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無職のおっさん、幼女にTSして悪役令嬢とダンジョン最下層を目指す  作者: 芥部


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第45話 新たな出会い


 暫く二人で考えたが、やはり洞窟方面に行くことにした。

 どちらにせよ追い剥ぎも最下層を目指す人間なのだとしたらどこかでかち合う可能性もある。ならば、どこかで対決しないといけない。

 一番いいのは火山で勝手に野垂れ死んでくれている事だが。


「よし、充分に気をつけて行くか……いや、どう気をつけるのかもわからんが」

「まず気がつくかどうかという問題だからな……」


 悩んでいてもしょうがないので、俺とグリセルダは三層に突入する決意を固める。


「よし、行くか!」


 と触ろうとした時に、グリセルダがヒョイと俺を持ち上げる。


「ちょ」


 持ち上げられる猫のように俺はぷらんとぶら下げられている。


「待て、チケン。同時に触ったとて同じ場所に出没できるという可能性もなかろう?」

「ああ。確かに……」


 俺もグリセルダも各層の移動は一人でしか試していない。確かにその可能性もあるな。


「なので、こうして行こう」


 グリセルダは器用に片腕で俺を抱き上げ、もう片手にはショートソードを持っている。


「とりあえずこうすればはぐれることも無かろうし、襲撃を受けても迎撃位は出来るだろう」

「ふぁい……」


 見るものが見れば親が子を抱き上げているかのように見えるかも知れない。サイズ差はたしかにそんな感じだ。

 俺は推しに優しく抱き上げられている。

 もうそれだけで脳が破壊されてしまう。助けてほしいけど助けないで欲しい。

 もし死ぬなら今が良い。今なら脳溢血とかで即死しても悔やまない。

 人生最良の瞬間だと思う。

 

「死ぬなら今が一番かもしれん」

「何を言っているのだ、チケン!?」


「……いや、なんでもないです、続けて」

「少し休んだほうが良いのではないか? 同郷の者の死が堪えたのか?」

「いやそう言うのじゃないんで……」


 グリセルダの角度からは俺の顔が見えないはずだ。多分今鏡を見たらすごいニヤけた酷い顔になっていると思う。


「喋り方までおかしくなっているが、本当に大丈夫か?」

「本当に大丈夫なので……」


 俺はこっそり【視界拡張(ワイドビュー)】を発動させる。うんうん、グリセルダが困惑の顔してる。可愛い。そして自分の顔も目に入る。下心でニヤニヤした幼女の顔があった。

 自分の顔ながらキモい。最悪だ。


「急に喋り方が変わって不気味だが本当に大丈夫か、頭は」

「大丈夫です」


 おほーーーーー! やめてくれ、そんな俺のことを不気味だなんて正論を……。

 俺は塩分愛好家なので推しに抱き上げられて気持ち悪がられる塩対応なんてご褒美が過ぎる。心の高血圧で発狂しそうだ。


 どうしよう、冷静に、冷静に。うん、無理。冷静になれない。

 こんなことならお経の一つでも読めるようになっておけばよかった。

 精神統一できるように。


 服越しにわずかに感じるグリセルダの温かみや、間近で感じる息遣いが俺を狂わせていく。早く移動するか殺すかしてくれ。


「まあ良い、行くぞ」

「ふぁい……」



 夢見心地の俺を訝しみながら、グリセルダは光の柱に足を踏み入れた。


 一瞬の後俺達は先程のダンジョンと同じように薄暗い、でもジメジメとして冷えている洞窟の中に転移していた。なんかそろそろカラッとした場所に行きてえな……。


 グリセルダが俺を地面に下ろす。夢の時間はあっという間に過ぎ去った。


「本当に大丈夫なのか、チケン」

「大丈夫、気にしないでくれ。持病なんだ」


 推しの追加新規イベントが有って狂わないオタクはいないんだよ。持病と言ってもいい。


「うーむ…………」


 グリセルダは心配している。まあ俺の頭は大丈夫じゃないが、地面に降りたら行方不明だった正気さんが帰ってきたのだ。多分大丈夫。

 流石に腕に抱かれたままだと正気は帰ってこなかったと思う……。


「あ、そうか」

「ん?」

「【エリア鑑定】!」


 そういや俺、便利なスキル持ってたんだ。見えなくても鑑定すりゃ良いんだよ。


「ああ、そういえばそんな便利なスキルを持っていたのだな、チケンは」

「すっかり忘れてた」


 だってしょうがないじゃん、常に推しが隣りにいる供給過剰状態なんだし……発狂の1つや2つする。いや2、3回どころじゃない気がするが。


「何かいるか?」

「視界の範囲ではいないな、まあ俺の視界は低いから自信はないが」

「ならば、ほら」


 もう一度グリセルダが俺を長く伸びる猫のように抱き上げる。

 ふあああああああああ!


「これならどうだ?」

「抱き上げる前に一言欲しいかも、発狂する」

「本当に貴公の言っていることが何一つわからぬ」

「俺の頭はおかしいんだ、気にしないでくれ……もう一度やるか、【エリア鑑定】!」


 ……ん?

 奥の方に小さく矢印が出てるな。見たことのない矢印の色だ。死体でも、アイテムでもない。なんだ?


「あっちの奥の方に何かがある。ただ、見たことのない矢印の色なので何があるかがわからん。行ってみるか?」


 転移した場所からは三つの道に分岐しており、そのうちの左側の通路の奥に矢印が見える。洞窟の奥はやや暗いが、一応歩けそうな程度の明るさはあった。


 目が慣れてきたので俺とグリセルダはゆっくりと矢印の奥にある方に進んでみる。すると、何か声が聞こえる。


「なあ、なんか聞こえないか? 子どもの泣き声みたいなやつ」

「……聞こえるな」

「亡霊とかかな」

「怖いか?」

「いや、ガチ亡霊だったら初めて見るから心霊写真撮りたかったなと思って」

「ここが我が国であればチケンを病院にやれるのだがな。頭の」


 グリセルダの正論はいつも心に沁みる。有難う。

 心の必須栄養素が満たされてブクブクに太っていく自己の精神を感じる。

 こんなに俺に都合の良い世界があるなんて……。俺はなんて幸せものなんだ……。

 サンキュー世界。ありがとう四方さん。清野さん。頼むからせめて一週間経つまで絶対にログアウトさせようとか思わないで欲しい。


「ご褒美をありがとうございます」

「チケン、正気に戻れ。ほら、行くぞ……」


 【視界拡張(ワイドビュー)】で、俺に呆れているグリセルダの顔と、俺の満面の笑みが見える。やっぱ女の子アバターにしてよかったよ。これがおっさんだったら目も当てられん。ただの変質者だからな……。


 洞窟の悪路を、転ばないようにゆっくり進むとやはり女の子の声が聞こえる。


「うう……白梅はくばいぃ……お腹すいたよぉ……」

「ぐすっ……何で私ばっかりこんな目に遭うのよぉ……」


 どうやら、奥にいるのはお腹をすかせた女の子のようだ。とはいえ、そういう鳴き声を上げて敵をおびき寄せて食うタイプのモンスターもいるから慎重にいかないといけない。


「こんにちは、誰かいますか」


 俺の声に気づいたのか、声の主が叫ぶ。


「誰よ来ないで! 来たら殺すわよ!」


 俺とグリセルダは顔を見合わせた。

 見捨てることも出来なくはないが、あまりしたくはないな。男の声に怯えているだけの可能性もある。女の子の声っぽいしな……。




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無職のおっさん、幼女にTSして番外編
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