第39話 間話2:某所にて
「ヨシュア、データ出来てる?」
「もちろんです主任。今までに取ったデータで、完璧なダミーを動かしてますよぉ」
真っ白い、書類の積まれたテーブルの上に、少し現実離れしたかのようなモニターが置かれている。
そのモニターは空中に浮いているのだが、厚さという概念がなく、完璧な平面をしていた。
虚無から空中に画像を投射しているような、不思議な光景だ。
モニターの中のモニターには、テスターの男がいた。
『うおおおおお!』などと叫びながら白いグミスライムを粉砕している。
それを、ヨシュアと同じ姿をした看護師が声掛けをしたり、体を清拭したり、点滴の調整をしたりと世話を焼いていた。
それを、現地人の医師や、派閥の違うエンジニアが見ている。油断はできない。
「セーレ、あの男は?」
「うーん、もうあっという間に一層を超えて二層まで到達して、三層近くまで進んでるっぽいですね。細かいところまではモニターできていませんが……」
「ヨシュアの言っていた通り、いい感じそうね」
「しかし、一週間をさらに一週間延長しといて正解でしたね」
「そうね……このペースだと、流石に一週間で十二層は厳しいわね……」
ため息を付いて主任はコーヒーカップに手を伸ばす。ぐっと一気にコーヒーを飲み干した。
「しかし、バレませんかねー。あのエンジニア、ヴェレル閥の下っ端ですよね」
ヨシュアはポリポリとポテトチップスをかじりながら呟く。
「だから大丈夫なのよ。あのカス、こんな世界の果てまで来るの面倒だからってダミーボディー使ってるから。オートパイロットにして本体はあっちで女遊びしてる」
「舐められてるなー、長官と俺達……」
「ほんとよね……まあ長官はあんなだからわからないでもないけどねえ」
「ま、女遊びに誘導したの、僕ですけどね。ゴミどもに邪魔されたくないですからね!」
「セーレやるじゃーん、ヒュー!」
「あいつら俗物過ぎて物欲トラップにめっちゃ引っかかるんです」
「証拠よろしく」
「当然です」
もう一つのモニターには、逆ピラミッドに積み上げられた十二層の図形を映し出している。
上から二層目のあたりに、到達率92%と書いてあった。
「でも、気になるのは、同行者がいるっぽいことですね、人間型の生命反応が二つ揃って動いてます」
「もしや、姫?」
「いやー、ワンチャン長官では?」
「長官なんか死んでそうじゃない?」
「あり得る……」
「でもおかしいんですよねえ、このダンジョン、あとアメリカとドイツで他の派閥が同時テストしてるはずなんだけど、それにしても人数が多くて、しかもバタバタ死んでる。あそこはもう准廃棄施設だから、利用禁止のはずなのに」
三人はモニターを眺める。
しかし、何も分かるわけがなかった。誰も現地に入るすべを持たないのだ。
三人は改めて、テスターの人間の生存を祈るしかなかった。




