれ強すぎるよなあ。
「ねえねえねえねえ! 本当にこれ、私使っていいの!? 国宝に値するような品よ、これ! 帝が持ってた宝玉よりも強いわ!」
「いいよ、俺使えねーもん。まあ、グリセルダが魔力使い果たしたらちょっと握らせてやってほしいくらいかな」
そう、俺の持ってるスキルで今一番MPを使うのがエリア鑑定と【視界拡張】の10くらいで、あとはほとんど自然回復で追いつくようなスキルか、パッシブスキルしか持っていない。グリセルダはわからないが、そんな長期戦になるようなことはしないので休み休み行けば賄えるだろう。
「解ったわ! 最下層に着くまでは持ってていいのよね!?」
ハチャメチャに興奮している。舐めだしそうな勢いで頬ずりをして、舐めるように石を眺め、装飾を指でなぞる。
「う、うん……で、何のスキルを取るんだ?」
「うーん、取ろうと思えばツリー1個なら全部取れそうね、前提はほとんど満たしてるわ」
「チートの塊じゃねーか……」
「火と水と風と土と他の系統があるのね。でもどれがどういう使い勝手なのか、全然わからないわね……」
「自分でボコボコに魔法で敵を倒したいのか、サポートしたいのかにもよるな。火はここでは強そうだが可燃物の多い場所だと危険かもしれんし」
「うーん……自分でやるのは嫌かな……私一応斎王だし……」
詳しく話を聞くと、式神がやるのは自衛のためなら自分の手じゃないのでOK、自分で魔法を撃って殺すのはNGらしい。異世界には異世界なりのルールがあるんだな……
「やっぱり荒事は下々にお任せして私は後ろで見守るのがいいと思うのよね」
うーん、上から目線。いいな、味わい深い……。
流石に、言われたグリセルダは微妙そうな顔をしている。しかし子供相手に本気になるのもアホらしいなって思ってるのかな。王者の余裕だ。
「おタヒ、言っておくがここではお前も下々だからな」
「えー!」
「えーじゃないんだよ、えーじゃ! ここでは皆等しく魂の牢獄の囚人なんだぞ。働かないガキなんか面倒見きれないから置いてくし杖も返してもらうぞ!」
そこまで言われてしょんぼりしたおタヒは、ムスッとした顔で了解してくれた。
ご理解いただけて何よりである。
しかし、適性や不適正などもあるため、ステ、スキル振りは自由にしてもらった。
やはり、年齢のせいなのか、生まれのせいなのか、素早さや力ななんかは5以上に触れなかったようだ。これは結構危険だ。
現状HP=体力はレベルの他に力1:素早さ1:器用さ0.1の比率で影響されるっぽいことがキャラメイクの時になんとなく推測できている。
俺は素早さをカンストしているのでグリセルダには劣るがまあまあHPがある。しかし、年齢とステータスの影響でおタヒのHPは俺に比べても四分の一ほどしか無い。
つまり、俺やグリセルダなら当たっても死なないカスダメでもこいつは死ぬ可能性があるのだ。
「うーん、おタヒの体力低くてやべえな」
「その数値はな……隠密行動とかスキルツリーに無いか?」
「無いわね……」
隠密鼓動があれば常に隠れてもらっていて、いざというときだけ大技を放ってもらうことも出来そうなのだが……。
「正直なことを言うわね。あなた達の最適解は私を置いて最下層に向かうことだと思うの。まあ、私は死んだ回数十回が十一回になるくらいよ。十二回目にならないうちに到達したいけどね」
おタヒの顔は明らかに装った強気だった。




